「観終わった後に皆さん同じ目の輝きをされている」映画『すずめの戸締まり』新海誠監督、原菜乃華、松村北斗大阪舞台挨拶

観客から3人に
直接質問タイム!

ここからは質問タイムにいってみたいと思います。質問のある方、手を挙げていただけますか?

松村 手を挙げるのが早いですね。素敵なことですね、本当に。奥の方までびっちり手を挙げてくれていますね。

 

今日、東京から関西に来られて、本作に関する発見はありましたか?

 映画の中で鈴芽ちゃんが新幹線の中から「富士山を見逃しちゃったじゃん」というシーンがあるんですが、私もまんまと富士山を見逃してしまって、すごくショックを受けました。今日、帰りの新幹線では見ようと思ってるんですが、どうせ寝ちゃってるんだろうなと思います。

新海 あれを見ると富士山を見なきゃいけないような気持ちになりますね。

松村 見逃したことすら一緒だってうれしくなりますね。

新海 今日、東京から新幹線に乗って新神戸駅で降りたら “映画と一緒だ!” と思いました。新幹線の改札を出たらスタンディがあって駅ごと歓迎してもらっているようでうれしくなって3人で記念撮影しました。神戸は特別な場所になったなと思います。

松村 ロードムービーということもあって全国各地でいろんな方と出会っていくじゃないですか。新幹線で移動する時に通り過ぎていく場所もそこには生活があって人との思いとかがあるんだなと思うと、新幹線での移動が人と人の間を通っているような、人とすれ違っているような、この作品を観てからより人を感じるようになりました。

新海 今、北斗君が言ってくれて思い出したんですけど、小説で「すずめの戸締まり」を書いていた時に、鈴芽が新幹線で東京に移動中、移り変わっていく風景を眺めながら “この風景の人たちと私は一生関わることがないんだ” と思うシーンを書いたんですよね。不思議ですよね。これだけたくさん人がいらっしゃいますけど、あのコンビニに入ることもないし、あのビルの上に立つことも、あの窓から外を眺めることがないんだと思うと関わらないんだけど、よりこの世界のことが愛おしくなる…そういう風景が見えてくるなと思います。

 

皆さんの好きな場面はどこですか?

まさにルミさんの息子さんと同じくらいのお子さんからのご質問です。

松村 (緊張してなかなか質問ができない様子のお子さんを優しくフォローして)なんて楽しい待ち時間なんでしょうね。こんな幸せな待ち時間はありませんよね。(お子さんから「皆さんの好きな場面はどこですか?」という質問を受けて) いい質問!

新海 僕の好きな場面は、神戸で草太と鈴芽が一生懸命子どものお守りをする場面です。おままごとをしたり鈴芽に子どもがよじ登ったりして、その後草太も交えてみんなが友だちのようにバタバタ一瞬だけのあの幸せな時間をコミカルに描けたので好きですね。

松村 僕は、途中でルミさんの双子ちゃんが出てきて、草太の上でドリンクが倒れちゃいそうなもんだから草太が一生懸命頑張ってるシーンが可愛くて好きでしたね。

新海 声は神戸の子役の男の子にお願いしたんです。双子のひとりが男の子二役やっているので、そこも注目して聞いてみてください。

 ルミさんのスナックでポテトサラダ入り焼うどんを作るシーンが大好きで、鈴芽ちゃんが「ポテトサラダ入れるんですけど」と言った時に草太さんが「えっ!」って反応するのが妙にツボで。草太さんの反応がすごく可愛らしくて大好きです。

新海 あそこの芝居良かったですよね。「えっ! 本当に入れんの?」って鈴芽の発言に引いた芝居が。一瞬の一言ですけど、そこに気をつけてもう一度観て欲しいですね。

 

新海監督は現代の問題をテーマに取り上げて映画を作られていると思いますが、次の作品は何をテーマにされるか考えられていたらお聞きしたいです。

新海 ありがとうございます。次、何が観たいか皆さんの意見を参考にしないと今空っぽになってしまいまして。『すずめの戸締まり』は3年振りに出した映画ですが、僕の気持ちとしては『君の名は。』を作り出した8年前から作り始めた映画のような気がしています。『君の名は。』でやりたかったこと、『天気の子』でやりたかったことをもっと上手くできないか、もっと真っ直ぐ伝わるようにできないかと思って作ったのがこの映画なので、8年かけて作った気がしていて。8年分全部出してしまったので空っぽなので、次どんな映画を作ればいいでしょうね?

松村 確かにその3作はどこか薄っすらと統一したテーマというか匂いのようなものがあったので、ガラっと違うテーマ主軸の作品ってことですよね?

新海 違う場所にいかなくてはいけないと思うんですよね。どうすればいいですかね?

 本当に新海監督の作品が大好きなので、何を作ってくれても「ありがとうございます」という気持ちしかないので何でも観たいです。

新海 じゃあ「宇宙」とかいけばいいですかね?

松村 原点回帰な感じもしますね。

新海 ちょっと考えてみますね。

松村 次の作品を作ってくださるということだけですごくうれしいです。

 

松村さんは椅子役の声優としてお話をもらわれた時はどう思われましたか?

松村 基本的にアテレコに入る前に疑問点や不安点を新海さんとお話する時間をいただけて、声色や喋り方など基本は草太のままというか。最初にVコンテを見て、もしかしたら椅子になった後の方がお芝居で許されることが増えそうだなということは最初から感じていました。

新海 草太さんが椅子になってからの方が一緒に旅をしていて感情がわかりやすかったですね。

 てっきり椅子になると表情が見えない分、お芝居をするのが難しいかなと思ってたんですけど、椅子になった草太さんの方が本当の気持ちというかどう思っているのかがすごく伝わってくるような気がして、椅子に口が口がついていたり目の表情が見えるような椅子に愛着を持てて不思議な感じでした。

 

原さんと松村さんが今回役から影響を受けたことがあれば教えてください。

新海 作品が終わった後に役者さんはいつも違う監督のところに行っちゃうじゃないですか。それが寂しくていつも爪痕を残しておきたいなと思うんですよね。

松村 今回、自分の持っていない声を現場でどんどん作っていく作業がたくさんあったじゃないですか。何気ない日常で出した声が「新海作品すぎ!」って言われることが時々あって、身近なメンバーやマネージャーさんが今まで聞いたことのない声を当たりのように使うようになったんじゃないかなと思います。あと、人にちょっと落ち着いて優しくする立ち振る舞いみたいなのはやりやすくなりました。ずっと鈴芽を守ってきた草太を演じることで、人を守ることがすごく身近なものに感じるようになりました。

新海 ちょっといい話が聞けました。

 度胸がついたなと思います。わからないものに飛び込んで、とにかく一生懸命食らいついていく鈴芽の真っ直ぐさや思い切りの良さみたいなものにすごく背中を押されました。

新海 これだけ大きな映画をヒロインとしてド真ん中でプロモーションを含めて全部支え続けてきてくださったので、度胸がついたのであれば光栄ですね。

松村 日に日に (原さんの) 目つきが鈴芽になっていってるんですよ。挑む時とかどんどん鈴芽に似てきている感じでした。

 初耳。うれしいです。

「私も作るの手伝った」という気持ちで
また観て欲しい

最後に監督からご挨拶をお願いします。

新海 2時間の映画を観ていただいた後に話にもお付き合いしていただき、とても幸せな時間をいただけました。おかげで、また何か新しいものを作れるんじゃないかという気持ちに段々なってきました。エンディングの (野田) 洋次郎さんにいただいたRADWIMPSの曲で「僕にはない 僕にはないものでできてる 君がこの僕を形作ってる」という歌詞がありますが、そういう映画だったなと思います。ここにいるふたりも含めて素晴らしいスタッフたちが僕にないものを寄せ合って作りあげてくれました。その人たちの中には観客の皆さんも含まれていると僕は思います。皆さんが次はこういうものが観たいという気持ちを向けてくださってこの映画ができたような気がしていますので、気に入っていただけた方は「あの映画私も作るの手伝ったんだよ」という気持ちでまた観ていただければとてもうれしいです。

『すずめの戸締まり』
  • 原作・脚本・監督:新海誠
  • 声の出演:原菜乃華、松村北斗
  • キャラクターデザイン:田中将賀
  • 作画監督:土屋堅一
  • 美術監督:丹治匠
  • 音楽:RADWIMPS、陣内一真

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

全国東宝系にて公開中