「社長に会いたい」Peach森社長|世の中にワクワク感を!「旅くじ」誕生に秘められた思いとは?

森健明

Peach Aviation株式会社 
森 健明社長

大阪・東京・名古屋に続いて福岡でも発売開始! 「旅くじ」がSNSでも話題のPeach。
日本初のLCCとして次々とユニークな施策で目を引くPeachの森社長ってどんな方なの…!?

    ▼ 森社長が心掛けている3つのこと

  1. 社会の役に立っているか

    Peachの企業理念は「ヒト・モノ・コトの交流を深めるアジアのかけ橋となり、人間愛を育むエアラインとなる」です。自分の会社が社会の役に立っているのかどうかはいつも考えています。

  2. 社員が楽しく働いているか

    コミュニケーションが取れないと物事はうまくいきません。Peachにも約30の国と地域からスタッフが集まっていて、中には初めて日本に住む外国人もいます。だから毎朝全社員に送るメールには、外国人向けの “Tips to live in Japan” というコラムもあり、電気料金の払い方なども案内しています。私は上に立つ人は、ただ言うだけではなく手助けをしてあげないといけないと思っています。海外のスタッフの中には「コロナ禍で普通ならレイオフするのにPeachは雇用を守って国内線の拡大まで行うクレイジーな会社だ。そんなPeachをプライドに思う」と海外に住む家族に言ってくれていて、それが嬉しいですね。

  3. 悔いのない仕事をしているか

    最後に、自分自身の人生において悔いのない仕事ができているのか、これもいつも考えています。


まずはどんな会社か教えてください!

日本初のLCCとして10年前に
社員30人からスタート

2011年に会社を立ち上げ、関西空港を拠点として最初に飛行機を飛ばしたのが2012年3月1日。最初は社員30人ほど、国内線で3機の飛行機から始まりました。その後すぐに国際線も運航開始し、現在は客室乗務員とパイロットを含め社員1800人ほど、飛行機も34機に増えました。2019年にANAグループのバニラエアと統合し、成田空港をはじめ、新千歳、仙台、中部、関西、福岡、那覇の7空港を拠点に運航しています。


どうして航空券を安くできるんですか?

外部委託やリースを利用し
自社負担のコストを抑えている

実はPeachの飛行機は、“リース” と言って借りているものなんです。最近では自動車でもリースのシステムがありますよね。リース期間の8年を過ぎるとお返ししてまた新しい飛行機をお借りします。だからPeachではどんなに古くても8年以上の飛行機はありません。社員は客室乗務員やパイロットが中心で、空港でチェックインをしたり飛行機の周りで作業をする地上スタッフの多くは外部の会社に委託をしています。自社で持つものを減らすことでコストを抑えているんです。

森健明


社長はどんな高校生でしたか?

部活は地学会
天体観測が好きだった

私は長野県の安曇野出身で、松本市内の高校に通っていました。進学校だったのですが、僕は市外から入ったので中学の同級生もほとんどいなくて、おとなしかったんじゃないかなと思います。地学会という部活に入って、夏は国立天文台のある野辺山高原にペルセウス座流星群を観測に行ったり、家でも毎晩天体望遠鏡で木星を観測したりしていました。


高校時代に触れた天気図が
国家試験の勉強につながった

大学を卒業して航空会社(全日空)に入って初めてした仕事が運航管理、「フライトディスパッチ」でした。これには国家資格が必要で、2年の実務経験と学科試験を受けなければいけないのですが、飛行機が飛ぶルートや高度、燃料を決める仕事なので、お天気が非常に重要になってくるんです。高校時代に同じ地学会で「気象」を担当するチームが、各地の気象状況を記号で読み上げるNHKラジオの「気象通報」を聞いて地図に落とし込み、最後に同じ気圧を結んで天気図を作っているのを見ていてすごく面白そうだなと思っていたのが、今につながった! ということはありました。


ユニークな「旅くじ」誕生の経緯は?

世の中にワクワク感を提供したい
という思いから誕生

コロナでみんなが旅行に行けない時期が続いて少し収束し始めた頃に、世の中に “旅に行こうよ” というメッセージを出したいなと思って、出てきたのが「旅くじ」のアイデアでした。カプセル型自販機を引くと中に行き先とミッションが書いてあります。考案したスタッフにも何か変わったことで世の中にワクワク感を提供したいという思いがあったのだと思います。

Peachは創業当初、予算がなくて客室乗務員を募集する広告が出せませんでした。そこで難波駅などで「あなたも客室乗務員になりませんか?」と書いたうちわを配ったんです。そんなことをする航空会社って他にないから、メディアで取り上げられて全国のニュースとして広がり、多くの方が応募してくださいました。この時に今までの在り方ではなく、少し工夫をすることで世の中を驚かせて動かすことができるんだという成功体験があり、それ以降もさまざまな施策をしてきました。


コロナ禍で打撃を受ける航空業界。社長はどう考える?

状況を逆手に取り
国内線強化に力を入れた

コロナは航空会社の業績に直撃しました。Peachでも約40%の割合を占めていた国際線はほぼ1便も飛ばせなくなりました。でも経営者にはいろんな考えがあると思うんです。飛べなくなったなら約40%分の飛行機を手放して社員にも休んでもらって国内線のみやっていこうという考えもあります。でもその時に私が考えたことは、コロナはいずれ終わる。終わって戻ってきた時に花が開くようにしておきたいということでした。

ちょうど成田という拠点を手に入れた時だったので、国際線が飛べないのであれば、この環境を逆手に取ってまだ十分ではない国内線ネットワークを頑張ろうと思ったんです。そこで国際線の客室乗務員とパイロットをすべて国内線に投入して、国内の新規路線を10路線以上開設しました。今回の旅くじや乗り放題パス(Peachホーダイパス)も、路線が少なければ面白みがなく成り立たなかったと思います。私たちにとってコロナ禍にやってきたことは種まきで、Peachをより多くの方に知っていただいたことで今歯車が噛み合ってきたのかなと思います。


コロナ禍で売れる確信がないままいろんな挑戦をするのに不安はなかったですか?

創業時の不安感と比べれば
コロナは終わりが見えていた

もちろん不安はありました。でもコロナは終わりが見えます。僕にとってもっと不安だったのは、会社を立ち上げた時でした。日本にLCCがない中で、果たして成立するのかまったくわからず、あちこちからお金をお借りして社員を雇ったものの、最初はお客様の利用もそれほどなくて。これは終わりが見えない話です。毎週出ていくお金と向き合いながら、このままLCCモデルを続けていくのか会社をやめるのか、どこかで判断をしなければいけませんでした。この時はとても緊張感がありましたね。


社長の一番の旅の思い出は?

フランスから新しい飛行機を運ぶ
事前準備で世界一周

印象深い旅としては、全日空に入社して最初の3年間大阪でディスパッチの仕事をした後、東京勤務になり、「エアバスA320機」の導入を担当したんです。A320機はフランスのトゥールーズで作っていて、通常では中東のドバイやバンコクを経由して日本まで運びますが、ちょうど中東で湾岸戦争が起こったため、北米ルートで運ぶことにしたんです。トゥールーズから大西洋上のアゾレス諸島ポンタ・デルガダ、ワシントン、ロサンゼルス、ホノルル、マジュロ、グアム、日本とフライトしないといけない。安全にフライトさせるために、事前にすべての空港へ行き、燃料などのチェック(サーベイ)を行いました。中東回り・北米回り両方のサーベイを行い、途中エジプトに行ったりポルトガルに行ったり、ほぼ地球1周しました。

すごい! 森社長はその飛行機に乗って帰って来られたんですか!?

現地にはパイロットとフライトをサポートするメンバーが行って、私は準備要員なので、飛行機を運ぶ当日は、日本で機体がちゃんと飛んでいるかをモニターしていました。Peachの最初の飛行機もフランスから中東ルートで日本に来ましたから、Peachの飛行機は国際線がスタートする前から、海外を飛んで来ているんです。


社長の考える“旅の面白さ”とは?

テレビやニュースには映らない
真実の姿が見えること

世界を回った時に思ったのは、テレビで見ていることと実際に現地に訪れるとでは感じることが違うなということでした。さまざまなデバイスで現地の情報を見られるようになりましたが、それが本当にすべてなのかは行ってみないとわかりません。例えば治安が悪いと言われている地域に実際に行ってみるとそうではなかったですし、コロナの際にニュースで映されていたのは海外のロックダウンされた物々しい映像ばかりで、ロックダウン解除後の姿はほとんど映されていなかったですよね。私は、旅は真実を知るために絶対に必要なことだと思います。究極を言えば、旅をすることは平和につながると思っています。


航空業界でこれから求められるのはどんな人材だと思いますか?

どの業界でも活躍する人は
“思いやりのある人”

この人となら一緒に仕事をしたいな、と思うのは、思いやりのある人かなと思います。人に興味が持てて、思いやりのある人。そういう人は社会で活躍できると思います。誰かの質問に対して答える時でも、相手は何が聞きたいんだろうと想像しながら答えてあげたり。そんな人の周りには人が集まって、いろんなアイデアが集まります。そのアイデアを否定せずに聞いていくことで新しいものが生まれます。

旅くじもそうなんです。私も社員からいろんなアイデアを聞くように気をつけています。いかに人を巻き込むかは大切です。私は採用面接などを行っていますが、皆さん志望理由をしっかりと話されます。「お客様と接することが好き」、「社会の役に立ちたい」。でもこうした気持ちは航空業界だけでなく、どんな会社にも通用します。だから航空会社を志望されている方もまずは、“何のために働くのか” “働くとは何か”ということを考え続けてみてください。インターンで社会経験をしてみてもいいと思います。

森社長はなぜ航空会社を受けられたんですか?

高校時代は英語の先生になろうと思っていて、大学は外国語学部で教職課程を取りました。ただ教育実習に行ったの時に就いた指導教員が、一人ひとりの生徒のことを本当によく知っておられて、私は英語を教えればいいだけだと思っていたので驚きました。そこで大学を卒業してすぐに教師になるのは早いなと思い、海外に行く仕事をしようと思い、当時全日空が国際線に進出している時期だったので、全日空を受けました。

森健明


社長の朝ごはん & モーニングルーティン

森社長

写真は東京の家で妻が作ってくれた朝ごはんです。単身赴任先の大阪では歩いて10秒の距離にあるコンビニで買っています。お魚や納豆、ごはん何でも揃うので、私の冷蔵庫と呼んでいます(笑)。航空会社は24時間365日動いているので、朝は5時半に起きて前日の運航データをすべてチェックし、遅れがあった場合はその原因を確認します。その上で前日の運航情報とその先数日間の予約率、私が普段思っていることや社員に伝えたいことを書いて全社員にメールします。毎朝5時半から2時間ほどパソコンに向かって、8時頃に家を出ます。これは就航以来10年近く続けていますね。



高校生へメッセージ

自分の可能性を信じて進んでいただきたいと思います。客室乗務員やパイロットになりたいとおっしゃる方はたくさんいらっしゃいますが、社会人として思いやりを持てる人であればどこでも働けます。一つに目標を絞ってしまうと、世界が狭まってしまうかもしれません。僕もできないことはたくさんありましたが、チャレンジしてみないと絶対にできないんです。だからまずは諦めずに何でもやってみてください。

森 健明Takeaki Mori
‘62年、長野県出身。東京外国語大学外国語学部を卒業後、1987年全日本空輸に入社。航空機のオペレーション全般に関わる業務を担当。その後、LCC共同事業準備室にてPeach の創業者・井上慎一氏とともに創業準備に携わる。2011年に退職。Peach の前身となる準備会社であるA&F Aviation(現Peach)入社。2017年取締役副社長に。’18年よりバニラエア取締役副社長を兼務、統合を牽引した。2020年4月より現職。

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