この冬はJR SKI SKIのキャンペーンソング『ホワイトマーチ』でも話題のsumikaに、3月13日リリースの2ndアルバム『Chime』のこと、音楽の道に至った進路選択の話をお聞きしました!
名刺代わりのアルバム『Chime』
片岡 ようやく完成して、ほっとしています(笑)。燃え尽きちゃって、今はこの先のこと何も思い浮かばないんですが、sumikaの“今”を過不足なく出しきれたと思います。「名刺代わりの1枚」って、1枚目のフルアルバムを出す時に皆さんおっしゃることだと思うんですが、今回もそうです。省略せずに、本名をフルネームでちゃんと言えている感覚があります。
黒田 どれか1曲足りなくても違っていただろうし、多くても違っていただろうな思います。
片岡 前作は、アルバムタイトルを『Familia』にして、sumikaと皆さんが家族になって「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」を言い合える関係性を築いていきたいという気持ちで作ったんですが、2年弱を経て、これまではその場所にい続けることがsumikaだと思っていたんですが、今度は皆さんの家に行って自分たちがチャイムを押す番なんじゃないかなと思って。だから最初にアルバムタイトルを決めました。
“Chime”はそういう意味だったんですね! 最後に「Familia」という曲が入っているのを見た時に、二度見しちゃいました。
片岡 最後の14曲目は、ギリギリまでメンバーにもタイトルを伏せていたんです。
荒井 ずっと“14曲目”って呼んでたもんね(笑)
片岡 これはまた、お互いの家族=Familiaに帰っていくことを表しています。プロポーズする曲なのですが、聴いていただいたあなたにとって、誰と家族になりたいですか? ということを歌っています。僕にとってそれはメンバーでありスタッフチームだし、聴く方によっては結婚相手や友だちという方もいるだろうし。
すごい。素敵です…!
片岡 これ、今メンバーの前で初めて言ったかもしれないね。みんな「本当に“Familia”でいいの!? アルバムタイトルと混同しない!?」って言ってました(笑)。でもこれでまた『Familia』の最後の曲「Door」から『Chime』へと繋がるんです。
そして、3月からのツアーでチャイムを押しに行かれるんですね!
片岡 はい、全国各地にチャイムを押しに行きます! 内容は今絶賛協議中です。
メンバーの高校時代とは?
高校でも、軽音楽部の子がsumikaさんの曲のコピーをしたり、sumikaさんの音楽は高校生の生活にめちゃくちゃ入り込んでいます。
片岡 僕も軽音楽部だったんですが、高校時代に聴いていた曲やコピーをした曲って、一生思い出に残り続けますよね。僕らがそんな立場になれているというのは夢のようで、全然現実感がないですが、すごく嬉しいです。
皆さんは、どんな高校生でしたか?
片岡 陰キャです。ド陰キャですよ(笑)。勉強ができるわけでも運動ができるわけでもないので、クラスではとにかく目立たないようにしようと思っていて。好かれ過ぎても嫌われ過ぎても目立つじゃないですか。だから嫌われない立ち位置を見つけて、「普通」なところにい続ける努力をして、軽音楽部で全部を発散していました。
行事に参加したりは…?
片岡 文化祭は軽音楽部のライブがあったので、それを目標に頑張っていましたが、体育祭は、めちゃくちゃ地獄でした(笑)。もうね、徒競走なんて、足がちぎれちゃうかと思って。だって、遅すぎても目立つじゃないですか。
やっぱり、そこも目立たないために(笑)
片岡 そうそう、1位から6位まであったら4位狙いくらいで頑張ってました。
黒田 僕も、体育祭がなくて球技大会だったんですけど、足を引っ張らないように必死でした。中学から学校の外でバンドを組んでいたので、その方が楽しくて、学校が終わったら急いでバンドの練習に行ったりライブハウスに出るためにバイトをして。主戦場はこっち、みたいな感じでした。
小川 僕は、学校は音楽クラスと美術クラスがあって美術クラスの方にいたんですが、ずっと音楽をやりたいとは思い続けていて、高校3年生の終わりくらいで急に弾き語りの曲を書き始めました。
急に、ですか!?
小川 もともとピアノだけの曲は書いていたので、そこにメロディを乗せて。今sumikaでやっているようなアップテンポな曲とは違って、かなりスローテンポなバラードだったんですけど。
荒井 僕は音楽もやっていなかったから、文化祭でこういう人(片岡さんを指して)が、軽音楽部で校庭のステージに立っているのを見ている側でした。当時は弾き語りが流行っていたので、弾き語りのデュオの人たちが次の日学校中の女子から人気者になったりしていて。
片岡さんは、文化祭の翌日、一躍人気者になったりは…?
片岡 僕らの軽音楽部は70人くらい部員がいたので、残念ながら僕ひとりだけに注目が集まることはなく、普通に片付けとかしてましたね(笑)。ただ、授業中に手を挙げて意見を言えるタイプではなかった僕が、バンドでステージに出て光を浴びるという経験は初めてだったので、これはすごい特別なことをしているなと思いました。一生続けばいいなと。
音楽の道を選択した時のこと
私たちは今とても進路に悩んでいるんですが、皆さんが進路を考えられた時のことを教えていただけますか?
小川 大学には通ったんですが、僕の中では音楽でやっていくということは決めていて。ただ、大学3、4年になって周りが就職活動をし始めた頃に、どんどんひとりぼっちになって疎外感が出てきたんです。その頃は一番悩んだかもしれません。その孤独感のお陰で、環境に負けない力強さは身に付いた気がします。
黒田 僕も、高校生の時には音楽をやりたいと思っていたんですが、兄と兄の友人と母と3人からひと晩「大学には行きなさい」という話になり、進学しました。ただ、大学の途中でずっと続けてきたバンドが解散してしまったんです。そこで学校の先生になろうと思って2年間は本気で教師を目指しました。教育実習に行ったりもして。でも教員免許の試験に、落っこちたんです。それで、いよいよ就活を始めないといけないか!? というその日に、片岡さんから電話があったんです。
結果が出たその日に、ですか!?
黒田 そうなんです。「ごはんに食べに行こう」と。あれ? 怒られるのかなと思って(笑)
片岡 試験落ちたこと、なんで僕が怒るの(笑)
黒田 そこで「音楽一緒にやらないか」と誘ってもらって。その日僕は就活を始めようと思っていたから、髪切ってたんですよ。だから「髪切っちゃいましたけど」って(笑)
片岡 そんなこと知らずに、久し振りに電話したんですけど。
黒田 もう一度音楽をするのか、もう一度先生を目指すのか、就職活動をするのかと考えたのですが、自分が一番やりたいのは音楽だなと思って。片岡さんに「2年間ブランクありますけど、よろしくお願いします!」と答えました。
すごい繋がりですね。片岡さんはいかがですか?
片岡 僕は高校を卒業するタイミングでは建築士になりたくて製図の学校を見に行ったり体験授業を受けたりしていたんです。その頃からドラムの荒井くんとは一緒にバンドを組んでオリジナル曲も作り始めていて、他のメンバーが音楽の勉強をするというので、僕も音楽はすごく好きなのに、深堀りしないまま終わっちゃっていいのかな、と思って。何か音楽に携わる仕事がしたかったので、音楽の専門学校に行って、音響の勉強をしました。バンドで良かったなと思うのは、その時々で決断をしていく時に、マイノリティの方を選択していくことになるので、それって高校生の頃に一番恐れていた、悪目立ちしてしまうことなんですよね。「あいつ、進路は〇△×〇らしいぜ」みたいな。一番近い所に一番理解してくれる仲間がいたから、この選択ができたのかなと思います。
荒井 僕も大学1年の頃に地元の友だちとバンドを始めて、これは楽しいぞ、と思って大学を辞めて、アルバイトをしながらバンドを続けたんですが、ひとりで気持ちを保ち続けるのはやっぱり難しかったと思うから、その後すぐに健太と出会えたのは、とてもラッキーだったなと思います。健太の人間性もそうだし、作り出す音楽も波長が合って、この人となら一生音楽をやっていけるかもなぁとナチュラルに思えたので。
私たちも今、進路を決めるにあたって、本当にその道でいいのか、何度も迷ってしまいます。何を基準に決めてこられましたか?
小川 音楽の道を決める時もそうでしたが、僕の場合はピアニストになりたかった時もあるし、ドラマや映画に劇伴を作る仕事に就きたい時もあるし、音楽の中でもいろんな道を抱えてきた中で、その都度選択をしてきて、今があるんだなと思います。
その時々の判断は何でしたか?
小川 やっぱり“自分はこれが好き”と思うものを見極め続けたのかなと思います。
片岡 僕は興味があるからやってみたことも、音楽以外のことは長く続きませんでした。深堀りしたい、とまではいかなかったというか。勉強でもこの教科おもしろいかもと思っても、夏休みが明けたらつまらなくなったり、アルバイトも一緒に働く人が変われば楽しくなくなったり。
荒井 僕は実は高校生の頃ラグビー部に入っていたんですが、2年の最後に一度辞めたんです。もう少し自分の時間が欲しいなと思って。3ヶ月ほど遊んでみたりしたんですが、部活をしていた頃の充実感もなく思ったより暇で(笑)、もう一度部に戻ったんです。部員は快く迎えてくれたんですが、最後の大会で負けた時に、僕はどこか清々しい気持ちでいたんですが、他の部員はすごい悔しがって泣いていて。その時に、続けた人間と続けなかった人間の温度差を感じて、自己嫌悪になって、次に自分が始めるものは、長く続けられるものしかやりたくないなと思ったんです。それが音楽でした。
黒田 ラグビー部の話、初めて聞いた。めちゃいい話っすね。
荒井 ほろ苦い思い出ですね。
荒井 何でもやってみてください! 僕らの時代と違って、スマホですぐに情報が手に入るけど、僕自身辛い言葉を言われた経験や辛かった練習は、その時の温度感や芝生の匂いとか込みで思い出すので、できれば現場に行って、自分の身で、五感を使って確認してみて欲しいなと思います。
小川 僕は最近になって学ぶことがとても楽しくなっているんです。高校生の頃は、自分に根拠のない自信があって、音楽は独学でいけるぞと思っていたところがあるんですが、学べるものは学んでおいた方が、後で力になってくれると今は強く感じています。
片岡 自分がやりたいことや興味があることにランキングを付けて、2位以下は全部検索でいいと思うんです。例えば「バンドマンとして生きたらどうなるか」と調べたら、Yahoo!知恵袋あたりが、「失敗する」とか書いていると思うので(笑)。ただ、もし本当にやりたいと思っているのであれば、本気の失敗は自分自身でするべきだと思います。
黒田 くすぶっている時の自分も含めて、役に立たないことってひとつもなくて、後から全部プラスにできるので、すべて、“大丈夫”です!