映画『OUT』品川ヒロシ監督&倉悠貴|「“やっといて良かった”より“やっとけば良かった”は山ほどある」

累計発行部数650万部を突破するヤンキー漫画「OUT」が、品川ヒロシ監督・脚本で実写映画化された映画『OUT』が現在公開中。伝説の超不良・井口達也が少年院を出所し、様々な葛藤を抱きながらも新たな仲間たちや家族との絆を通して成長していく実録青春ムービー。品川ヒロシ監督、そして超不良の井口達也役を演じきった倉悠貴さんに高校生スタッフがお話を伺いました。

STORY
“狛江の狂犬” と恐れられた伝説の超不良・井口達也が、少年院から出所した。
地元から遠く離れた叔父叔母の元、焼肉店・三塁で働きながらの生活を始めるが、保護観察中の達也は、次喧嘩をすれば一発アウトだ。そんな彼の前に現れたのは、暴走族「斬人」副総長の安倍 要。この出会いが達也の壮絶な更生生活の始まりだった。
暴走族の抗争、新しい仲間・家族との出会い、守るべきものができた達也の進む道は―。 

「倉くんは目にすごく魂がこもっていて
『OUT』に合うと思った」(品川監督)

倉さんは本作で “伝説の超不良” 井口達也役を演じられましたが、本作の主演が決まった瞬間はどのようなお気持ちでしたか?

 見ての通り僕はあまりヤンキーではないので(笑)、まさかヤンキー役が来るとは! という気持ちでした。大人気漫画が原作なのでプレッシャーはありましたが、悔いの残らないようにカッコ良く見えるように意識して演じました。

井口達也さんは実在していて品川監督と親友ということですが、井口さんがどんな方か気になったのでネットで検索しました!

品川 出てきた? 倉くんと全然違うでしょ(笑)。若い頃はもっと痩せてシュッとしてカッコ良かったんだけど、今は金髪の坊主ででっかくなってね。優しさと好感度と面白味を抜いたサンドウィッチマンの伊達ちゃんって思ってもらったらわかりやすいんじゃないかな。

確かに実際の井口さんと倉さんはイメージが違うと思いました。

品川 コミックの「ドロップ」でみずたまこと先生が井口達也をカッコ良く描いてくれていて、どちらかといえば実際よりもカッコいい井口達也に寄せたかったんだよね。倉くんとコミックの井口達也、似てるでしょ?

 嬉しいです!

品川 倉くんはコミックの井口達也に似てるというのもあったし、倉くんが主演を務めた映画『衝動』(’21)を観た時に、最後の最後で感情を爆発させるシーンがあって、井口達也のようにキレる感じではないけど、煮詰まって爆発する感じがいいなと思ってね。目にすごく魂がこもっていて『OUT』にも合うんじゃないかなと思ってオファーしました。

倉さんは役作りで不良になりきるためにこだわったところはありますか?

 井口はカッコいい役なので、カッコ良く強く見えるように一番意識しました。「ドロップ」の井口達也はクレイジーで暴力的で荒々しいイメージがあったんですが、本作は半年間の少年院生活を経た井口達也が、葛藤して我慢して過ごす保護観察中に友だちや家族に出会って成長する話なので、アングラな世界の中で生きるゆえの弱さやセンシティブな人間らしさを出すように意識しました。特に漫画で井口が下から上にガッと目を見開いている場面は期待している方もいると思うので、そこは裏切らないように演じました。

本作『OUT』は迫力満点のアクションシーンがたくさんあって、観ていて気持ちが高ぶりました。アクションシーンについて品川監督からキャストの皆さんに何かリクエストはされましたか?

品川 もうたくさんリクエストしました。アクションの形だけ覚えても迫力あるシーンにはならないので、なんで手を添えて避けるのかとか、物理的に避けるために必要なことだとか、リアリティはこだわって何度もしつこく言ったかな。

倉さんのアクションはとてもキマっていてカッコ良かったです。ところで、壁を殴るシーンがありましたが、実際に壁を殴って撮影されたのですか?

 はい。実際に殴ってます。でもさすがに(本物の壁だと)ケガしちゃうのでちょっと柔らかい素材の壁ではあるんですけど、普通に痛くて(笑)。ちなみにスロットマシーンや室外機を殴るシーンは全部品川さんの手なんです。本気で殴るとめちゃくちゃ痛いので、品川さんが「俺は別にケガしてもいいから」って。男気ですね。

品川 あんまり痛くないんだよね。普段から壁を殴って痛くないようにしてるから(笑)

 それ、怖いですよ(一同笑)

倉さんはアクションシーンのために何か練習をされましたか?

 クランクイン1、2ヶ月前くらいから身体作りを始めました。品川さんと水上(恒司)くんと醍醐(虎汰朗)くんと何人かで「今日は背中の日」「今日は胸の日」という感じで本当に毎日休みなくジムに通いました。

品川 不良は強そうに見えないといけないから、みんなで「身体は大きい方がいいよね」って言ってね。

 アクションシーンは、ただ覚えて演じるだけではダンスのようになってしまうので、1ヶ月間くらい身体に叩き込む感じでやりました。長尺なアクションのシーンは、みんな自主的に2、3時間練習していました。

與那城奨さん(JO1)演じる “斬人特攻隊長” 長嶋圭吾、大平祥生さん(JO1)演じる “親衛隊長” 目黒修也、金城碧海さん(JO1)演じる “斬人遊撃隊員” 沢村良も男気に溢れていてすごくカッコ良かったです。

品川 JO1はダンスで不良っぽく演じて踊ったりしてる曲があって、カッコつけたがる不良の要素と元々自分の中にあるカッコ良さがJO1と共通してる部分もあると思う。彼らは特にダンスが上手いから、アクションは心配してなかったんだよね。

「小さなこだわりや無駄と
思われることを大切にしている」(倉)

劇中の会話がとても自然でしたが、撮影現場ではどのような雰囲気でしたか?

 みんな割と同世代なので…。小柳心さん以外は(笑)

品川 まあ同世代ってことにしようよ(笑)。現場は楽しかったね!

 緊張感はありましたけど、ワイワイ楽しく過ごせました。でも、こういうヤンキー映画で同世代の俳優さんがたくさん出ているので、たぶんみんなそれぞれあいつには負けたくないという気持ちは沸々とあったと思います。

井口が葛藤する姿から、自分が心に決めたことを貫く難しさと大切さを感じました。お二人が譲れない大切なものはありますか?

品川 譲れないというか、やりたいことは絶対やると決めています。『OUT2』を制作できるとして、その中でやりたい格闘技の技があったら自分で習いに行っちゃう。みんなにやってもらう前に自分が覚えれば、一番説得力があるから。撮影で使いたいカメラがあったら自分でそのカメラのワークショップに行って覚えてきちゃうとか。飽きたり向いてないと思ったり、今の生活じゃ無理だなと思ったりしたらやめればいいし。例えば英会話を習い始めて3日やってダメだったとしても、3日分の蓄積は残るから0よりはマシだし、それがいつか活きる時もあると思うから。

監督はいつ頃からそうしようと決めたのですか?

品川 30歳過ぎたぐらいからですね。自分の残された人生を考えた時に、あと20、30年かなと思うと毎日がもったいないんで。とりあえずやってみたらなんとかなるだろうって感じですね。

倉さんはいかがですか?

 品川さんにいいことを言われたから…。

品川 いいこと言われたから!? 勝負じゃないんだよ(一同笑)

 僕は、お芝居をする上で、小さなこだわりを一人ひとりが持ちながら出来上がったものが総合芸術だと思っていて。セリフの言い方や演じる役のビジュアルはこうしたいとか小さなことですけど、その小さなこだわりや無駄と思われることを大切にしているのが譲れない部分ですね。そういう小さな部分が重なって厚みが出て映画は面白くなると思っています。



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