こわいけいど面白いのはなぜ!?中島哲也監督の最恐エンターテインメント『来る』公開記念イベント「ぼぎわんが、来る」の謎

中島哲也監督の最恐エンターテインメント映画『来る』の公開を記念して行われたイベント「ぼぎわんが、来る」の謎。

妖怪”ぼぎわん”が三重県に伝わる理由とは…?
人気声優・野水伊織さんが登場人物に声をあてるとしたら?
小説と映画で違いはあるの?

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第一部 原作小説「ぼぎわんが、来る」の世界を読み解く


金城学院大学文学部教授・小松史生子先生、中京大学文学部教授・甘露純規先生、そしてホラー映画好きとして有名な声優・野水伊織さんが登壇。様々な視点から、原作小説「ぼぎわんが、来る」の魅力について迫りました。

この作品の魅力を教えてください。

甘露「僕は、水木しげるなどが描いてきた、可愛らしくて面白い、姿を与えられた妖怪像に挑戦状を叩きつけた作品だなと感じました。ぼぎわんは最後まで正体が特定されない、妖怪としては肩透かしなものですが、それはつまり、飼いならされていないということでもあります」
小松「例えばアメリカの小説家スティーブン・キングの作品では、前半では得体の知れない何かとして描かれてきたものが、後半になると姿を現します。でも日本人は物理的存在として描かれた時点で恐怖を感じなくなる傾向があるんです。なので、最後まで正体がわからないぼぎわんは日本人の恐怖の感性に合った存在なんですよね」
野水「最近は海外の作品でもタイトルに“IT”とつくものが増えましたね。正体がわからないから“それ”と表現するしかないものを怖いと感じる日本人的な感性が世界にも広がっている気がします。また、多角的視点から描かれる恐怖がジェットコースターのようにやって来るのもこの作品の魅力ですね」

作中でぼぎわんは三重県に伝わる妖怪として描かれているのは何故なのでしょうか?

甘露「ぼぎわんは江戸時代、宣教師とともに西洋から伝わったとされています。このころ西洋では近代科学が発展し、妖怪たちは西洋に住みづらくなってしまった。そこでぼぎわんは日本にやって来るのですが、都会では合理主義が流行し、かといって人がいない地域では語られることもない。都会すぎず田舎すぎない三重県は逃げ込む場所として丁度良かったのではないかと思います」

作中に登場する民俗学の大学教授・唐草大吾(映画では津田大吾)。同業者から見た彼の印象は?

小松「嫌な奴ですよね(笑)。ホラーやミステリー作品には、大学教授はよく登場するので、やっぱり出てきたなと。大学教授は知識を持っているので、何かを聞きにくるポジションにはぴったりなんでしょうね」

映画では妹の真琴を小松菜奈さん、姉の琴子を松たか子さんが演じ、物語上でもとても重要なキャラクターである比嘉姉妹。もし野水さんが声をあてるとしたら?

野水「真琴は気だるげだけど、だらしないわけではなく、芯があって、感情表現が豊かなハスキーボイス、琴子は、真琴より小柄という描写があるので、高めで透明感があるけど、経験の豊かさから来る芯の強さも感じさせる声なんじゃないかと思います」

第二部 「ぼぎわんが、来る」朗読 〜第一章(二)(三)より〜


女流怪談師・志月かなでさんによる原作朗読。映画では妻夫木聡さん演じるイクメンパパの田原が幼いころ、おじいちゃんの家でぼぎわんと遭遇するシーン。朗読が始まると、会場には一気に緊張感が張り詰めます。舞台上には志月さんしかいないはずなのに、まるで登場人物たちがそこに存在しているかのようで、自分も物語の中に引き込まれたのではと錯覚してしまうほど。あまりの臨場感に、クライマックスでは会場全体が仰け反ってしまいした!

〈第三部 映画『来る』への期待〉


第一部の登壇者と共に、映画『来る』のプロデューサー・西野智也さんも登壇。映画の見所などを語りました。

映画『来る』の制作にあたって、苦労した点はありますか。

西野「小説をどのような映像にしていくかという試行錯誤はありましたが、苦労した点というのはないですね。原作小説が、構成もキャラクターも非の打ち所がないくらいおもしろいですから。中島監督は、この原作はどうですかと聞いても、なかなか首を縦に振らないのですが、これに関しては即答でやりたいと返事をいただきました」

映画版の特徴を教えてください。

西野「中島監督作品だというところです。脚本からキャスティング、演出、音楽、編集、CGに到るまで一切妥協がありません。最初から最後まで、中島監督らしさが溢れた作品になっています」

ここからは登壇者の皆様から、プロデューサーへご質問をお願いします

小松「個性的で魅力的なキャラクターが多い中、私はオカルトライターの野崎がお気に入りなのですが、よく映画化にあたり、キャラクターが改変されることがありますよね。野崎も改変された部分はあるのでしょうか」
西野「変えているところはありますが、根っこの部分は変わっていないです。原作では野崎のバックグラウンドはあまり描かれていないのですが、映画の主人公として据えるために、原作にはない彼のドラマを追加しています」

甘露「逆に、原作では壮大なバックグラウンドを持つ比嘉姉妹はどう描かれているんでしょうか」
西野「二人とも、生い立ちなどはあまり描いていないのですが、その奇抜さを出すため、ビジュアルにこだわっています。真琴役の小松菜奈さんは人生で初めて髪をショートカットにして、ピンクに染めてもらいました。また、あまり感情表現がない日本最強の霊媒師という琴子は、その雰囲気を表現できるのは松たか子さんしかいないと、最初にキャスティングが決まりました」

野水「脚本を書いていったら4時間分くらいになってしまったので、そこから削っていったとお聞きしました。そのくらいたくさんの要素が詰まった作品ですが、一番重きを置いているところはどこですか」
西野「誰しも、人に対して気に入らないなと感じることがあると思うんです。そういった、ちょっとした掛け違いがぼぎわんを呼んでいるというところです。ぼぎわんの化け物的な恐怖だけでなく、視点が変わった時に、前の語り手は実はこう思われていたんだとわかる怖さを感じて欲しいですね」

来る

こわいけど、面白いから、観てください。

〈ストーリー〉
オカルトライター・野崎のもとに相談者・田原が訪れた。最近身の回りで超常現象としか言いようのない怪異な出来事が相次いで起きていると言う。田原は、妻・香奈と幼い一人娘・知紗に危害が及ぶことを恐れていた。野崎は霊媒師の血をひくキャバ嬢・真琴とともに調査をはじめるのだが、田原家に憑いている「何か」は想像をはるかに超えて強力なモノだった。民俗学者の津田によると、その「何か」とは、田原の故郷の民間伝承に由来する化け物「ぼぎわん」ではないかと言う。対抗策を探す野崎と真琴。そして記憶をたどる田原…幼き日。「お山」と呼ばれる深い森。片足だけ残されて赤い子供靴。名前の思い出せない少女。誰かがささやく声。その声の主…・そ・う・か!・あ・れ・の・正・体・は・あ・い・つ・だ!
どんどんエスカレートする霊的攻撃に、死傷者が続出。真琴の姉で日本最強の霊媒師・琴子の呼びかけで、日本中の霊媒師が田原家に集結し、かつてない規模の「祓いの儀式」が始まろうとしていた。彼らは、あれを止めることができるのか!?

  • 原作:澤村伊智「ぼぎわんが、来る」(角川ホラー文庫)
  • 脚本:中島哲也 岩井秀人 門間宣裕
  • 監督:中島哲也
  • 出演:岡田准一 黒木華 小松菜奈
    青木崇高 柴田理恵 太賀 志田愛珠 蜷川みほ 伊集院光 石田えり
    松たか子 妻夫木聡
  • 配給:東宝
  • 映倫区分:R12+

©︎2018「来る」製作委員会

全国公開中

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