2020年のコロナ禍を舞台に世代も職種も異なる人々を描き、誰かを思う優しさに溢れる群像劇『散歩時間〜その日を待ちながら〜』が12月9日より公開される。コロナ禍で結婚式を挙げることができなかった新婚夫婦・ゆかり役の大友花恋さんにお話をお聞きしました。
みんなで何かを作る楽しさをより感じる
映画『散歩時間〜その日を待ちながら〜』は私たちが生きるコロナ禍の生活がそのまま反映されていて、コロナ禍での悩みやつらいことに共感する部分もたくさんありました。花恋さんは映画をご覧になって最初にどのようなことを感じられましたか?
大友 群像劇なので私が出演していないシーンもたくさんあるのですが、こんなに素敵に仕上がっているんだと感動しました。中学生 (男女) ふたりが出てくるパートでは「修学旅行に行けなかった」「夏の思い出があまり作れなかった」とつぶやいているシーンがあるのですが、私も身近な人から似たようなことを実際に聞いていたので、この映画は高校生の皆さんにもきっと届くんじゃないかなと思いました。
新妻のゆかり役を演じるにあたり、役作りはどのようにされましたか?
大友 今まで出演した作品で結婚を大きくテーマにした役を演じたことがなかったので、すごく不思議な気持ちでした。この映画を撮影していた頃は、周りの同級生が大学を卒業して、社会人になるタイミングで人生の選択について悩んでいたんです。私自身結婚について考えたことはあまりなかったのですが、周りの友だちから就職の話を聞いて、「人生の選択という大きな枠組みの中では “就職” と “結婚” も通ずるところがあるのかな、ゆかりもこうして結婚について悩んでいるのかな」と思いながら演じました。
女性としてゆかりさんに共感するところはありますか?
大友 ゆかりが亮介に対して「優しすぎる」という言葉をよく使うんです。ゆかりは、亮介が優しすぎるから自分が悪者になっている気がする、自分ばかりわがままを言っている気がするとずっと思っているのですが、私も誰かから優しさをもらったらその分返さないといけないとプレッシャーに思ってしまう部分があるのでその気持ちは共感しました。
先ほど「就職と結婚は人生の大きな選択」とおっしゃっていましたが、結婚願望はありますか?
大友 あります!年齢や時期はあまり考えていないですが、自分のタイミングとこれから出会う誰かとのタイミングがぴったり合った時に結婚できたらと思います。
夫婦や付き合うふたりの関係が上手くいくコツは何だと思われますか?
大友 楽しい質問ですね (笑)。上手くいくコツは作品の中でも描かれていたと思うのですが、お互いがちゃんと向き合って本音を話すというところにあるのかなと。亮介もゆかりも相手のことを思いやるが故に本心を話しきれていない部分があったので、きちんとコミュニケーションを取ることが大事なのかなと思います。
参考にします! この作品ではいろんな登場人物が出てきてストーリーが紡がれていきますが、お気に入りの登場人物やパートがあれば教えてください。
大友 中学生のふたりのパートで受験の話をしたり花火をしたりしているシーンにはキュンキュンしました。その中で「蚊取り線香は元々別々だったけれど、2つがきれいにくっついたんだよ」という台詞が好きなんです。蚊取り線香の本当の作られ方は違うかもしれないけれど、その話を信じたいと思えるくらいピュアなお話だなと。それっていろんなことに当てはまると思うんです。例えば学生は初めて会う人と同じ教室で同じことを学んだり、修学旅行に行ったり運動会をしたり、誰とどこでどう出会うかわからないけれど、出会った人と寄り添えるようになるというのが素敵だと思って、そういうメッセージを教えてくれた中学生ふたりのパートがとても好きです。
私もあのパートはすごく好きです!
大友 ふたりでプールに忍び込んだり、こっそりデリバリーを頼んだり、こういう青春に憧れますし素敵だなと思いました。
ゆかりと亮介の結婚をお祝いするパーティーシーンは、ほとんどアドリブだったそうですが 撮影時に戸田監督からどのような指示があったのですか?
大友 撮影に入る前に段取りといって動きや台詞などを確認するタイミングがあるのですが、監督が段取りの時に「自由にやってみて」と演出してくださって、「今の台詞、面白かったからそのまま使おう」とか「こういう言い方の方がいいんじゃない」とある程度形を決めて実際に撮影に臨みました。
すごく自然な雰囲気で私もその場に一緒にいるような気持ちで観ていました。
大友 嬉しいです! あんなふうにみんなで食卓を囲むことって楽しいですよね。特にコロナ禍で友だちと一緒にご飯を食べることもあまりできなかったので、その時の感覚を思い出してもらいながら観てもらえれば嬉しいです。
コロナ禍を経験されて、人との関わり方に変化はありましたか?
大友 コロナ禍前は誰かに会えることが当たり前で、そのありがたみをあまり感じられていなかったからか、休日も誰かと積極的に会おうとしてこなかったんです。でも今は、誰かと直接会って会話できることはすごく大事なことだと感じています。人と会うことがリフレッシュにもなるし、新しい気づきもあることに改めて気がつくことができたので、自分から積極的に連絡を取って人に会うようになりました。
私はミュージカル部に入っていてコロナ禍で文化系の部活全体が「不要不急」と言われて公演をやる機会がどんどん減っていったのですが、花恋さんはお仕事に影響はありましたか?
大友 ありました。撮影が一気にストップしてしまったり、予定していた作品の撮影時期がずれてしまったりして、もどかしく思うことは多かったです。だからこそ、一番厳しかった自粛期間が明けてからは、みんなで何かを作る楽しさに改めて気づくことができたと思います。
支えてくれた大切な存在とは?
ところで花恋さんは高校時代どんなキャラでしたか?
大友 高校生の時はよくイジられていました。仲のいい子たちはみんなお話が上手で面白くて、私が少しでもとぼけたことをすると全力でツッコんでくれていました。高校時代はお弁当を作って持って行っていたのですが、ハロウィンやイベントの時は全力でデコ弁に挑戦したので、みんなが楽しんで見てくれていました。当時は芸能活動との両立で悩んだ時期もあったのですが、友だちが温かくそばにいてくれたからこそ、なんとか乗り越えることができました。みんなには感謝しています。
高校時代、一番思い出に残っているエピソードを教えていただきたいです。
大友 毎日大変だったはずなのに、振り返ってみると面白いことが多かったです。文化祭や、みんなで旅行をしたり、ディズニーに行ったりしたことなど楽しいことはたくさんありますが、振り返ってみるとお昼ご飯の時間にみんなでお弁当を食べたことや、ちょっとした日常の一つひとつが楽しかったなと思います。あとは、電車通学だったので、テスト前は電車移動中に友だちと一緒に勉強をしたこともとても好きな時間でした。
ありがとうございます。残りの高校生活を全力で楽しもうと思います!
大友 ぜひ最後まで満喫してください!
花恋さんは「Seventeen」で短編小説を執筆され、また、「BLOG of the year」では2016年に優秀賞、2019年にドラマ部門賞、現在は日経新聞でプロムナードの連載をされています。今後映画の脚本などに挑戦してみたいと思われますか?
大友 今、質問をしていただいて初めてその可能性に気がつきました! そんな未来があったら素敵だなと思います。 元々本を読むことが好きで、それが高じて文章を書く機会をいただくことが多いので、私には大きな夢ですけれど、いつか挑戦できたら幸せだなと思います。
もし挑戦されるならどんなジャンルの映画を書かれたいですか?
大友 ありがたいことに学生の皆さんとこうしてお話する機会もあるので、皆さんの姿を切り取った映画を作ることができると素敵ですよね。キュンキュンしたいです(笑)
本がお好きだということなので、ぜひ高校生におすすめしたい一冊を教えてください!
大友 「ツナグ」や「かがみの孤城」を書かれている辻村深月さんの「凍りのくじら」がオススメです。高校生の主人公・理帆子はいつもどこか冷めている性格の高校生なのですが、そんな彼女がとある男性と出会ったことをきっかけに自分のことを認めてからは、周りの人にも新しい居場所を与えてあげられるような素敵な女性に成長していくお話なので、もし同じように悩んでいる人がいたらぜひ読んでもらいたい一冊です。
2023年の目標があれば教えて欲しいです。
大友 来年はもっと自己主張できる人になりたいと思います。相手の思いを受け取るだけではなく、自分の考えもきちんと伝えて、話し合えるような人になりたいと思っています。
最後に高校生の読者に向けてメッセージをお願いします。
大友 『散歩時間〜その日を待ちながら〜』はさまざまな悩みを抱えている人が登場するので、観てくださった皆さんも自分と共通する人を見つけられる作品だと思います。観終わった後に登場人物たちの悩みが少し軽くなっているように、皆さんの悩みも軽くしてくれる作品だと思うので、ぜひ観ていただけたら嬉しいです。
- 原案・監督・編集:戸田彬弘
- 脚本:ガク カワサキ
- 出演:前原 滉、大友花恋
柳ゆり菜、中島 歩、篠田 諒、めがね、山時聡真、佐々木悠華、アベラヒデノブ、他 - 配給・宣伝:ラビットハウス
©2022「散歩時間〜その日を待ちながら〜」製作委員会
12/9(金)全国公開