CPAエクセレントパートナーズ株式会社
国見健介社長
“日本一良い教育機関をつくる” という思いで23年前に始めた公認会計士資格スクール「CPA会計学院」は2023年に三大難関国家資格のひとつ、公認会計士試験の過半数以上の合格者数を輩出。国見社長の思いを聞きました。
まずはどんな会社か教えてください。
公認会計士試験の合格者を多数輩出する
資格スクールを運営
会計ファイナンス人材を生涯支援し、皆さまの人生の可能性を広げていく会社です。代表的な事業としては、公認会計士資格スクール「CPA会計学院」の運営のほか、簿記や会計ファイナンスを完全無料で学べるeラーニング「CPAラーニング」ではさまざまな実務が学べる講座を行っています。また、会計ファイナンス人材の皆さまがキャリアアップするための職場を探す支援として、会計ファイナンス人材特化型 求人サイト「CPAジョブズ」、会計ファイナンス人材の転職サポート「CPASSキャリア」、会計ファイナンス人材の生涯支援プラットフォーム「CPASS」と、会計ファイナンス人材への学びからキャリアまで生涯支援事業を展開しています。
国見社長が会社設立に至った経緯を教えてください。
資格合格には正しい勉強法と
正しい努力が明暗を分けると気がついた
大学を卒業して起業した時は、正直言うとそれほど高い志があったわけではないんです。私の場合は家業を継ぐために、「大学に入ったら会計を勉強しなさい」と親から言われて渋々始めた資格勉強でした。公認会計士試験に合格して、その後後輩たちに教えるアルバイトを2年ほどしていた時に、当然受かる人、受からない人が出てきて、資格の合否でその人たちの人生の明暗が分かれた気がしたんです。受かった人はめちゃくちゃ輝いて、丸の内なんかの素敵なオフィスで働いて、エリートの道を歩いていく。ダメだった人は自信を失って、負のサイクルに陥ってしまう。
でもそこにほとんど差はなくて、たまたま勉強のスタート時に勉強の習慣がついたとか、良い先生に出会えたとか、勉強仲間がいてモチベーションができたとか、そういった細かいことの積み重ねの結果、合否が分かれただけだと感じました。正しいやり方と正しい努力さえすれば、本来全員受かるのにって。そこで、もっとわかりやすい理想のスクールを作ればみんなハッピーになるな、とそれくらいの思いで始めました。
実際に間違った勉強をする受講生は社長の目にどう映りましたか?
例えばプールが二つあったとして、片方は水が入っていなくて、水が入っているプールからスプーンで水を移していくとしたらすごく効率が悪いですよね。バケツを使えば早いのに、スプーンで一生懸命移行しながら、“自分はダメなんだ” と思ってしまう。正しいやり方があるのに、間違った努力をしているから結果が出ない。それが空を飛ぶとかであれば努力をしても難しいですが、ある程度実務的な内容であれば正しいアプローチをすればできるはずなんです。それは部活でも仕事でも同じです。私はよく社内で「95%の努力は無駄な努力」と言うんですが、正しい努力を選択することはすごく大事だと思っています。教え始めてみて驚いたのは、人ってこんなにモチベーションのキープが難しいものなんだな、こんなに間違ったやり方をするんだなということでした。
モチベーションを保つ秘訣を教えてください。
自分の成長過程に
もっと目を向けてみる
モチベーションってすごくシンプルで、メリットとデメリットを比較して、メリットの方が多ければ人はモチベーションが続くんです。例えば今私が「これから富士山に登ろう」と言えば、おそらくみんなが嫌がります。「今台風来てますよ」「雨でびしょ濡れになりますよ」って。でも「頂上に登った人にはひとり1億円プレゼントします」となれば、みんな「今すぐ行きましょう」となりますよね。
なぜ勉強せずにテレビやスマホを見てしまうかといえば、デメリットがほとんどないのにメリットが少しだけあるからなんです。だけど実際は時間を超無駄にしているというデメリットがあって、たまに後悔するんですよね。だから外的な “点” の結果、例えば公認会計士試験に受かるといったことだけを目標にしていると、“できないかも” と思った瞬間に得られるメリットがゼロになって急にモチベーションが下がります。
何かにチャレンジする時は、自分の実力が上がって成長しているという面に目を向けるといいと思います。RPGゲームであればレベルがどんどん上がって、強さや素早さ、防御力などが上がっていく過程がありますよね。現実にはその数値は見えないですが、何かに本気で取り組んでいると、計画を立てる力や自分に足りない部分を分析する力、壁にぶつかっても諦めない忍耐力といった、結果を出すために必要な目に見えないソフトスキルが全部鍛えられます。
だから短期的な結果で一喜一憂しないで、壁にぶつかっても “今の自分のやり方ではうまくいかないことに気づけてラッキー” とか、メリットを一つひとつ感じていくと、壁がきても “あ、次の壁がきたな” とレベルに合わせて乗り越えていくことができると思います。壁にぶつからないのは進んでいないということですから、成長もしていないんです。RPGゲームのようにもう少しレベルを上げて、少し良い武器を手に入れて、これでいけるかな、みたいに自分の勝てる確率を上げていくみたいな意識です。
目の前の結果だけに一喜一憂しないということが、進み続けるためにとても大切です。
自分の信じた道を突き進む時に大切にしていることは何ですか?
何かひとつのことに本気になれば
人より突き抜けることができる
人って日々分かれ道があって、そこで1日1,000回くらいは意思決定をしています。例えば今日の取材では何を話そうとか。そうした選択の連続だと思うんです。この選択は、“そっちの方が楽しそうかな。そっちの未来の方がいいんじゃないかな” というシンプルな気持ちで選んでいけばいいと思っています。失敗したらまた違うことをやればいいかなくらいの感覚です。私は少し特殊かもしれないですが、人と違う道を進むことをそれほど気にしていないところがあります。
みんなと同じ道に進むと結果も平凡になってしまいますから、違う道を進んだ方が差別化を図れますよね。私の場合は起業して失敗しても会計士の仕事に戻ればいいし、一度起業して失敗した経験があれば会計士としてスタートアップを支援する時に自分の失敗からアドバイスもできて、差別化になります。大学生であれば、みんな留学もしたければサークルも楽しみたい、アルバイトもしたいという気持ちがあると思うんですが、逆に留学を4年間しましたという人がいれば、ひとつの経験ではあるけれど、人より突き抜けると思うんです。だから総合力を上げなくてもいいのかなと思っています。
自分が本気になるものはどうやって選べばいいですか?
私は選ぶ道をあまり迷いません。例えばAからZまでの扉があった時に、皆さんどの扉が正解かと悩み続けますが、おそらく正解ってないんです。例えば部活なら、サッカー部でも突き抜ければ楽しいし、野球部でもゴルフ部でも突き抜ければ楽しい。正解の扉があるんじゃなくて、自分が一番夢中になりそうな扉を開いて、それを正解にしていくという感覚です。あまり正解を探そうとしないで、まずひとつを本気でやってみて、それをやり続けたいと思えばやり続ければいいし、違ったと思えば戻って違う扉から進めばいい。悩んで進んでいない状態が一番もったいないと思うから。正解を求め過ぎてしまうと、今は情報が多すぎて余計に迷ってしまいますから。どの道も正解にもなるし不正解にもなるから、もっと自分の感覚を信じていけばいいと思います。
今やりたいことがたくさんあり過ぎてすべての扉を開けて全部が薄くなってしまっているので、改めないとなと思いました。
ひとつに絞らなくてもいいとは思うのですが、やりすぎてしまうと全部が中途半端になってしまうので、やはりある程度は有限な自分の持ち時間をどう使っていけば一番自分の理想に近づくのかというジャッジは必要だと思います。仮に会計士の勉強と英語の勉強、プライベートでは友だちと遊ぶ時間、恋愛する時間に使いたいという思いがあってもそれをすべて両立するのが大変であれば、先に会計士の試験に受かってから英語の勉強をしようと決めて、2年間真剣にやるというのもいいんじゃないかと思います。
仕事とプライベートの時間をどう分けるかも自分の決めの問題なんです。私は週6日は自分の夢のために使って、週1は家族と過ごしたりプライベートに使うと決めて、23歳の頃から続けています。この先介護が必要になったり家庭の事情が変わればこのバランスを変えて、自分で決めた中でベストを尽くしていくと思います。何かを得たい時、やはり何かを諦めることは大事なので、そこは人生の取捨選択なんじゃないかなと思います。
“日本一合格者を出す” という目標を20年かけて達成。どんな気持ちで続けてきましたか?
自分のゴールと現在地を
明確にイメージしてきた
私の基本的な考え方として、イメージできたものは実現できると思っています。 “良い学校にしたい” だけだとイメージがあやふやで、“日本一” がつくと具体的になります。では日本一になるってどういうことだろうとそのゴールをイメージするんです。これくらいのスタッフがいてこういうサービスができていれば日本一良いサービスだと言えるという具体をイメージします。これは目的地のイメージです。そして、現在地を見ると、まだ何もないわけです。社員は私だけみたいな。
このゴールと現在地さえがイメージできれば、あとは一つずつ近づいていくために足りないところを埋めていけばいい。Googleマップで行きたいお店の場所を検索した時も、目的地と現在地さえわかれば、あとは手段の話なので、正しい努力を選択していけばたどり着けます。私が「日本一のスクールをつくる」と言った時は、個人塾のようなところからスタートしましたから、1,000人に話せば999人は「無理でしょう」と言ったと思います。でも諦めずに続けていくと、私の場合は20年かかりましたが、たどり着くことができました。だから焦らずじっくり取り組んでいくといいんじゃないかなと思います。
正しい努力ができているかはどうすればわかりますか?
その道で成功している
先人の話を聞いてそのまま真似する
そこは答えがないんですよね。ただ、必ずそれをすでに達成している人がいるので、成し遂げている人に聞くのが早いと思います。富士山に登る時も、初めてだとどんな装備でどのルートで登ったらいいかわからないですが、富士山に100回以上登ったことがあるような富士山マスターに聞いて、その通りにやればいいんです。あまりそこでオリジナリティを出さないことも大切かもしれません。公認会計士の試験も、これまでに約4万人が試験に受かってきているわけですから、講師などその人たちに聞くのが一番です。
私もマネジメントの話などは、その分野で結果を出している経営者の方に聞きまくっています。そうした方々の本も読みます。ほとんど経営をやったことのない経営学の教授などではなく、実際に結果を出している人のアドバイスを聞くことが大事。世界でその分野のナンバーワンになるまでは、先人にどんどん頼っていけばいいと思います。私の学生時代の同級生にはすごい人たちがたくさんいて、以前はそれが劣等感にもなっていましたが、今は「自分より優れた人がたくさんいてくれてラッキー」と思っていろんな話を聞いています。普通なら話を聞けないような大企業の社長でも同級生なら気軽に聞けますからね(笑)
仕事で失敗した経験はありますか?
失敗は前に進んでいる証拠
“めちゃくちゃ良いもの” と考える
基本は失敗だらけです。でも失敗しないということは、今の能力でできることしかやっていないということだと思うんです。次のステージに行くためには、これまでやったことがないことをするわけですから、必ずたくさん失敗をします。大切なのは失敗を避けることではなく、早く失敗をして、そこから学んで今できないことが1年後にできるようになっていればいいという発想で臨むことかなと思います。落ち込んで可能性が上がるなら落ち込みますが、そうではないので、切り替えてどうすればより良くなるかだけに集中します。失敗はめちゃくちゃ良いものくらいに思っていたらいいと思います。ユニクロの柳井正さんだって『一勝九敗』という本を出されていますからね。
国見社長はどんな高校生でしたか?
高校は楽しく過ごすことだけ考えていた
大学では理不尽さも経験
高校生の頃は合コンみたいなことをしたり友だちと遊んだり、どうすれば今日を楽しく過ごせるかということしか考えていませんでした(笑)。めちゃくちゃ楽しかったのですが、振り返ると何も残っていなかったので、大学生になった時はそれを繰り返さないように時間を大切にしようと思うようになりました。
大学ではマニアックなのですが遠泳部に入っていました。夏はエアコンも何もない海辺の合宿所に1ヶ月ほどこもって、毎日ひたすら海を泳ぐんです(笑)。行く前日に丸坊主にして、朝は浜辺に出て大声で自己紹介をするという儀式から始まりました。もちろんスマホなんてなかったですし、当時は今と違って先輩が絶対だったので本当に大変でしたが、体力がついたことと理不尽なことがあっても腐らず、その中でどうすれば自分のベストを尽くせるかみたいなストレス耐性はついたと思います。おかげで会計士の勉強もこれに比べれば全然楽でしたね。
人生を豊かにする
人生は一度きりですので、いかに楽しく充実して幸せに生きるかが大切です。それは私自身もそうですし、仕事を通じて一緒に働く仲間、お客様、関わってくださる業界の方々の可能性を広げていくことが一番だと思っています。
方法を考えて前進する
学業や部活でも同じだと思いますが、高い目標を掲げていると壁がたくさん訪れます。その時に落ち込むのではなく、壁がくるのは当たり前だと考えて、どうすれば目標に対して一番確率が上がるかを分析して方法を探し、前進し続けています。
どれだけ協力関係を築けるか
ひとりでできることは限られています。ですから自分たちにできることの可能性を広げてより良い未来を切り開くためには、一緒に働く仲間や関係者の方々、専門家の方々とどう協力関係を築いていくかが非常に大事になると考えています。
国見社長
進路に悩む学生へメッセージ
自分がこれだったら楽しそうだからやりたいと思ったことをやるのが一番だと思います。そして絶対に自分の可能性を自分で諦めないことが大切です。仮に金メダルを目指して金メダルが取れなかったとしても、その能力を生かして活躍できる仕事は無限にあります。あと、若い頃はつい華やかに見える競争の激しいところに興味が向きますが、戦う場所を選んであまり競争の激しいところで勝負しないということも大事にするといいと思います。陸上でも100m走は花形ですが、比較すると400m障害は競技人口が少なく、メダルの取りやすさも違いますよね。その上で可能性を諦めないこと。“自分なんて” と思って自分で蓋をしなければ、人間の可能性は無限に広がっていますから!
取材を終えて
ちひろ(高2)
失敗しても死ぬわけではないし、その失敗を次の仕事で生かせばいい。「失敗していない=自分の今の能力の範囲でしか行動していないということ」など、失敗に対してこれほどポジティブな考えに触れたのは初めてで、「たしかに!」と思いました。
かのん(高2)
穏やかな話し口調で、どのお話も心に響きました。中でも現在地と目指したいゴールが明確であれば、あとはアプローチの仕方次第で夢は達成することができるというお話がとても印象的でした。私も自分の可能性に蓋をしないようにしていきたいと思いました。
しらべ(高2)
最近いろんなことに手を出し過ぎて、薄々“この生活を続けていたらダメだな”と思っていたので、行動を変えようとしたところを国見社長に後押ししてもらいました。人生の取捨選択、とても勉強になりました!
れいな(高2)
国見社長はきっとどの道を選んでも成功されただろうなと思うほど、考え方がシンプルでいて力強くて、とても知性に溢れていました。周りにいる人たちも幸せにする考えだなと思いました。