今年もさまざまな形で“つながる”を生み出した演劇祭「関西演劇祭2023」

関西演劇祭 実行委員長
南野陽子さんインタビュー

©Koki Nishida

今回、関西演劇祭に初めて参加されていかがでしたか?

南野 参加させていただけて良かったです。10劇団どれも違ったタイプのお芝居でしたが、でも全く違うかといえばそうでもなくて。どの劇団からも関西演劇祭のテーマでもある “つながり” や “絆” がよく見えました。皆さんのお芝居を観ていて、“あの人にこの作品を観せてあげたいな” “あの人は今どうしてるかな?” といろんな方の顔が浮かんできて、とてもいい時間を過ごすことができました。

演劇は「演じること」「観ること」の双方に魅力があると思いますが、南野さんが思われるそれぞれの魅力を教えていただきたいです。

南野 舞台に立つ時は、舞台上の相手だけでなくお客さんにも伝わるように演じることが難しいのですが、舞台を終えた後は一緒に舞台を作った仲間との絆を感じられますし、ひとつの山を制覇したような達成感があって次の作品への意欲が湧きます。舞台を観る時は、客席で大笑いしたり涙したり、人の舞台を観ていると予期せず気持ちを動かされることも多いので、私にとってはどちらも大切な時間です。

演劇は敷居が高いと感じている方がいると思うのですが、南野さんが思う演劇の魅力を教えていただきたいです。

南野 今回私は関西演劇祭に参加して、初めて観る劇団ばかりでしたが10劇団ともファンになる要素がたくさんありました。この劇団には個性的な役者さんがいる、この劇団には素晴らしい脚本を書ける人がいる、こんな演出を見せることができる劇団があるんだと、無駄な時間が全くなかったです。一度観ていただくときっと何か引っかかるものがあると思います。私は関西演劇祭に参加して、これからどんどん飛び込みで演劇を観に行きたい気持ちになりました。

関西演劇祭スーパーバイザー
西田シャトナーさんインタビュー

今年で5回目のご参加でしたが、今年の関西演劇祭はいかがでしたか?

西田 最初の3年間はスペシャルサポーターとして、昨年と今年はスーパーバイザーとして参加しました。僕はスーパーバイザーとしてゲネプロから本番まで全40ステージを観ているので、パッと見ではわからないような劇団の方たちの情熱や苦労を審査員の方に伝えるようにしました。今年の関西演劇祭は高揚感があって、みんながすごく楽しそうに本気を出しているように感じました。

その要因の分析はこれからでしょうか?

西田 今回、人が生まれてから死ぬまで、死に直面した時などに焦点を当てていた作品がいくつかあったのですが、どれも悲しさで終わるのではなく、まるで祝福するようにその人の一生を描いていました。僕は人生が終わるのは寂しいことだと思い込んで生きてきましたが、今年の演劇祭の作品を観て、「終わる」ということも含めてすごく祝福された喜ばしいことだと感じました。具体的に劇団名を挙げると、劇団イン・ノートさんの「KAN・KON・SOU・SAI」では、例え死が待っていても生まれてきたことは幸せなんだということを感じましたし、Artist Unit イカスケさんは、脚本に書かれていないところまで叫んでいて、それはきっと地球の地平線の向こう側まで届けようという思いからの叫びだったと思うんです。そのような可能性に挑む芝居があったり、バイク劇団バイクさんは自分たちには見えていないどこかで誰かを助けているお芝居をされていたりして、みんなで幸せな未来を探っていく演劇祭だったと思います。

Artist Unit イカスケ

バイク劇団バイク

賞が設けられているとどうしても勝者と敗者が出てしまいますが、高校生活でも部活動や勉強で友だちに負けて悔しい思いをしている人もいます。

西田 大人から「勝者」と「敗者」に分かれると習ったかもしれませんが、僕は違う結論がきっとあると思っています。賞が取れなかったことは一見「負けた」と捉えそうになるかもしれませんが、「負けた」ではなくそこからきっと何か新しいことが始まるという風に考えて、関西演劇祭で受賞できなかった劇団は、あの素晴らしい劇団と一緒に演劇祭に出られたぞという楽しさを覚えて帰ってもらいたいです。

関西演劇祭の魅力を高校生に教えていただきたいです。

西田 関西演劇祭は、板尾創路さんという芸人の世界でやってこられた方がディレクターをされている演劇祭としては若い演劇祭です。そこに若者やオヤジたちも集まるんですが、オヤジたちもびっくりするぐらい初々しい芝居をしたりしていて。これからの時代の演劇祭だと思いますので、ぜひ観に来ていただけたらと思います。

関西演劇祭SPサポーター(審査員)三島有紀子監督&
ヨルノサンポ団 生田有我さんインタビュー

三島監督は昨年に引き続き審査員として2度目のご参加となりますが、今年の関西演劇祭の感想を教えてください。

三島 今年もすごく面白かったです。関西演劇祭で演劇を観て、やっぱり演劇も映画も不要不急ではないということを改めて感じました。生で10劇団の公演を観せていただいて、今年はエンターテイメント性がより増したような感じがしました。自分たちの劇団の公演をやめてまで参加する劇団もあったりして、関西演劇祭に向けて演劇を作っている劇団が増えてきた印象があります。

昨年は幻灯劇団、今年はヨルノサンポ団として参加されていた生田有我さんは、昨年の関西演劇祭をきっかけに三島監督の映画『一月の声に歓びを刻め』(2024年2月9日公開)の出演が決まったそうですが、その経緯を教えていただきたいです。

三島 昨年の関西演劇祭で生田さんが出られていた幻灯劇場がすごく好きな公演だったんです。それから大阪で映画『一月の声に歓びを刻め』のロケが決まって、役者さんを探していた時に生田さんの包み込むような優しさにぴったりな役柄があったので生田さんにインスタのDMで「映画のオーディションがあんねんけど、受けてくれへん?」と声を掛けました。

生田さん、関西演劇祭をきっかけに映画出演に挑まれた心境はいかがですか?

生田 中学生の頃にテレビドラマや映画を観たことがきっかけでお芝居にはまったので、映画出演は本当に夢のようでめちゃくちゃ嬉しかったです。関西演劇祭でつながりをいただいたことは本当に嬉しく思っています。

今年の関西演劇祭はいかがでしたか?

生田 昨年もですが、お客様、審査員の皆さん、各団体の皆さんも盛り上げていただいて熱い一週間を過ごすことができました。関西演劇祭は平日のお昼も演劇を観られることが本当に素敵だと思いますし、演劇を観た後に会場付近の公園を散歩していただけたり、そういう部分も含めてすごく豊かな時間でした。

ヨルノサンポ団

▶「関西演劇祭2023」に参加したスタッフはすっかり演劇祭の虜に!