森の健康診断って? 高校生が「海上の森」で森のお仕事を体験!

「海上(かいしょ)の森」で森のお仕事を体験! 森のお仕事と一口に言っても、木を切るだけでなく、森の状態を調査したり、生息する植物や動物を調べたりと様々。普段歩きなれない山道に苦戦しつつも、森の魅力をたっぷりと体感してきました。

海上の森とは?
愛知県瀬戸市にある、約530haに渡り様々な野生生物が生息する豊かな森林・里山。

私たちが体験しました!

そうた(高1)
生物部所属。
部活では畑を管理している。
むさし(高1)
林産工芸科所属。
木材などに関心あり。
かんた(高1)
林産工芸科所属。
森が大好き。
けんた(高1)
林産工芸科所属。
森のお仕事体験に関心があり参加。


森のお仕事体験

①猛禽類調査

海上の森にはさまざまな猛禽類がいます。ここでは、毎日、どんな猛禽類を見ることができたかを記録するお仕事を体験しました。

猛禽類とは?
鳥類の中でもワシ、タカ、フクロウなどの仲間のこと。海上の森で生態系ピラミッドの頂点にいる猛禽類たちは、その下の生き物たちの減少や環境変化の影響を受けやすいんです。海上の森ではこれまでに15種類程度の猛禽類が確認されています。

海上の森で見ることのできる猛禽類たちをPICK UP


オオタカ
準絶滅危惧種。「愛・地球博」(2005年)のメイン会場候補地だった海上の森は、当時絶滅危惧種であったオオタカが営巣していたことから、保全のために会場変更された歴史もあるんです。


ハチクマ
絶滅危惧II類。雛に栄養価の高いハチの幼虫を与えるために、ハチの巣を持って飛んでいることも。


ノスリ
秋〜春にかけて見ることができる。お腹に入った帯状の柄が特徴。


調査体験!

空が開けた、海上の森センターの屋上へ。猛禽類を見つけた時間を記録する人、地図上で位置を確認する人、双眼鏡で特徴を確認する人と役割分担して、全員で空全体を確認します。

石原さん

猛禽類は、よく晴れた風がある日の午前中に、飛んでいることが多いです。悪天候の日以外は、ほぼ毎日調査をしています。

集中してあらゆる方角の空を観察すること30分弱…西の方角上空に飛んでいる個体を発見! お腹に茶色い帯のような柄があったことから、ノスリだと確認することができました。

空をぼーっと見つつ、鳥を探す過程が心地よい! バードウォッチングにハマリそう。

②生物季節調査/森の巡視

続いて、季節ごとの森の生物たちの状態を確認する「生物季節調査」と、一般の方が安心して森の中を散策できるよう、コースの安全などを確認する「森の巡視」に同行。海上の森の豊かな自然に触れてきました。

都さん

保護の必要がある植物に目印を付けたり、外来種を除去したりしています。

高低差のある森を進んでいくなか、咲いていた草木や、確認した木の花、確認した昆虫・野鳥などを記録していきます。


メジロを発見! 風景に溶け込んでいます。


植物たちをPICK UP


《スルガテンナンショウ》
多年草。小さい株は雄花序をつけ、大きくなると雌株に完全に性転換するとのことで、びっくり!


《ヤブツバキ》
常緑の小高木。種子から獲ることのできるツバキ油は有名です。


《ウグイスカグラ》
落葉低木。開花時期は春ですが、冬に咲くこともあるそうです。


《ヒヨドリジョウゴ》
多年草。鮮やかな赤い実がかわいらしく、目を引きます。


《ゲンノショウコ》
多年草。乾燥すると下から裂けて、くるんと上に巻き上がる種が面白い。


《キチジョウソウ》
漢字では吉祥草。花が咲くと縁起が良いとされています。


《クロモジ》
落葉低木。冬の海上の森には、木の芽を見に来られる方も多いそうですが、このクロモジは、形が美しく、人気の芽なのだそう。

植物の中にはイノシシが泥だまりで体につけた泥を擦りつけたものや、動物が齧ったあとのあるものもありました。直接動物に出会えなくても、その生態の一端を垣間見ることができるのも興味深いですね。


PICK UP!
湿地とシデコブシ

かつて東海湖が広がり、砂や小石が流れ込んだ痩せた土地であるこの地域では、高い木が育ちにくく、開けた日当たりの良い湿地帯が見ることができます。こうした土地に生息するシデコブシは東海地方固有の低木で、環境省のレッドデータブックにも記載されている希少な植物です。

野口さん

放っておくと、高い木が侵食して湿地帯がなくなってしまうため、必要に応じ伐採しています。

屋戸湿地

足元には、よく見るとたしかに小石が。


ふわふわの毛に覆われたシデコブシの蕾。春には白やピンクの花を咲かせます。


森の巡視

周りを見ていくと、木の上の方にぶら下がっている木の枝を発見。落ちて通行する方が怪我をすることのないよう、高枝ノコで切り落とします。


なかなか落とせない…意外と力が必要です!

森の中を何気なく歩いていると気付きませんが、その裏では、職員の方々による、こうした生物たちの保全や安全管理が行なわれているんですね。

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