社長に会いたい|トラント小川直子社長「きっとゲーム感覚で仕事をするのが得意なのだと思う」

株式会社トラント 小川直子社長

社内の半数以上を女性社員が占めるというシステム開発会社を20年牽引してきた小川社長。仕事への愛、IT業界への愛に溢れた、将来がちょっと楽しみになるインタビュー!

 

まずはどんな会社か教えてください。

創業から20年
ミッションは「ITでサプライズ!」

システム開発を行っている会社です。ITを通じて企業様の成長を支援し、ビジネスを成功に導けるよう、時代のニーズを捉えたITによるサプライズの提案を行っています。現在はIT業界の慢性的な人材不足を解消するため、DX人材の女性向けのキャリアスクール「DX CREATORS」も運営しています。

 

女性がIT業界で働きやすくなる環境作りに力を入れている理由は?

女性の参画を増やして
IT業界を活性化させたい

私がIT業界に入ったのは30年ほど前ですが、当時は理系の男性ばかりで、ほとんど女性はおらず、就職先の部署にも女性は私ひとりしかいないという環境でした。でも例えばコスメなど女性向けのサービスを作る仕事であれば、女性目線で作る方がお客様のニーズをより理解できることもあります。

それに女性の方がコミュニケーションをとることが得意な場合も多いので、お客様の要望に寄り添いやすいこともあります。今でも女性SE(システムエンジニア)は2割ほどしかいないと言われていますが、そうした女性ならではの強みを生かせる環境が作れたら、IT業界はもっと活性化するのではないかと考えました。

 

IT業界は女性にも向いている仕事だと思いますか?

働き方を選択しながら
女性らしさを生かすことができる仕事

すごく向いている業界だと思います。パソコンひとつあればリモートで働けますし、衰退することのない業界です。長く働けて、なおかつ自由な働き方の選択肢もたくさんあります。しかも今はAIが発展してゼロからからプログラムを作らなくてもいい時代になりました。それよりもお客様が何を作りたいかを把握して設計する役割が大きくなっています。今は女性がIT業界に入りやすい仕組みを一生懸命研究しているところです。スマートフォンで日常的にアプリを使いこなす若い皆さんには特に、苦手意識を持たないで女性でも入れる業界なのだと知ってもらいたいなと思っています。

 

お仕事のやりがい・大変だったことは何ですか?

仕事のやりがいを感じるのも
苦境を乗り越えるのも “人” の存在

やりがいは、やはりサービスを使っていただいたお客様に喜んでいただけることが一番大きいです。20代の頃は学ぶことが面白くて自分のために仕事をしていましたが、会社を立ち上げてからは特に、もうひと踏ん張りする時は、常に誰かのためということを意識してきました。大変なことは本当にたくさんあって(笑)。社会って一定周期でいろんなことが起こります。新型コロナウイルスもそうですし、15年ほど前にはリーマン・ショックが起きました。

この頃は会社を設立した当初で私も怖いもの知らずで仕事をしていましたが、契約締結までしていたお客さんの発注が白紙に戻ってしまい、途方に暮れてなかなか会社に戻れないこともありました。でもその時に諦めずに継続してこられたのは、やはり “人” の支えがあったからだと思います。仕事は自分ひとりでやっているわけではないので、チームで “もう一度頑張ろう” と立ち上がれたことが大きかったです。

 

海外進出のメリットは何ですか?

マーケットは海外にも拡大
ベトナム開発拠点からグローバル企業に

トラントでは10年ほど前にベトナムに拠点を作りました。ベトナム人はとても成長意欲が高くハングリーです。ストレートにお金の話も聞いてこられますし、自分の成長にすごくワクワクしているのが伝わってきます。仕事の後もプログラムの勉強会に行ったり日本語の勉強会に行ったり、皆さんずっと勉強していて、社員旅行に行っても日本語の単語帳を持ってきているほど。その辺りの成長意欲は日本人との意識の違いを感じました。今は10年前にはなかったコンビニ、マクドナルドやスターバックスなどの外資系の飲食店も増え、国の成長も感じます。

一方で法律もどんどん変わっていってしまうため、ベトナムならではのルールをしっかり理解して契約書も細かくチェックする必要があり、文化の違いには苦戦もしました。社員も意欲があるからこそ、他の会社にどんどん転職もしていってしまいますし。あと今は円安でもあるので、ベトナムに参入している欧米企業に仕事が取られてしまうという状況もあります。それでもベトナム人は英語ができる方が多いので、海外の仕事を受けた場合には、日本よりベトナムで作る方が効率がよかったり。もちろんコスト面の違いもあります。そうした点で、東南アジア含め海外でお仕事をしていくことは強みになると思っています。

 

新入社員の頃、どんな気持ちで仕事に向かっていましたか?

仕事もゲーム感覚
楽しくてしょうがなかった

私は早く社会人になりたくて、社会に認められたいという承認欲求がとても強かったと思います。新人は「会社のお荷物」と言われていた時代でしたが、私はそれがいやで、1年目から5年上の先輩のプログラマーより、自分ができる簡単なプログラムは速く仕上げるというのを自分の中でルール化して勝手に競争していました(笑)。これは何分で終わらせなきゃいけないとか、そうしたルールをいくつも作って、先輩がこのくらいだから自分はきっと会社のお荷物ではないはずだと思いながら猛烈に働いていました。時間を短縮するために会社の中を走ったりするので怒られたりしてましたけど(笑)。きっとゲーム感覚で仕事をするのが得意なのだと思います。今でもいろんなものをルール化しているところはあると思います。

 

仕事を辞めたいと思ったことはありますか?

挫折はたくさんあるけど
辞めたいと思ったことはない

挫折はたくさんありますが、仕事を辞めたいと思ったことはないですね。自分がこの仕事に向いているかを考えるというよりは、自分のスキルが上がっていろんなことができるようになってくると、自分は何がしたいのかという目的のために働くようになっていたと思います。自分の得意な部分は徹底的に伸ばして、苦手な部分は今なら誰かにお願いしますし、20代の頃なら “平均点を取る” ことを目標にしていたように思います。例えば私の場合は事務処理が苦手だったので、100点を目指すのではなく平均点ぐらいはできるようにしておこう、みたいな。

 

自分の力が出せずに落ち込んだ時はどう気持ちを切り替えていますか?

失敗は当たり前
すぐに行動して次に進む

結論から言うと、“行動”。頭で考えすぎると一歩踏み出すのが辛くなることってありますよね。だから極力無駄なことは考えずにできる限り早くアクションを起こすようにしています。あと、失敗は当たり前というか、一回でうまくいくことなんて基本なくて、一回でうまくいったとしたらむしろ偶然に近いんじゃないかと考えているかもしれません。だからすべては成功にたどり着くための経験ですね。あ、これがうまくいかないんだな、と理解していく感じです。

 

小川社長はどんな高校生でしたか?

強豪校の吹奏楽部に入部
3年間部活三昧の日々

高校は吹奏楽部でサックスを吹いていました。全然楽器をやったこともなかったのですが、部員が130人ほどいて全国大会を目指している強豪校に入ってしまって、1年間にお休みは年末年始の3日間くらいだけという高校生活を送っていました。しかも付属校だったので、3年の12月までやっていて。他の体育会系の子たちもそうだったのですが、部活に本気な学校だったので、修学旅行も行かず。

でも全国大会以外にも施設での演奏会だったり野球部の甲子園の応援だったり、毎月いろんな場所での演奏会に参加させてもらうのが楽しくて、辞めたいと思ったことはなかったですね。ただ当時はリーダーシップがあったわけではなくて、100人分の衣装を梱包したりする衣装係のリーダーをしていたくらい。そこで団体行動や掲げた目標に対して組織がどうひとつにまとまっていくかということを学んだ気がします。

当時は進路をどう考えていた?

高校生の頃、パソコンの授業が少しだけあったんです。もともと数学が好きだったので、自分に向いているな、楽しいなと思いました。そこで漠然とですが、情報処理などパソコンを触って仕事をしたいと思うようになりました。大学は情報処理科に進んでプログラミングを勉強して、授業で自分で考えてシステムを作ってみるという取り組みをした時に、こんなに生活が便利になるものが作れるんだというのが楽しくて。そこで進路を決めました。

IT業界に女性が少ないということで不安に思うことはなかったですか?

それは全然なかったです。楽しくてしょうがなくて! 最初、金融会社のシステム部に入ったんですが、当時金融系だと女性はほとんど窓口に配属されていたので、面接で「システム担当じゃなかったら絶対にいやです」と言ったくらい(笑)。でも進路は難しいですよね。社会なんて知らないのに決めろと言われても決められるものじゃない。だから私も会社を決める時は、内定をいただいてからも本当にこの選択でいいんだろうかとすごく悩みました。


▼小川社長が心掛けている3つのこと

  1. 約束を守る

    スケジュールが忙しくなるとなかなか時間が作れないということもありますが、ビジネスは信頼関係なので、約束を守るということは大事にしていきたいと思っています。

  2. すぐにやる

    何かをお願いした時にすぐに反応してくれる人ってやはり信頼されますよね。だから誰かからのちょっとしたお願いでも自分から拾いに行くということは大事にしています。

  3. 諦めない

    会社を始めて20年、これまで大変なことも挫折することもいろいろありましたが、そこで終わりにしない、諦めないで自分を信じてやり続けるということを続けてきたかなと思います。

 

小川社長の朝ごはん&モーニングルーティン

小川社長

健康的な食事が好きで、朝はサラダや果物など軽いものを食べることが多いです。徒歩通勤で8時半頃家を出るので、6時半頃起きて、2時間ほどはゆっくりとその日の仕事の準備をしたり、10分間のストレッチをするのが朝のルーティンです。もちろん息抜きもします。外に出ることも好きなので、週末は人と会ったり、旅行に行ったり趣味のダイビングをしたりしています。



進路に悩む学生へメッセージ

ITは今すごく進化していて、今後AIの時代がやってきます。2030年は皆さんが社会に出始める年ですよね。だからまさにAI時代を担う世代です。ITは全然難しいものではなく、時代とともに成長していくものなので、怖がらずにいろんなことに興味を持ってもらうといいかなと思います。すでにSNSで発信したり、情報を見つけたりは当たり前のようにしていますよね。それってすごいスキルなんです。だから新しいサービスが出たらちょっと触ってみるとか、流行りに乗っかる感覚で新しいツールやサービスを楽しく使ってユーザーとしてのITリテラシーを上げておくといいと思います。IT業界に女性がもっと入ってくれたらうれしいなと思っているので、皆さんが来てくださるのをお待ちしています!



取材を終えて

明るい小川社長のパワーに背中を押されたchスタッフ一同。
ITの仕事に対しても、働くということに対しても、難しいイメージが “楽しそう” に変わって、将来働く自分の姿が楽しみになりました。

ちひろ(高2)
小川社長の「仕事が楽しい!」「IT業界が好き!」という気持ちが伝わってきてとても楽しい取材でした! 仕事は大変なものというイメージがあったので、社長が朝から仕事をしているという話も驚きでした! もちろん大変なことも多いと思いますが、こうやって本当に楽しんで仕事をされている小川社長の話を聞いて、社会人になるのが楽しみになりました!

しらべ(高2)
今回は女性社長ということで、より身近に感じられるお話が多くて楽しかったです。小川社長は私の中の“将来こんな風になりたい”という像をすべて体現してらっしゃって、なおかつそうなれるような道筋を言語化して伝えてくださって、とても濃い学びになりました。高校生の頃から小川社長はすでに小川社長で、本当にカッコいい! 憧れの女性です!

れいな(高2)
ITは自分にはあまりなじみがないと思っていたのですが、小川社長の話でとても身近なものなのだなと思うようになりました。取材終わりに広報の方が「社長、全部が鉄人エピソードすぎませんか? もっと人間らしい話を入れたほうが…(笑)」と笑っておられて、社員さんとのやりとりからもその関係性や会社の雰囲気が伝わってきて、とても素敵でした!

小川直子Naoko Ogawa
1973年、神奈川県出身。短期大学卒業後、1993年、システムエンジニアとして金融機関に入社。1999年、システム会社に営業として入社し、1年間でトップセールスを記録。2002年、グループ会社の役員に抜擢。2004年、独立して株式会社トラントを設立。ITシステムの開発ときめ細やかなサービスの提供を行う。2023年、DX人材の育成から紹介まで一貫した女性DX人材の紹介サービス「DX CREATORS」をスタート。