1988年から1996年まで週刊漫画雑誌「モーニング」(講談社)で連載され、社会現象となった大ヒットコミック「沈黙の艦隊」(かわぐちかいじ作)がAmazon スタジオ製作により実写映画化され現在公開中。日本初の原子力潜水艦に核を積み反乱逃亡する〈シーバット〉の副長・山中栄治役を演じられた中村蒼さんに高校生がお話を伺いました。
STORY
日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が米原潜に衝突し沈没した。艦長の海江田四郎を含む全76名が死亡との報道に衝撃が走る。だが実は、乗員は無事生存していた。事故は、日米政府が極秘に建造した高性能原潜<シーバット>に彼らを乗務させるための偽装工作だったのだ。米艦隊所属となったシーバット、その艦長に任命されたのが海自一の総監を誇る海江田であった。
ところが海江田はシーバットに核ミサイルを積載し、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した―。
やまとを各テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて撃沈を図るアメリカ、アメリカより先にやまとを捕獲すべく追いかける、海自ディーゼル艦<たつなみ>。その艦長である深町は、過去の海難事故により海江田に並々ならぬ想いを抱いていた…。
大義か、反逆か。日本政府、海上自衛隊、米海軍までをも運命の荒波に吞みこむ、海江田四郎の目的とは―?
楽しければいいと思っていた
副長・山中栄治を演じられて、いかがでしたか?
中村 今回、防衛省と海上自衛隊が特別に協力してくださり、本物の潜水艦にカメラをつけて潜水・浮上したりするシーンを撮影することができました。実際の潜水艦を用いた映像はこれまでになかったそうで、新しい日本映画の作品に参加できてすごく嬉しいです。
実際の潜水艦に入られたのですか?
中村 はい。潜水艦内を見学させていただいたのですが、実際の潜水艦は人と人とがすれ違えないぐらい通路も細くて狭かったです。乗組員の人間関係は、上下関係が厳しく目上の人が通る度に敬礼するようなイメージを持っていたのですが、そんなことはなく、家族のような関係性で穏やかな雰囲気だと伺いました。乗組員は同じチームで何ヶ月も一緒に海に潜ることになるので、協調性のある穏やかな人材が求められるそうです。
潜水艦という密閉された空間が職場というのはとても想像できないのですが、役を演じられる上で難しかったことはありますか?
中村 空や別の潜水艦から爆撃を受けるシーンでは、想像でお芝居することが多くて、爆破する場所や潜水艦が浮上する傾きの角度などのイメージをみんなで共有して演じるのはすごく難しくて、演じていてこれで合っているのかな? という不安がありました。
原作「沈黙の艦隊」を実写化するにあたり現代とのギャップは感じられましたか?
中村 “自分の国は自分で守らないといけない” “誰かが守ってくれるから大丈夫” という考えは当時も現代も問題とされている大きなテーマだと思うのですが、実際に僕自身が深く考えたことがあるかと問われると、自分の周りが楽しければいいと思っていました。でも、今回映画に参加して核兵器や日米関係など難しいことが多いけれど、もっと自分の国のことについて知ることは大切なのではと思いました。
どのような作品でも実写映画化となると、原作のファンの方からのご意見があると思うのですが、中村さんは原作で描かれている山中副長を意識した部分はありましたか?
中村 原作ではどのような経緯でシーバットの乗組員が集められて、それぞれどのような過去があるのかが描かれないままスタートしているので、演じるのはすごく難しかったです。原作では、何ヶ月も密閉された空間にいるとどうしても気分が落ちてしまう人もいるので、副長がそういう人たちの精神的な支えとなるように乗組員を気遣ったり、みんなの士気を高めたりするシーンがもっと描かれているのですが、映画では限られたシーンの中で副長としての優しさみたいなものを表現できたらと思いながら演じました。
山中副長は、“地球をひとつの国家に”という大きな野望を抱く海江田艦長からの絶大なる信頼を受けていますね。
中村 大沢(たかお)さん演じる海江田艦長は、あまり多くを語らず何を考えていのるかわからない人ではありますが、乗組員たちはカリスマ的存在として尊敬していて、その乗組員たちと海江田艦長を繋ぐパイプ的な存在が山中だと思って演じました。シーバットは、海江田艦長以下、家族を捨てて日本ひいては世界に向けて戦っていくという亡霊みたいなチームなのですが、山中は人間らしさみたいなものを出せるように意識しました。
山中副長と中村さんご自身の性格と重なる部分はありますか?
中村 いえ、もう全然重ならないです。山中は、海江田艦長という海上自衛隊の中でもトップクラスの人からも乗組員からも信頼を寄せられていて、副長としてチームを常にまとめていますが、僕はそんな人物にはほど遠くて…。似ているところはひとつもないと思います。
では、他の登場人物でご自身と似ている人物はいらっしゃいますか?
中村 みんなたくましすぎて…。玉木(宏)さん演じる深町洋も強いですし、政治家の方々もそれぞれの立場で意思をぶつけ合う熱い人たちですし…僕と似ている人はいないですかね。でも、そういう意味では総理かもしれないです。板挟みになってあたふたする感じはすごく共感します。
進むことが一番大切
ところで、休日はどのように過ごされていますか?
中村 基本だらだらとして過ごしています。ラジオを聞くのが趣味なので、ラジオを聞いていることが多いです。
お気に入りのラジオ番組はありますか?
中村 たくさんあるんですけど、「オールナイトニッポン」や「JUNK」をよく聞いています。芸人さんのラジオ番組が好きですね。あとは、神田伯山さんの番組も面白くてよく聞いています。
中村さんはデビュー後、福岡の地元を離れて上京されたと伺いましたが、当時葛藤はありましたか?
中村 僕は親の勧めでこの仕事を始めたこともあって、親が応援してくれている形で上京したので葛藤はあまりなかったです。高校2年になるタイミングで上京して当時は無知すぎて平気で行けた部分もあったと思うんですが、ひとり暮らしをしながら学校と仕事をする生活の大変さを全然想像できていなくて。いざ上京してみると大変なことがいっぱいでした。東京では一気に生活も友だちとの遊び方とかも変わって、それについていくことも、付き合うしんどさもたくさんありました。その時は仕事の数も多くはなかったですし、どこにも満足する場所がない感じでした。
私は春から大学生になります。俳優として活躍されながら大学に進学された中村さんにとって大学生活はいかがでしたか?
中村 僕、大学を途中で辞めたんです。だから大学を卒業していなくて、親不孝してしまったと思っています。でも、大学は楽しいところだと思います。(小中高の) 学生生活って、たまたま同じ時期に同じ場所で育っただけなのに、めちゃくちゃ狭い空間の中で友だちを作って人間関係も上手くやらないといけなくて、更には「友だちは多い方がいい」みたいな空気感もあると思うのですが、大学は自分の将来を考えて学校や学部を選んで学びに来ている人が多いはずなので、今まで理解してもらえなかった自分をわかってくれる人たちがたくさんいると思います。いろんな人たちと出会って、いろんな考えを共有して欲しいなと思います。真の人間関係はそこから始まっていくのではないかと思います。
志望大学に進学できたら、来年の春からひとり暮らしを始めようと思っています。初めてのひとり暮らしにおいて必要なことや心構えがあれば教えていただきたいです。
中村 僕は上京して、仕事や学業といろいろ大変なことがありましたが、ひとり暮らしって誰にも何も言われないのでめっちゃ楽しくて幸せでした。ひとり暮らしの心構えとしては、物は少ないに限ると思います。僕はひとり暮らしを始めた時に、あれもこれも必要なんじゃないかといろいろ買い揃えていたのですが、じゃんじゃん物を捨てられるタイプではなくて、一応取っておこうと物を置いていたら部屋がすごいことになってしまったので…(笑)
では、最後に『沈黙の艦隊』を楽しみにしている高校生読者へメッセージをお願いします。
中村 政治のこと、日米関係のことなど、他人事のように思って過ごしていく人が多いと思います。僕は漏れなくそういう人間でした。でも、『沈黙の艦隊』をご覧になって、映画を観終わった後の10分、いや5分でもいいので、皆さんが自分たちの国について少しでも考える時間になればいいなと思います。
- 監督:吉野耕平
- 原作:かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」(講談社「モーニング」)
- 脚本:髙井光
- 音楽:池頼広
- 出演:大沢たかお
玉木宏 上戸彩
ユースケ・サンタマリア 中村倫也
中村蒼 松岡広大 前原滉
水川あさみ
岡本多緒 手塚とおる 酒向芳 笹野高史
アレクス・ポーノヴィッチ リック・アムスバリー
橋爪功 夏川結衣
江口洋介 - 主題歌:Ado「DIGNITY」(ユニバーサル ミュージック)
- 楽曲提供:B’z
- 制作:Amazon Studios
- 制作プロダクション:CREDEUS
- 協力:防衛省・海上自衛隊
- 配給:東宝
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