『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』脚本の岡田麿里さんが初監督に挑んだ映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』。
岡田監督と堀川憲司プロデューサーに、“出会い”と“別れ”を描いた本作についてお伺いしました。
プレッシャーを乗り越えられた(岡田)
岡田監督にとって初監督となる本作ですが、どのようなきっかけで監督を務めることになったのですか?
岡田 以前、堀川社長に「いつか岡田さんの100%を出した作品を見てみたい」と言っていただいた時に、それは単純に脚本で100%を出すという意味だったのですが、私は真に受けて「私の100%を出した作品」について考えました。アニメは共同作業なので、誰かひとりだけの力では100%を出せません。そう考えた時に、全てのセクションに関わる監督なら100%に少しでも近づけるのではと思い、堀川社長に「監督をやらせていただけないですか」とお願いしたのがきっかけです。
制作の中でプレッシャーを感じることはありましたか?
岡田 監督は全てのセクションと打ち合わせをするので常に他のスタッフと接していました。元々そんなに人と接するのは得意なほうではないので最初は慣れないこともありましたが、みんなの熱意に常に触れている状況はすごく嬉しかったです。完成が近くになるにつれてプレッシャーもわいてきたのですが、スタッフの熱量も同時に盛り上がっていったので、スタッフの熱意のおかげでプレッシャーを乗り越えられました。
全く違う感情で観ることができる(堀川)
お気に入りのシーンや特に注目してもらいたい部分を教えてください。
岡田 今回、脚本の読み合わせというものをやりました。まだ絵ができていない時に、シナリオから感じるままにキャストの方に演じていただいたのですが、実はその姿を見て作画スタッフが絵を描いたりしています。アニメは声と絵が合わさってひとつになる。なので声と絵がすごく合致しているんです。中でも、主人公のマキアが赤ん坊のエリアルと一緒に暮らしたヘルム農場というところで、エリアルに「ママって言ってみて」と言うシーンがあって。エリアルは赤ん坊なのでまだ言葉を話せないのですが「ママ」と呼んだ気がして、マキアが「もう一度言って」と言うんです。そのシーンがすごく好きで、何度観ても感動します。
堀川 主人公のマキアは何百年も生きる種族の少女で、故郷を追われて逃げる途中、同じく親を亡くした赤ん坊のエリアルを拾い、彼のお母さんとして頑張って生きていこうとします。エリアルはどんどん成長するのですが、マキアは何百年も生きる種族なので少女の姿のまま。お母さんと子どもという関係だったふたりはやがて姿が同い年ぐらいになり、ふたりの関係がぎくしゃくしていきます。監督が「こういう作品を書きたい」と僕たちにシナリオを提示してくれた時、最初は「こういう作品を書きたい」というものが漠然としていたかもしれませんが、ふたりの関係はどういうものだろうと筆を進めるうちに、監督が自分の人生経験から「こういうことなんだ!」と答えを導き出したので、僕はそこが素晴らしいところだと思っています。その答えのシーンは僕もすごく泣けたし、どこかから借りてきたのではなく、自分の言葉としてちゃんと伝えているんだなとすごく身に染みたので、そこを感じてもらいたいです。
高校生に向けてメッセージをお願いします。
岡田 スタッフのみんなと意見をぶつけ合って、青春のようにこの作品を作りました。主人公の成長物語にもなっているので、ぜひみなさんにも観ていただきたいです。
堀川 頭の中を空っぽにして何も考えずに観ると、自然と感情移入できるキャラクターがいると思います。今みなさんがこの作品を観た時は、同年代のキャラクターに共感できると思うけど、将来親になったら全く違う感情で観ることができると思います。いろいろな経験を積むことによって観え方が変わってくるので、今は今感じたことを大切にしてもらって、大人になったらまた観てほしいなと思います。
のあ(高3)/かほ 高3
STORY 人里離れた土地で、ヒビオルと呼ばれる布を織りながら静かに暮らすイオルフの民の少女マキア。ある日、イオルフの長寿の血を求めメザーテ軍が攻め込んできたことから、マキアとイオルフの民の平穏な日々は崩壊する。親友や思いを寄せていた少年、そして帰る場所を失ったマキアは森をさまよい、そこで親を亡くしたばかりの孤児の赤ん坊・エリアルを見つける。やがて時は流れ、赤ん坊だったエリアルは少年へと成長していくが、マキアは少女の姿のままで…。
- 監督・脚本:岡田麿里
- 副監督:篠原俊哉
- アニメーション制作:P.A.WORKS
- 出演:石見舞菜香、入野自由、茅野愛衣、梶裕貴、他
- 配給:ショウゲート
©PROJECT MAQUIA
2.24(土)全国公開