農林中金バリューインベストメンツ株式会社
CIO 奥野一成さん
今月は、日本における長期厳選投資のパイオニア、奥野一成さんにお話を伺いました!
2022年から高校の授業にも導入される「投資」。抱いていたイメージとはまったく違う世界が広がっていました!
- ▼投資家・奥野一成さんが心掛けている3つのこと
自分の頭で考える
人は誰かが言っていた言葉に流されがちですが、きちんと立ち止まって、自分の頭で考えます。理由は簡単。そうしないと「負けるから」。ビジネスなので、勝たなければ意味がありません。人の言うことを聞いて勝てることはありません。
やってみる
考えているだけでは何にもならないので、やってみること。ビジネスの世界は正解が明確にないので、100%正解、100%失敗ということはないんです。あとはどれだけの確率で勝てるか。それは実際にやってみないとわかりません。
やり抜くこと
続けることは本当に難しいですが、続けていないと勝つ喜びは味わえません。論理的に考えた上で7割勝てると思ったら、3回連続で負けたとしても続けることが大切です。やり抜く力は、もしかしたら才能よりも大事かもしれないと思っています。
まずはどんな会社か教えてください!
プロの投資家から4000億以上の
お金を預かり、運用
簡単に言うと、運用会社です。銀行や年金基金、国内外の投資家からお金をお預かりして、株式に長期投資して資産を増やしてお返しするという仕事です。現在4000億円以上のお金をお預かりしています。運用会社にもいろいろありますが、僕は一度買えば売らなくてもいいような、長期的に利益を上げられる企業にのみ投資をしているのが特徴です。
“投資”ってどういうことですか?
企業の株式を保有し、
その企業に稼いでもらうこと
株式に投資する(株を買う)というのは、お金を預けて、自分よりも優秀な経営者や素晴らしいビジネスモデルを持つ企業に働いてもらうことです。株を買うことは、ギャンブルではありません。たしかに怪しい投資の儲け話をする人もいますが、僕の考える投資とは、今ある資産(時間・才能・お金)を注ぎ込むことで、将来より大きなものを得るということです。
ありさ(高3)
これはお金だけに限りません。例えば皆さんにとっての最大の資産は時間だと思います。この時間を無駄にせず、部活で少しでもプレイがうまくなるように努力することで数ヶ月後の大会で勝つといった、より大きなものになって返ってくるというのが投資です。2022年4月から家庭科で金融教育が入りますが、僕はできるだけ若いうちに知っておく必要があると思っています。
オーナー(株主)になるってどういうこと?
時給100万円の社長を
部下にすること!
海外の有名企業の社長は、だいたい年収が何十億です。例えば年収20億もらっている社長であれば、土日が休みで年間250日働くと考えたら、1日800万円なんです。1日8時間働くと考えると時給が100万円。その会社の株を買えば、オーナーになる、つまり、その20億の社長が部下になるということになります。
例えばその会社のお店でアルバイトするとなると、時給は1000円ほどですよね。株式投資(株主になること)は、時給1000円の人が、時給100万円の人を部下にすることができる、法的に許された手段なんです。そう考えれば面白いですよね。
あおい(高2)
高校時代はどんな学生でしたか?
暗黒の時期から一転
時間の有限に気付き、勉強に没頭
僕は京都の洛南高校という進学校で、当時は男子校でした。中学までは関西人なので、みんなを笑わすようなキャラだったのですが、高校の入学式の日、男の子ばかりの光景に真っ暗な気持ちになったんです。勉強して、その時入れる一番偏差値の高い高校に入ったら男子校だったということに入学してから気が付いたんですね(笑)。校則もめちゃくちゃ厳しい上に女の子がいない! しかも周りは勉強のできる子たちばかりで、それから1年半ほどは暗黒の時代でした。
でもある日、自転車で大事故を起こして、病院に運ばれて。入院して絶対安静で寝ていると、このまま体が動かなくなるんじゃないかと不安ばかりが募って、時間ってすごく大事だなと思ったんです。そこから1年半は今置かれた中でできることをしないといけないなと思い、死に物狂いで勉強するようになりました。結局最初の1年半は、自分がいろいろ理由をつけて逃げていたんですね。それで京都大学の法学部に入りました。
将来やりたいことはどうすれば見えますか?
何事もやり抜くことで
やりたいことは見えてくる
高校生の時は、みんなわからないものだと思います。今置かれた中で最善のことをしていれば、きっとやりたいことは見つかります。今考えている“なりたいもの”って、実現しないことも多いです。僕の場合、小学生の頃は政治家か野球選手になりたいと思っていたけど、野球に関しては自分なんかよりもっと上手い子たちがたくさんいて、小学3年の時点で諦めました。ただ、“こんな風に生きたいな”というのは、突き詰めていけば後悔しない人生になるんじゃないかな。
だから何でもいいから打ち込んでやり抜くということが大切だと思います。何事も続けていく中でしか見えてこないことがありますから。例えば部活は社会の縮図です。顧問がいてキャプテンがいて、上手い子もいれば上手くいかない子もいて、上手くいかない子をサポートしたり…その中で人との付き合い方を学ぶことができます。
アクションを起こすことに躊躇してしまいます。
何かアドバイスはありますか?
人の目が気になるのは一瞬
失敗は、して当然と考えておく
どんなことも失敗することを前提にしておいたらいいと思います。最初から上手くいくことなんて無理なんです。だから失敗して当たり前だと考えておけば、どうってことないかなと思います。教室の中で、誰かが「あの子失敗して馬鹿じゃないの」と言うのは一瞬です。何十年も経って、その人が覚えているということはありません。
自分が思うほど、人は自分のことをちゃんと見ていません。自分の人生に責任を取ったり、楽しんでいくのは自分なんですよね。社会に出たらもっと大きな、いろんな人とのつながりができます。信頼できる友だちもできます。社会はもっと厳しいし、楽しいですよ。一歩を踏み出さないのは、踏み出さない理由を人のせいにしているだけなんです。こんなことしたら馬鹿だと思われるんじゃないかって。でもやらずに損をするのは自分だからね。
いつき(高2)
出世するかどうかは別にして、そういう風に生きる人は幸せです。人は出世するために生きているわけではないし、お金持ちになるために生きているわけでもない。幸せになるために生きているんですよね。少なくとも不幸になるために生きている人はいないでしょ。お金って、追いかけると逃げるんです。でもお金は“ありがとう”のしるし。世の中のどれだけ多くの人に「ありがとう」と言われることをしたかの評価なので、ありがとうをたくさん積み上げて、結果としてお金が付いてくると考えればいいと思います。
本を読まれることはありますか?
小説でもビジネス書でも
気に入った本は繰り返し読む
読みますよ。僕の本の読み方は少し変わっていて、同じ本を何度も読みます。いろんな本をすごいスピードでたくさん読んでいく方もいらっしゃると思うんですが、僕は小説でもビジネス書でも、気に入った本を繰り返して読みます。最近だと「ブルー・オーシャン戦略」とか「リエンジニアリング革命」とか。推理小説も好きで、最近だと東野圭吾さんのガリレオシリーズ最新作「透明な螺旋」を2日ほどで一気に読みました。
「15歳から学ぶお金の教養 先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?」
奥野一成(ダイヤモンド社)
来年度から、高校の家庭科の授業内に加わる「投資」。そんな投資について、投資のスペシャリストである奥野一成さんが、高校生などの若い世代に向けて分かりやすく解説した本です。「お金ってまずなに?」というところから始まり、経済、投資、会社について解説され、最後には本の題名にもある「お金持ちになる=将来必要とされて来る人間像」についても取り上げられています。これからの社会を生きていく上で、知っていて損はない知識、考えが得られます!
りょうが(高1)
奥野さん
高校生へメッセージ
僕はよく「自分のオーナーになってください」と言うんです。自分の思うように自分の人生を動かしましょう、と。でもそれは、難しいことではなく、夢中になれることを見つけて熱中していれば、自ずと自分のオーナーになっているということです。だからとにかく、今やっていることに夢中になってください。そうすればきっと、自分が自分の意思で、人生を切り開いていくことができると思います。自分の価値観を持ってください。