3年後の2026年、愛知・名古屋で第20回アジア競技大会・第5回アジアパラ競技大会が開催されます。国内外からたくさんの選手や観客がやってきますが、その中には日本語がわからない外国人や障害のある人たち、高齢者もいらっしゃいます。そんな方々に大会を、そして愛知・名古屋を存分に楽しんでもらうために、愛知県に住む私たちはどんなことができるでしょうか?海外から愛知県に来ている学生も交え、体験や座談会を通して、みんなで考えてみました。
アジア競技大会・アジアパラ競技大会とは?
アジア競技大会は、4年に1度開催されるアジア最大のスポーツの祭典。アジアの45の国と地域が参加し、オリンピックで実施される競技に加えアジア特有の競技が実施されます。
アジアパラ競技大会は、4年に1度開催されるアジア地域の障害者総合スポーツ大会で、2010年より開催されていて、日本での開催は今回が初めて。
障害のある人や高齢者はどんなことに困っているのでしょうか?まずは車いす乗車と高齢者疑似体験をしてみました。
車いす乗車体験
普段暮らしていると気づかないようなたった数cmの段差でも、自力で越えることは難しい!街中に普通にある段差ですが、高校生男子の力でも全く乗り越えられません。楽そうに見える下り坂も、スピードが出過ぎないように制御するにはかなりの力が必要です。
介助する人も想像以上に力が必要でびっくり!車いすの広げ方・閉じ方も知りませんでしたが、これだけでも知っていると、介助のお手伝いができますね。
高齢者疑似体験
音が聞こえにくくなるヘッドフォンや視野が狭まるメガネ、関節の動きを制御する重りなどを装着し、加齢による身体的な変化を疑似体験します。
当たり前にできるはずの行動が想像以上に難しくなります。ただでさえ視界が狭く、音も聞こえにくいのに、歩くことに必死にならざるを得ず、さらに周りの様子が把握できなくなっていき、短い距離でも一人で歩くのは不安でした…。
読めない標識体験
道路標識や看板も、外国人の方が意味を勘違いしてしまったり、障害がある方に上手く情報が伝わらない可能性も。
例えば横断禁止の標識。人の上に×が無いので、道路を横断してもいい場所だと勘違いするかもしれません。また、わかりやすいように色分けされている看板も、色覚障害がある方には色の違いが判別できず、余計に混乱を招く恐れがあります。
旅先や訪問先でバリア(不便)を感じた経験はあるかな?
こたろう あります。海外に行ったときに、土地勘もなく、言語もわからないので、誰に道を聞いたらいいのかもわからず、とにかく不安でした。
あいら 私は普段地下鉄に乗らないので、駅で矢印を頼りに出口に向かったんだけど、矢印がありすぎて、どこに何があるのかわかりにくかったな。日本人でもそう思うんだから海外から来た人はなおさらだよね。
アリ 私も、日本に来てまだ1年経たないので、電車はまだひとりでは乗れません。複雑でわかりにくくて…。また、せっかく日本に来たのでいろんな飲食店に行ってみたいけれど、メニューが日本語だけだと何を頼んでいいのかわからないので、結局多言語メニューが用意されているチェーン店しか行けないのが残念。
オリベイラ 特急や急行の存在を知らなかったので、乗った電車が降りたい駅で止まらず通り過ぎて、焦った経験があります。ブラジルの電車は全ての駅で止まるのが当たり前なので…。
私たちの身の回りにあるバリア(来訪者に不便をかける点)について考えてみよう!
ゆめ 高齢者体験をしてみて、高齢者の方はこんなにも不安な思いをしているのかと驚きました。車いすもほんの少しの段差でも越えられないし、普段生活していると気づかない些細なことも、高齢者や障害のある人にとってはバリアになっているんだなと実感。
オリベイラ 怪我をして車いすに乗っていたことがありますが、普段は15分の通学路に倍以上の時間がかかるし、初めての場所は車いすで通れるかわからないので慣れている場所にしか行けないし、モタモタして周りに迷惑を掛けられないというプレッシャーもありました。
まほ 車いす体験で、介助者と車いすに乗っている人との視点が違うから、どこにどんな危険があるのか、視覚的な部分だけではわかりにくくて怖かったです。コミュニケーションが必要だと実感しました。
けんし やっぱり実際に体験してみないとわからないバリアがたくさんあるよね。僕は安全のために設置されているはずの側溝の蓋に傘が挟まって転けたことがあります。これが杖をついている人だったら大怪我につながるかも…。
すみれ 全盲の友だちが、剥がれかけた点字ブロックに躓いて、転びそうになったことが。ただ設置するだけで終わらず、きちんと整備して、安全に使える状態にしておくことが大切だと思う。
私たちには何ができるだろう?
こたろう 海外で右も左もわからない、知らない人ばかりの時に、“知っているもの”に触れられると安心するし、知っている言葉で話しかけてもらえると、“救世主!”って感じると思う。挨拶だけでも覚えておくといいかなって。
りさこ 大会にはたくさんの国の方々がいらっしゃると思うので、英語・中国語といった主要国の言語だけではなくて、いろいろな国の挨拶を覚えたいね。
ゆま 難しい説明はできなくても、相手が行きたい場所さえわかれば、一緒に目的地まで行ってあげることができるよね。
まほ 言語の壁があっても理解できるマークをもっとたくさんの場所に表示しておくのも有効だよね。
すみれ 愛知・名古屋にはおいしい物も観光地もたくさんあるのに、それを楽しんでもらえないのはもったいない!会場以外でも楽しんでもらえるように、多言語メニューがあるお店や地元民だからこそ知っている情報を載せたマップを作って、発信できないかな?
アリ 写真が載っているマップがあれば、いろんな食べ物に挑戦できますね!
みほ SNSを使って情報発信するのも有りだよね。来てくれた人たちにオススメできる地元のおいしいお店、探しておかなくちゃ。
ひなた 一つの手段に頼るのではなく、様々な方法で同時に情報発信できれば、より多くの人に伝わるね。
オリベイラ リオオリンピックのときは、観光客と一緒に観光地を回るボランティアがありました。趣味なども登録して、年代や話題の合う人を担当できるようになっていて、好評でしたよ。
ひなた そういうボランティアは地元民にとっても、改めて地元の魅力を知るいい経験になりそう!
エンサール トルコでは街中に「高齢者専用トイレ」があります。学校でも「君たちが高齢者の方を助けなかったら、誰が助けるの?君たちが助けなければ、君たちが歳をとった時に誰も助けてくれないよ」といつも言われているので、高齢者を助けるのは当たり前という意識になっています。
すみれ へえ!意識を変えていくってとても大切なことですね!でも、困っている人に声を掛けるのって勇気がいるよね…。普段からそういう体験をしておくことで、いざ大会が始まってからも声掛けをしやすくなると思う。
エンサール 日本に来て、日本人は外国人をとても大切にしているなと感じます。でも日本人は恥ずかしがって、外国人や知らない人になかなか話しかけられないのかなとも思っています。
あいら 一人だと声を掛けづらくても、友だちと一緒なら行動できるかも。
けんし 声を掛ける勇気がない人も、たとえば、点字ブロックの上で立ち止まらないとか、物を置かないとか、優先席を空けておくとか、できることがありそう。
こたろう 車いすに乗ってみて、補助してくれた友だちのほんの少しの気遣いがとてもありがたく感じたし、大それたことをやらなくちゃいけないわけじゃなくて、小さなことでも自分のできることをするだけでも、きっと誰かの役に立てるよね。
りん 今日の体験を通して、「点字ブロックの上に立ってはいけない」など“知識”はあるけど、それが実際に当事者の方にとってどれだけ重要なものなのか“実感”できていないとわかりました。そこを変えていかなくてはいけないね。
かずき もちろん、当事者の方の意見を聞くことも問題解決につながるから、こうやって話し合える機会がもっとあるといいな。
せいは 今回集まった17人で話し合っただけでも、自分では思いつかなかった視点をたくさん得ることができたから、普段から色々な視点から物事をみて、知識や経験を増やしておこうと思う。
さほ 地元でアジア競技大会・アジアパラ競技大会が開催されることを知らなければ、こういうことを考えることもないから、まずは大会の開催を知ってもらうことも大切だよね!
りさこ そうそう、開催前に大会への意識を高めておこう!
まほ 地元で大きなイベントに関われると同時に、色々な人と交流できるせっかくの機会だもんね。
全員 今日学んだことや、自分の想いをまわりの友だちなどに共有して、明日から実践&挑戦していきたいね。私たち若い力で、大会を盛り上げていきたいと思います!
第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)
2026年9月19日(土)〜10月4日(日)
メイン会場:名古屋市瑞穂公園陸上競技場
実施競技:約40競技(想定)
選手団(選手・チーム役員):最大15,000人
第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)
2026年10月の7日間(想定)
メイン会場:名古屋市瑞穂公園陸上競技場
実施競技:18競技(想定)
選手団(選手・チーム役員):4,000人程度(想定)