『春を告げる』で一気にその名を広めたyamaさんが、2ndアルバム『Versus the night』を8月31日にリリース。タイアップ曲を多数含んだ全13曲を収録。テーマは「夜=孤独=自分自身との戦い」だという。アルバムに込めたyamaさんの覚悟をお聞きしました。
音楽に救われてきた
夜ひとりで勉強していて見えない将来に不安になった時に『Versus the night』を聴いていると、曲が寄り添ってくれて心に響きました。
yama 学校や社会で気丈にふるまっている人でも、誰しも不安や孤独ってあると思うんです。だから曲に共感して頑張ろうと思ってもらえたら嬉しいし、作品を作って良かったなと思えます。自分も学生時代には「悩みがなさそう」とか言われていましたが、そんなわけはないですからね。
yamaさんご自身は、どんな思いをこのアルバムに込められましたか?
yama “Versus the night”というタイトルはもともと自分が初めて挑戦した配信ライブのタイトルだったんです。その頃はシーン的にもヨルシカさんやずっと真夜中でいいのに。さん、YOASOBIさんなど夜を象徴する楽曲が比較的多くて、自分も『春を告げる』でたくさんの方に聴いていただくことができて、夜を扱った楽曲も歌っていたんですが、もっとロックチューンやバラードも歌いたいという気持ちもあって…“夜と戦う” “対峙していく” という意味合いを込めて付けました。そして今回2ndアルバムのタイトルを考えた時に、いろいろ迷った末に、夜っていろんなイメージがあるなと思って。孤独だと思う瞬間だったり、自分の弱さを感じたり、そこから逃げているなと気付いたり。そういったものと今年は向き合っていきたいなと思ったんです。
それはyamaさんが一歩進んだ、ということですか?
yama そうですね…いや、一歩 “進みたい” ですね(笑)。進むぞ、という決意を込めました。
孤独との戦いについて、高校時代と今で変化していることはありますか?
yama それはありますね。学生時代は解決の仕方がわからなくて、どうしたらこの孤独から解放されるんだろうとひとりで悩んでいて、その時は音楽を聴いたり、自分で歌ったり制作することで救われていたんですね。それくらいしか解決する方法がなくて…。友だちがいなかったわけではないけど、どこか社会になじめない気がしていて。でも大人になっていく中で、自分の孤独との向き合い方が上手になっていくというか、ある程度気持ちの切り替えができるようになってきました。人間関係も苦手だったのですが、最近は人とのつながりを大事にするようになって、孤独も感じにくくなってきたところはあります。
私は人に相談ができなくて、本当にこの人を信用していいのかもわからないし、私は親友だと思っているけど向こうはそう思っていないかもしれないなとか考えてしまって。
yama めちゃくちゃわかります。友だちもいるし、自分は仲良いと思っているんだけど、悩みとかを相談したら迷惑かなとか思いますよね。
いつも楽しい話をしているのに、急に重くなっちゃうと悪いなとか。
yama わかるなぁ。自分も人に相談するのが苦手だったから、音楽の方に向かったのかもしれないです。音楽なら迷惑をかけることもないし、気持ちの逃げ場として使えていたんですよね。本当に相談できるような信頼できる人ができたのは、大人になってからですね。
yamaさんはこのアルバムの中で特に高校生に聴いて欲しい曲ってありますか?
yama 1曲ずつテーマを設定して妥協なく作っているので、全曲聴いて欲しいところではあるのですが…例えばどの辺りの曲が響きましたか?
私は『Oz.』や『Lost』、『世界は美しいはずなんだ』が特に。
yama 『Oz.』はTVアニメ「王様ランキング」のEDテーマソングではあるんですが、それを差し引いても“ひとりぼっちにはさせないでよ”とストレートに言う素直さが自分も好きですね。『Lost』も重たい題材ではあって正直そんなに救いがある歌詞ではないんですが、誰かの気持ちには寄り添えるかなと思っています。『世界は美しいはずなんだ』はライブで必ず歌うようにしているんです。正直言うと、やるせない事件が起こったり、世界は美しいのか? と思う瞬間はたくさんあるんですが、自分たち表現者が“世界は美しいはずだ”とちゃんと言葉にしていくことが大事なんじゃないかと思っています。
『ないの。』も良かったし、『くびったけ』も新鮮でした。
yama アルバム曲は特にライブを意識して作っているので、『ないの。』は「ないの」「ないの」ってお客さんと掛け合いができればと思って作りました。『くびったけ』はVaundyさんに書いてもらって、今までのyamaの像を崩したいという思いがありました。
yamaさんに「ありったけにくびったけさ」って歌わせちゃうVaundyさん、さすが! と思いました。
yama 最初デモが来た時に、「こう来たか〜」と思いました(笑)。めちゃくちゃ明るくてエネルギッシュな曲なので、歌えるかなと思ったのですが、レコーディングの時もVaundyさんなりの発声方法やリズムの取り方を丁寧にレクチャーしてくださって、かなり幅を広げてもらいました。面白かったですね。
yamaさんが作詞作曲された『それでも僕は』も言葉がまっすぐ伝わってきました。
yama これまで作詞作曲は向いていないと思って、ずっとやっていなかったんです。でもこのアルバムタイトルを付けた以上、ちゃんと形にしてもいないのに逃げるのは良くないなと思って挑戦しました。最初はカッコいい曲を作りたかったんですが、背伸びしても無理で、家でひとりでギターを弾いて行き詰まっている時に、思ったことをそのまま曲に出しました。こんなに音楽が好きで応援してくださっている方もたくさんいるにもかかわらず、音楽がたまに嫌になってしまうことがあって「ごめんね」という気持ちと、自分のために歌えない時があっても、みんなのためなら歌えるよという曲でもあります。
▶自分と向き合うのは苦しい作業。でも今年は逃げずに向き合うと決めた