12月18日にベストアルバム『Big Monster Kite』をリリースし、2025年1月31日での解散を発表した4人組エンタメ集団・BMKから、米谷恭輔さん、松岡拳紀介さん、佐藤匠さんが登場! これまで何度も取材させていただきましたが、おそらく最後のインタビューです。
「ちょっとこの曲やめない?」
アルバムに収録されている新曲はメンバーの皆さんで決めたんですか?
米谷 そうです。最初は音と仮歌だけのデモが何十曲もあって、メンバーで話し合って、これとこれとこれって決めました。『BIG MONSTER KITE』にはこれまでの楽曲の歌詞が散りばめられているのですが、今回は制作の段階からメンバーも参加させてもらって、ファンの方には気づいてもらえるような仕掛けとして、作詞の先生にお願いして作ってもらいました。
佐藤 今、これとこれとこれって言ったでしょ? そんなスピーディーに簡単にいかなかったんだから。
米谷 メンバーそれぞれ好みも違うので、まずはひとり2曲まで選んで、そこからまた1曲に絞って…の繰り返しでした。
ちなみにこの3曲のうちどれから決まっていったんですか?
佐藤 『HEAVY⁉︎』がとりあえずキープの形で決まったんだけど、『BIG MONSTER KITE』がまぁ大波乱で(笑)。深夜2時に僕が「ちょっとこの曲やめない?」と電話したり、「この中からは選べないのでもう1回デモをください」と言ったりする場面もありました。みんなは大人に反抗しないでしょう? 僕たちも「この中で選んで」と言われたら、この中で選ぶタイプだったんだけど、最後だったのでさらに熱が入りましたね。和のテイストが入ったような曲もあったけど、リード曲ではないよなぁというやりとりもありました。あと、バラードは絶対入れようと思っていて、実際に曲が決まったのは、『HEAVY⁉︎』→『タイムカプセル』→『BIG MONSTER KITE』の順番でした。
『BIG MONSTER KITE』の歌詞にある《俺らが“Monster”(おれら)になった場所》と実感したのはどんな場面でしたか?
松岡 ありがたいことに最近舞台に出させてもらう機会が多く、BMKではない時間が増えて、環境や雰囲気に合わせて自分の立ち振る舞いも変わってくるようになりました。でもやっぱり、BMKでいる時間は家というか帰ってきた場所みたいな感じでやりやすくて、そういう時に気づきますね。
佐藤 すごくびっくりしたのは、彼が1人で外に行った時に、他のスタッフさんに聞くと「松岡さんは本当いい子です」って言うの。
米谷 え?
松岡 1番いい子だよ。
佐藤 (スタッフさんのモノマネをしながら)「松岡さんは準備が1番早くて…」
米谷・佐藤 え?
佐藤 「返事もしっかりしていて…」
米谷・佐藤 え?
佐藤 「すぐ移動してきてくれて…」
米谷・佐藤 え?
松岡 臨機応変というか、今後みんなも必要になってくると思うよ(笑)
佐藤 彼はこれから家を無くすの。
松岡 そうだね。
佐藤 これからいい子で生きていくしかないから、頑張ってくださいね。
米谷 僕は、名古屋にある専用劇場のBMシアターかなと思います。研究生時代はライブしかやることがなかったので、歌って踊るだけではなく、みんなで遊ぶゲームコーナーやお客さんを巻き込んだファンミーティングなどもやらせてもらいました。そんな楽しい思い出も、お客さんが全然集まらなくて大変だった思い出も、全部詰まっていますね。
佐藤 僕は対バンだと思います。研究生として活動していた時は、比べる対象が自分たちの事務所の中でしかなかったので、オリジナル楽曲が少なかった僕たちから見ると、事務所内の他のグループが輝いているように感じました。でも、対バンに出演して外に出てみると、僕たちも僕たちでちゃんと個性があったんだと実感し始めて、それが自信になりました。外の世界に飛び出して、誰かと比べることも実は良いことかもしれません。
コンプリート版に収録されているドキュメンタリー『俺らが俺らになったBMK』はご覧になりましたか?
米谷 少しだけ観ました。
佐藤 事務所で垂れ流しになっているんですよ(笑)
松岡 今までの歴史が詰まっていて、「よくこんな動画残っていたな」と思うくらい、物持ちのいい人が編集したんだと思います。メンバーの成長過程が分かるし、入所したばかりの頃の顔が面白いです。
佐藤 米谷の眉毛の角度がどんどん下がっていくんですよ。昔はV字でつり上がった細めデザインが人気だったけど、時代の流行に合わせて眉毛が下がって、表情も丸くなっていきました。あれは必見です。
米谷 ほぼ10年前ぐらいのオーディションや初披露など初々しすぎる映像から、最新の僕たちが一気に見比べられるドキュメンタリーになっていると思います。事務所で流れている映像を観ながら、先輩たちも「あの時、面白かったな」と笑っていますね。
佐藤 うちのマネージャーがなぜか大号泣してるんですよ。
松岡 誰が泣いてんねん(笑)
佐藤 最後の最後に、メンバーもファンの皆さんも知らない、ここでしか見られない顔が収録されているので、ぜひご覧ください。
『BIG MONSTER KITE』のMVのラストシーンでは、ルートビアを飲まれていました。
佐藤 僕は癖のあるものが大好きなので、美味しかったです。ルートビアを飲んでいる絵を撮りたいと言っていただいたので、感想も言わなきゃいけないと思っていたけど、この人(松岡)が「湿布みたい」って言ったんですよ。
松岡 あれ声入ってるの!?
佐藤 入ってるよ。そこだけはどうにか使わないでくれと願ってたんですけどね(笑)。撮影に入る前にMVの絵コンテをいただいたのですが、エンドテロップ用の映像は撮ったことがなかったので、最初はどういう仕上がりになるんだろう?と思っていましたが、僕たちらしいラストシーンになりました。
松岡 最後に「バイバイ! お疲れ!」って乾杯して解散するのに、みんな同じ方向に歩いて行くんですよね(笑)
佐藤 バラバラに進むとテロップに被っちゃうからさ。
他にもMV撮影の思い出はありますか?
松岡 撮影前日のご飯が本当に美味しくて!
佐藤 それは撮影の思い出じゃない(笑)
松岡 やっぱり米ちゃんのドライブシーンかな?
米谷 海が綺麗なロケーションの大きな橋の上で、メンバーを乗せてオープンカーで走りました。僕は免許を持ってはいるけど、普段はなかなか運転しなくて最速でゴールド免許になったぐらいのペーパードライバーなのに、久々の運転でしかもメンバーを乗せるというのは本当に緊張しました。ありがたいことに、ドローンを飛ばして空から撮っていただいたので、撮影のスタッフさんと連携をとりながら、音に合わせて運転しました。
佐藤 かっこいい車だったよね!
米谷 ベンツのレンタカーだったので、1本目はもう肩ガチガチでした。
松岡 僕は助手席に乗っていたんだけど、米ちゃんがまったく動かないから岩が運転しているのかと思いました。
佐藤 そんなことないです(笑)。僕たちも米ちゃんの集中力を欠いちゃいけないと思って、オープンカーで盛り上がるシーンなのに、最初はシーンとしていました。撮影2日前に「米谷さん、運転免許ありますか?」と聞かれていて、できればやりたくない気持ちもあったよね。
米谷 あの橋を6回ぐらい走ったからだんだん緊張も解けてきたんだけど、実際にMVに使われたのは最初の方に撮影したシーンでした。最後の方はこなれ感が出ちゃったのかな?
撮影前日のご飯のお話もぜひ聞かせてください。
佐藤 MVの会社の方が沖縄に住んでいらっしゃったから、間違いないところに連れてってもらって、もうみんな大はしゃぎでした。
松岡 コロナ禍に入ってから、メンバー全員でどこかに行くことがなかなか無かったので本当に楽しかったですね。
佐藤 高校生だとまだ実感が湧かないと思うけど、人のお金で食べるご飯が非常に美味しいんですよね(笑)
松岡 払わなければ払わないほど美味しい!
米谷 最悪だ(笑)
松岡さん考案:楽しかった沖縄の「O」ポーズ
『HEAVY⁉︎』のMVは名古屋のいろんな場所で撮影されています。
米谷 名古屋駅から車で5分ぐらいのところに、黄色や緑のちょっと変わった歩道橋があって、そこでリップシーンを撮りました。
佐藤 その歩道橋に行かなきゃいけなかったのに、全然たどり着けなかったんですよ。
米谷 ナビ通りに進んでもなかなか見つけられなくて大変だったよね。
佐藤 あの時はめちゃくちゃ苦労して行ったのに、今日はたまたま車で通りかかって面白かったね(笑)
松岡 あとは、スポルティーバというプロレスを観ながらご飯が食べられるお店も行きました。その時期、それぞれ舞台などがあってなかなか全員集まる機会が少なかった中、「久しぶりにBMKが揃いました!」って投稿された写真がリング上での撮ったものだったので、ファンの皆さんには「こいつらどんな仕事してるんだろう?」って思われたんじゃないかな(笑)。そこも、個人的に遊びに行ったり、ロケでお邪魔させてもらった場所だったので、思い出いっぱいです。
MVではとても楽しそうな表情がたくさん収められていますが、どこまでが台本でどこまでがアドリブでしたか?
佐藤 実は全部演技なんですよ。
松岡 やだわー冷めるわー(笑)。今回、僕たちの先輩・BOYS AND MENの平松賢人さんが振り付けやMVの監修をしてくれて、小道具も平松さんの手作りでした。《えっさほいさ!》で僕が踏んでいたマリオのブロックみたいなものも1個しかないから、一発撮りしかできなかったんですよ。
佐藤 台本ではぺしゃんこに踏み潰す予定だったけど、少し潰れただけでうまくいかなかったんだよね。だからもう1回やり直そうと思って僕があの箱を整えたら、その上にけんぱがドカっと足を乗せて転んで、2人で笑っちゃうっていうね。あと、《ワンダワンダWonderful!》もよく観ていただくと、三隅一輝がボヤけているんですよ(笑)。それも味だなと思っています。
松岡 半分以上が一発撮りだったので、カット数も少なくて、撮影時間も巻いて夢のような素晴らしい時間でした。
佐藤 その後、平松さんが編集したラフが次の日に上がってきたんですよ、怖いでしょ?
松岡 家に平松さんが10人ぐらいいると思う。
佐藤 その中でじゃんけんして勝った人がライブできるんだよ(笑)
松岡 やっぱりこれが一番楽しいわ〜って。2人ぐらいは寝ているんだろうな。
佐藤 とにかく、全部演技じゃないです(笑)
米谷 1番ありのままの自分たちが出たMVだったと思います。
何をどこに埋める?
『タイムカプセル』は、優しく寄り添った歌い方が印象的でした。
佐藤 いつもだったらレコーディング前にめちゃくちゃ練習して、スマホで録音して自分の声を確かめたり、“ここでこういう音を出して”とか“ここはもっとクリアにして”とか、メモをびっしり書き込んだりしています。でも今回は、歌詞を覚えるだけにして、その時の気持ちで歌おうと決めていました。そしたら、レコーディング当日、非常に苦戦してとても緊張しました。でも、いつもより歌い方の計算がない分、自然体な音を出せているのではないかなと思います。
松岡 練習不足ですね(笑)
佐藤 ありのままをお届けできた作品です!
好きな歌詞はありますか?
米谷 サビで繰り返される《さよならよりも はじめよう》ですね。曲調がしっとりとしたバラードなので寂しい気持ちにはなりがちなんですけど、前向きになれるような新しい一歩を踏み出すための曲でもあると思うので、お気に入りのフレーズですね。
松岡 僕は《寂しさよりも 響くのは 僕らの笑い声》が好きです。普段僕たちは楽屋でわいわい騒いでいるからイメージできて歌いやすかったですし、そういう風に残りの活動もしていきたいなと思っています。
佐藤 僕が歌っているところだと《いつまでも鮮やかな蒼でいれるように》ですね。今回は、いつも作詞してくださる方とは別の方が歌詞を書いてくださったんですけど、以前も青について歌った曲があったので、ここでリンクするのはすごく嬉しいなと思いました。本物のタイムカプセルは色褪せたり、土埃が被ったりするかもしれないけど、記憶に関してはずっと鮮やかに保存できるんだろうなぁ。
もしメンバーでタイムカプセルを埋めるとしたら、中に何を入れますか?
佐藤 僕らは普段学ランで活動しているんですけど、彼(松岡)が「最後の白学ランは持って帰る」と言うんですよ。
松岡 今まで、BOYS AND MENを卒業された方や解散した祭nine.の学ランの行方が気になっていました。僕らが解散した時に全部の学ランを持って帰るのは数が多いから大変ですし、「こんな先輩がいたんだよ」って歴史として事務所に置いておきたい気持ちもあるので、白学ランだけは持ち帰らせてもらってリビングに飾ろうかと。
佐藤 それは部屋干しと何が違うの(笑)?
松岡 カーテンのサイズが足りなかった時に下に追加したりね。
米谷 代わりになるものが他にあるでしょ。
松岡 タイムカプセルに埋めるとしたら何がいいんだろう? ロン毛だった時の米ちゃんの髪の毛とか?
米谷 どこにあるんだよ。確かに「こんな時代もあったんだよ」って戒めにはなるかもしれないなあ。
松岡 髪の毛を土に返したら光合成で成長するんじゃない!?
米谷 生えねえよ(笑)
佐藤 僕たちが助けられたものがいいよね。チェキのカメラとか?
松岡 凧とか自転車とか?
米谷 メジャーデビュー前にみんなで自転車で神社巡りしたね。
佐藤 シェルターみたいな大きいタイムカプセルが必要だね。
米谷 不法投棄と間違われないようにしないと。
松岡 でもやっぱり衣装かな。それぞれの衣装を名古屋の白川公園とかいろんな公園に埋めて、この学ランは〇〇公園、あの学ランは△△公園にあるって面白いよね!
佐藤 宝探しじゃないんだからさ(笑)
《10年後の今日は何してるかな》という歌詞がありますが、皆さんにとって10年前の今日(2014年12月)は中学生や高校生だったと思います。もしその頃の自分に会えるとしたらなんと声をかけますか?
松岡 10年前は14歳で、事務所のオーディションを受けた時なので、「そのオーディション、全員歌の審査があるよ」と伝えたいですね。歌とダンスの審査があったんですけど、なぜか僕は、歌は自由参加で歌いたい人だけが歌うと思っていました。そしたら、オーディションで1つ前のグループがひとりずつ順番に音源をかけて歌の審査をしていました。これはまずいと思って、急いでオーディション会場と同じ建物のトイレに行って、 歌える曲を探してアカペラで歌ったんですよ。地獄みたいな時間でしたね(笑)
佐藤 音源がなかったからこそ覚えてもらえたかもしれないよ。僕の10年前は高校3年生で演劇や芸術系の大学の受験勉強をしていたんですけど、募集要項を読み間違えて、演劇のコースなのに鉛筆デッサンが必要だと思っていました。
松岡 だいたい分かるけどね。
米谷 管理不足や(笑)
佐藤 僕が行きたいのは演劇のコースだけど、芸術の大学だから“鉛筆のデッサンも絶対必要なんだ(涙)”と思ったんだよね。だから、「『はじめてのデッサン』という本を買うけど、それはいらないよ。今から2ヶ月間もデッサンの勉強しなくていいよ。発声だけ頑張ってください」と伝えたいです。
米谷 僕は10年前、2014年11月のオーディションで入所しているので、その時の自分に声をかけるとしたら「そんな真面目にレッスンに行かなくて大丈夫」と言いたいです。その頃のレッスンでは、研究生として先に入ってた子たちが一生懸命教えてくれて良い意味でも悪い意味でも厳しく接してくれて、ついていくことに必死だったけど、「あいつら大したことねえから、もっと気抜いて頑張れよ」と伝えたいですね。
松岡 (爆笑)
佐藤 同い年ぐらいの人が同い年ぐらいの人に注意したら、そりゃ難しいよな。
米谷 当時は学校行事よりもレッスンに行っていたけど、学業をもっと優先してもよかったかもしれない。「いろんな選択肢があるんだよ」と知って欲しいですね。
▶特集テーマ「高校生の制服話、聞かせて!」