株式会社ネルケプランニング
野上祥子 社長
今月の「社長に会いたい」は、ミュージカル『テニスの王子様』、ミュージカル『刀剣乱舞』、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」、『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage…
数々の2.5次元ミュージカルを手掛ける制作会社の代表取締役社長であり、プロデューサーの野上祥子さんに突撃しました!
人の名前を覚える!
名前はその人を表す大事なものだと思うので、覚えてもらうと嬉しいですよね。日常的にオーディションもたくさんしていて、年間に会う人数が膨大なので物理的に難しい部分もあるんですが「覚えてあげたい」という気持ちは絶対に忘れないようにしています。「自分が覚えたら自分も絶対に覚えてもらえる人になるから」これは若いキャストにもいつも言っていることです。
相手の立場に立つ!
自分だけで物事を考えないで、あの人はどう思うだろう? と考えるようにしています。「ありがとう」や「ごめんね」など、挨拶をすることもそうだけれど、小さい頃に親からよく言われてきた基本的なことは人間関係にはすごく大事なんです。
人や物事の良いところから見る!
悪い部分は言葉にしやすいですよね。例えば人の悪口を言うとか、美味しくないものを「マズい!」と言うとか。でも何でもいいからまずひとつ良いところを考えてみて、次に何が自分に合わなかったかという部分を考えるようにしています。何にでも良いところがひとつは必ずあるはずだから。
まずはどんな会社か教えてください!
2.5次元ミュージカルを多数手掛ける
演劇の制作会社
日本の漫画、アニメ、ゲームを原作とした2.5次元ミュージカルから、ストレートプレイ、ブロードウェー作品、朗読劇などあらゆるエンターテインメントをつくる会社です。
1994年に現会長の松田誠が小劇場を中心とする演劇の制作会社として立ち上げたのが始まりになります。現在は、2.5次元ミュージカル作品を制作する会社として知名度があるかと思いますが、きっかけは2003年に初演したミュージカル『テニスの王子様』です。
「2.5次元」という名称は、お客様の中から自然発生的に生まれてきた名称です。今は2次元の漫画やアニメやゲームなどの原作を持つ3次元の舞台コンテンツに「2.5次元」という言葉が定着したのと、2.5次元ミュージカルの公演数も増えた事でネルケプランニングという会社名も覚えてもらえるようになったかなと思います。
制作ってどんなことをするんですか?
中身の制作から宣伝に至るまで
演劇につながるすべてを担う
まずは舞台の中身づくり。演出は誰に頼もうか、音楽は誰に、脚本は…と中身に関わるすべての部分を話し合います。
そして上演が決まったらチケットはいくらで売ろうか、どれくらいの年齢層の方に観てもらおうかといった宣伝に関わるマーケティングの部分を考えます。
今社員は150人ほどで、生でお客様にご覧いただくための演劇制作をするステージ制作チーム、映像の配信、テレビ・映画館での放送・上映に関する業務、法律に関する法務の管理運用などを行う権利開発チーム、アジア公演に関する業務を行う中国事業部、他にも経理・総務・キャスティング・票券・MD・広報宣伝チームなど、演劇につながるさまざまな仕事や役割があります。
2.5次元ミュージカルが
これほど流行ると思っていましたか?
普段観劇をすることがないという方にも
足を運んでもらえるきっかけとなった
演劇が大好き、演劇をもっと世の中に浸透させたいと思ってきました。そのためにはたくさんの人に劇場へ足を運んでもらいやすい作品をつくることがまず大事だと考えています。
2.5次元ミュージカルの知名度が上がったのは、これまで演劇に興味がなく、劇場に行ったことがなかった人にとって、劇場に行けば漫画やアニメやゲームなどの世界がそこに広がっていて、原作の面白さをさらに味わえるという何倍もの楽しみ方があるんだと気付いてもらうことができたのが大きかったのかなと思います。
つくり手側にも2.5次元ミュージカルというジャンルの認知度が広がってきました。ミュージカル『テニスの王子様』立ち上げ当初は、2.5次元ミュージカルというものがまだ全然知られていなかったので、キャストのオーディションをしても着ぐるみショーのオーディションだと思われることもありました。今はお客様にもつくり手側にも、原作を楽しむための大事な選択肢のひとつとして認知してもらえるようになったかなと思います。
▲先日キャストが発表され、話題の舞台「呪術廻戦」。(東京公演:2022/7/15(金)〜31(日)天王洲 銀河劇場、大阪公演:2022/8/4(木)〜14(日)メルパルクホール大阪)
舞台化する上で大事にしていることは?
原作へのリスペクトが第一
ファンの気持ちを汲み取りたい
一番大事にしているのは、当初から変わらず原作へのリスペクトです。漫画やアニメ、ゲーム、小説といった原作が大事にしている本質を必ず汲み取るようにしています。そうでないと、原作ファンに違和感を与えてしまうかもしれないからです。もちろん100人いたら100通りの思いがあるので全部拾うことはできないけれども、お客様と同じ立場に立って自分だったらここは大事にして欲しいだろうな、というものをイメージして舞台に落とし込む。これだけは絶対にブレてはいけないところだと思っています。
そういう原作ファンの気持ちはできるだけ汲み取るようにしながらキャスティングもしています。
野上社長
羽生結弦さんはスポーツ選手だけれど、もうスポーツ選手を超えたエンターテイナーだと思います。たとえ転倒したとしても、立ち向かう姿にみんな心が動かされる。だからもし羽生結弦さんを誰かに演じてもらうなら、キャスティングはフィギュアスケートを理解して信念がある人を選ぶと思います。ファンの気持ちにはやっぱり寄り添いたいんです。原作が漫画の場合は読者と一緒に読み進めるし、何度でも読み返します。
稽古場にある漫画『テニスの王子様』なんてボロボロで古代の本みたいになってます(笑)
この作品は、舞台のみでなくアニメのキャスティングも担当させていただいたので、1990年代後半から20年以上関わっていますが、何度漫画を読んでもそこに正解とヒントがあるから、また読むんです。手を抜いてしまったら、舞台化した時に衣裳やステージにどんなにお金をかけても好きにはなってもらえないし、繰り返し観たいとは思ってもらえないだろうなと思います。
ネルケプランニングが手掛けた新しい舞台のスタイルはありますか?
“STAGE(芝居)+LIVE”の
二部構成スタイル
ミュージカル『刀剣乱舞』は、1部では歴史を題材にしたストーリーを描くミュージカルを上演して、休憩を挟んだ2部ではライブパートも楽しめる構成になっています。ライブパートではミュージカルパートと違って、ペンライトを振って好きな刀剣男士を応援できるんです。
ミュージカル『テニスの王子様』であれば、通常公演はミュージカルのみの上演でライブパートがないため「Dream Live」というライブイベントを開催しています。新型コロナウイルス流行前は積極的に客席を使った演出をしていました。キャストがすぐそばを通ったら嬉しくないですか? それも作品を体感することだと思っています。
野上さんが考える
2.5次元ミュージカルの魅力とは?
“もしこのキャラクターが現実にいたら”が
劇場で体感できること
2次元で目にしているキャラクターに 「もしもこのキャラクターが現実にいたら…」と考えていくのが私は2.5次元ミュージカルの最大の魅力かなと思っています。もしもの世界を丁寧につくり上げることが大切で、この舞台を観れば元気になるというみんなのビタミン剤になりたいなと思いながらやっています。
野上さんがハマっているものはありますか?
かれこれ40年近く夢中
根っから演劇が好き!
私が小学4年生の時、学芸会でたくさんの鳥が出てくる作品を上演することになったんです。主役の子はハヤブサのような大きな鳥、そこで私は小さなスズメ役をもらいました。セリフは一言「これに!」と主役のハヤブサに枝を差し出すだけのシーンだったのですが、とても心が動かされたんです。その後小学6年生の時に「ヴェニスの商人」を上演することになり、ヒロイン役をオーディションで勝ち取りました。当時アクセサリーなんて持ってなかったので、お母さんのイヤリングを借りて演じたんですが、演じていてとても楽しかったんです。
それをきっかけに今後は絶対に演劇に関わろうと決めて生きてきました。中学・高校は当然のように演劇部に入り、気が付いたら、早稲田大学の学生たちが作ったサークルが小劇場で上演していた舞台を観に行くことにハマっていました。その中で「カムカムミニキーナ」という劇団の舞台を観た時に強い衝撃を受け「この劇団に入れてほしい!」とお願いしたのですが、その時は「高校生だからダメ」だと言われてしまい…。
その後、演劇を学べる大学に進学をし、再度入れて欲しいとお願いしに行きました。最初は俳優志望でお願いに行ったのですが、その際、制作側が足りてなくて制作を担当するようになったことが今につながります。同級生たちからは「まだ演劇やってるの?」と言われるけど、かれこれ40年くらいハマってますね(笑)。今でも空いている時間は自社他社問わず作品を観ていて、本当ならずっと劇場にいたいくらいです。
あえて演劇以外で他に今ハマっているものを挙げるならキャンプですかね。3年ほど前にキャンピングカーを買いました。友人たちと山奥に行ってキャンプサイトを作ったり、旦那さんが重機の免許を取ったので、土地を耕したりして本気で取り組んでます(笑)
野上さんはどんな高校生でしたか?
今と変わらず前に出て
空間を仕切りたいタイプ(笑)
中高一貫の女子校だったのですが、当時から今と変わらず前に出るタイプでした。学園祭実行委員長を任され、後夜祭では司会をしたこともありました。同級生に「祥子がいたら何とかなる」と思ってもらいたくて、生徒会に立候補して「お役に立ちます」と書かれた選挙ポスターを自分で作りました。
常に空間を仕切りたいものだから誰よりも先に学校に行って、窓を開けたり暖房をつけたり、先生たちと話すのが好きで、教員寄りの立ち位置だった気がします。これは大学生時代でも今でもずっと変わらないですね(笑)
限られた時間の使い方はどうしてますか?
隙間時間まで予定はびっしり
優先順位をつけて選択
眠りたいし食べたいし、海外ドラマも観たいし、時間をどうやりくりしているんだろうと自分でも不思議に思います(笑)。学生の頃からいろんなところでリーダーを任されることが多く、授業が終わったらすぐにミーティングという生活だったのですが、びっしり詰まったスケジュールは全然苦じゃなかったんです。
限られた時間を最大限に使うのは今も同じで、休みがとれたら、さあキャンプだ! って早朝に出発しています。1日は24時間しかないから優先順位をつけて選択をしていかないとならないのですが、私にとって一番はやっぱり子供です。子育てをして、仕事をして、観劇をして、キャンプに行って…という生活の中でも隙間の時間を見つけて、ボクササイズもやっています。私にとっては、どれも楽しいんですよね。
“働く” ということをどう捉えていらっしゃいますか?
娘のお弁当も舞台制作もすべて全力
喜んでくれる人がいると頑張れる
私はあまり働くということを意識したことはなくて、演劇が好きで好きでご縁があって今に至るという感じでした。ネルケプランニング入社当時は、仕事が楽しくてお給料がいくら入っているのかも確認したこともなかったんです(笑)。でもある日お金が入っているんだということに気付いた時に、これは仕事で、お金と時間と責任が付き纏うんだなということを初めて意識しました。基本的には娘のお弁当を作るのと全く同じテンションで仕事をしています。喜んでくれるなら手間がかかるけど唐揚げ揚げようか! というのと喜んでもらえるならこういう舞台つくるか! というのが私にとっては同じで、そこに喜んでくれる人がいるかどうかということが大きいのかもしれないですね。
高校生へメッセージ
高校生の頃から私は物事を仕切るのが好きなタイプでした。でもある時母から「あなただけがクラスを仕切って一生懸命動いていてもクラスの中にはそのテンポに付いて来れない人もいるかもしれないよ? あなたの悪い所は、前ばかり見ていて後ろを見ていないこと」と言われて、ハッとしたんです。
みんなそれぞれ自分のペースで生きている、でも向かっている方向さえ同じなら足並みはバラバラで大丈夫なんですよね。だから今は前に進む時は横と後ろを確認して、みんなと繋がっていくことを大事にしています。人と人が出会って生まれるものはとても大きいです。人と出会って自分が何を感じたかを捉えていってください。
人生にはたくさんの選択肢があります。選択肢って朝食にごはんを食べるかパンを食べるかといった小さなことから始まっています。そうした選択肢ひとつひとつを「何でもいい」と言わず、自分で考えて自分の気持ちで「これがいい」と決めることの繰り返しが大切かなと思っています。
STAGE INFO
【東京】 2022/7/5(火)~7/16(土)
日本青年館ホール
【大阪】 2022/7/22(金)~7/31(日)
メルパルクホール大阪
【福岡】 2022/8/11(木・祝)~8/13(土)
キャナルシティ劇場
【東京凱旋】2022/8/18(木)~8/28(日)
天王洲 銀河劇場
詳細情報は公式サイトにてご確認ください。
【東京】 2022/7/15(金)~7/31(日)
天王洲 銀河劇場
【大阪】 2022/8/4(木)~8/14(日)
メルパルクホール大阪
詳細情報は公式サイトにてご確認ください。
【東京】 2022/9/10(土)~9/11(日)
TOKYO DOME CITY HALL
【京都】 2022/9/16(金)~9/25(日)
京都劇場
【東京凱旋】 2022/10/15(土)~10/23(日)
TOKYO DOME CITY HALL
詳細情報は公式サイトにてご確認ください。