株式会社ナイアンティック(Niantic,Inc.日本法人)
村井説人社長
9月にリリースされた「Monster Hunter Now」も大好評!
「Pokémon GO」など話題の位置情報ゲームを開発するナイアンティックの村井社長にお話を伺いました!
まずはどんな会社か教えてください!
みんなが冒険し、
つながりを生み出す技術を開発
ナイアンティックには“冒険をして欲しい”という想いがあって、みんなに屋外に出て冒険してもらい、その先で出会ったものや人と交流を深めてもらえるように、まず、位置情報ゲームを作りました。その一つが「Pokémon GO」であり、「Ingress」、「Peridot」、9月にリリースした「Monster Hunter Now」といったサービスです。ゲーム性を使ってみんなに動き出してもらい、これまで気付かなかった家の周りのことなどに気付いてもらえるような地図を作っています。そしてこれらの技術の開発を通して、僕たちは未来のインターネットを作りたいと考えています。
未来のインターネットって何ですか?
現実世界とデジタルの世界が
もっと重なり合っていく未来
僕たちが考える未来のインターネットは、毎日の生活をより便利で楽しくしてくれるものです。例えば、ARグラスという拡張現実のメガネを着けると、自動的に目の前にいる人の名前や情報、「どこの高校で何年生か」といったことが目元に映し出されたり。まさに「Pokémon GO」は、肉眼で見たら何もいないのにアプリを立ち上げると本当にそこにポケモンがいるように見える、現実とデジタルの世界を融合させた、拡張現実の機能なんです。今はそうした未来に向かい、世界中に向けてチャレンジしているところです。
Google社で働いておられた頃から、Google EarthやPokémon GOの生みの親であるジョン・ハンケさんと長年一緒にお仕事されていますが、プレッシャーはなかったですか?
正直に言うと、そういった点でプレッシャーを感じたことは一度もありません。例えば大勢の前で講演をするといったことにはプレッシャーを感じて、緊張もします。それは何歳になろうと同じ。でもGoogle時代、僕にとって良い経験だったと思うのは、Googleがサイコロジカル・セーフティ(心理的安全性)をとても大切にしていた会社だったことです。僕にも「Setsuto(説人)!」とみんなが話しかけてくれて、コミュニケーションしやすい環境を作ってくれていました。だから僕も仕事にプレッシャーを感じることなく、生意気にもいろいろなことを言って一緒に作っていくことができました。
村井社長は、ご自身でどんな力が長けていると思われますか?
誰もが「不可能」と思うことを
「可能」に変えていく力
英語ではsuperpowerと言うんですが、僕のsuperpower(得意なこと)は、“不可能を可能にすること”です。100人が全員「不可能」と思っている時に、もし僕が「それできるよ」と実現したら、唯一無二のことを達成したことになりますよね。みんなが「できる」と思っていることをやっても唯一無二にはなれない。だから僕はあえて障害がある不可能なことを探して、チャレンジしていきたいと思っています。一人で無理ならチームを作って可能にすることを考えます。おそらくそれをやってきたから、今のところ会社の中で僕はも評価してもらえているんだろうなと思っています。
村井社長はどんな高校生でしたか?
スポーツに没頭
友だちと過ごす時間が好きだった
高校生の時はすごく普通だったように思います。みんなのど真ん中にいて何かできるような人ではなかったかな。スポーツが好きで、学校では部活(ハンドボール部)、冬は個人で競技スキーに力を入れていました。友だちと一緒にいる時間が好きで、朝から晩まで仲間と一緒にワイワイしているのが好きでした。一人になると寂しくて、誰かを探しに行っていたくらい(笑)
スポーツ男子、モテましたか?
モテませんでした! スポーツは成功するためにガチでやっていたので、あまり見た目とかは気にしてなかったです…(笑)
進路はどのように決められましたか?
大学は経済学部へ進学
もっと海外を知りたいと思っていた
僕はすごく動物が好きで、獣医師になりたいという夢もありました。そのために勉強もしていたのですが、高校に入った頃からお金や経済にも興味を持ち始めて。それで自分の中で天秤にかけた時に、経済を大きく回すことで世界に通じることが何かできるんじゃないかなと考えるようになり、大学は経済学部に進みました。その頃から海外志向が強かったかなと思います。当時はインターネットがなかったので、海外の情報を集めるために本屋さんに行ってニューズウィークという雑誌の英語版を買って読んだり、FEN(現AFN)というアメリカ軍のラジオを聴いたり。海外の音楽もよく聴いていて、もっと海外のカルチャーに触れたい、いつか日本以外のところに住みたいと思っていました。皆さんももし機会があれば留学をしてみるといい勉強になると思います。
新作「Monster Hunter Now」について、教えてください!
キーワードは「一狩りいこうぜ」
友だちみんなで戦って欲しい
世界中の人たちが狩りをするために積極的に外に出て、楽しく遊べるようなプロダクトになるといいなと思っています。ナイアンティックが対象としたいユーザーは、世界中の70億人です。「Pokémon GO」では10億ダウンロードを達成してギネス世界記録にも認定されましたが、僕らからするとまだまだ、60億人がいると思っています。だから目的は同じでもいろいろなタイプのゲームを作ることで、また違う人たちが一歩でも外に出て探検して、新しいことに気付いてもらえることを期待しています。
村井社長が今高校生であれば、どんな風に遊びますか?
「Monster Hunter Now」には“ペイントボール”という機能があって、例えば朝家から学校まで歩いている途中で出会ったモンスターに投げることができるんです。マーキングされたモンスターはリストに入り、その場で戦わなくても学校でお昼休みに友だちと一緒に狩りをすることができます。高校生の皆さんそれぞれが集めてきた強いモンスターを出し合って、みんなで戦ってもらいたいですね。
社長も学生時代、ゲームはされていましたか?
僕は学生の頃、自分ではゲームを持っていなかったんです。でもスポーツに没頭してきたので、スポーツの持つゲーム性の部分…勝ち負けがあって、戦略性があって、そこに悔しさや友情があったりする体験が、今のサービスにつながってきているかなと思います。
相手を尊重すること
ナイアンティックでは多様性をとても大切にしています。本社はアメリカ、オフィスは世界各地に散らばり、国も人種も言語も違う人たちが集まっていますから、もう、“違い”しかないんです。共通なのは人間である、というだけ。だから、それぞれの個性やカルチャー、性的指向を尊重し、みんながありのままでいられる会社が作れたら、違いを超えたコミュニケーションが取れると思っています。
逃げないこと
どれだけ大人になっても、逃げたいことはたくさんあります。今日のミーティングはプレッシャーがあるから出たくないなとか、むしろ逃げたいことばかり(笑)。でも逃げるって簡単だけど、逃げることから得るものって自分のフリーな時間くらいだと思うんです。逃げずに正面から向き合って成功に向けて全力を注ぎ込んでいくと、何かを得ることができます。失敗したっていいんです。
チームプレー
仕事をする上でチームプレーは重要。人間って必ず自分が認められたいというエゴが出そうになるけど、会社はやっぱりチームです。チームでしか達成できないことがたくさんあります。そのためには一人ひとりにチームワークを大切にして欲しいと思っています。
村井社長
高校生へメッセージ
僕は楽観主義で、基本的には何か失敗しても、「大丈夫、何とかなる」と考えます。高校生は特に、自分について考える時期だと思います。その時に、誰かと比較をしますよね。すると相手より自分が弱いということばかりが気になってしまいます。生まれ育った環境、能力、容姿、すべてにおいて比べてしまって、自分が弱いところで悲観的になる。そんな自分を助けるために、自分より弱い人を見つけて、自分が勝っていると喜んでしまう。それは負のスパイラルで、一番良くないことだと思っています。自分は自分。自分のオリジナリティを大切にして、「未来は絶対に明るい」という気持ちがあれば、周りには前向きな人たちが集まり、みんなで前に進めると思います。思い続ければ、そういう考え方が身についていきます。自分は唯一の大切な存在なので、必ずそれを信じてください。
取材を終えて
オフィスの入り口から溢れるワクワク感。
オフィスに続くエントランスとして突如現れる、秘密基地のような船の中の空間。社名の由来にもなった“Niantic号”は、かつてサンフランシスコにゴールドラッシュが起き、金鉱を求めて“一発当てるぞ!”と勢い込む人たちを運んだ船。やがて船の役割を終えると、ホテルとして使われ、人々が交流する場所となったそうです。
「ここは日本列島全体を船に見立てていて、6つある窓からはそれぞれ日本の北・真ん中・南の位置から見て左右に広がる海の景色を映し出しています。アメリカからオフィスを訪れる人も多いので、皆さんに日本を感じてもらえるといいなと思って作りました」と村井社長。
オフィスにはたくさんのレインボーフラッグも飾られています。アメリカ本社とのオンライン会議も多いナイアンティックでは、オンライン画面の自身の名前のところに、呼んで欲しいジェンダー(she/her・he/his・they/them)を表記するのだそうです。
るりか(高3)
オフィスの入口からクリエイティブで夢のような世界が広がっていました! 最後の高校生へのメッセージで話してくださった、楽観的に物事を捉えること、自分は自分、ありのままでいいという考えが素敵で、他人と比べて自分に自信がなくなることが多い私にはすごく胸に染みました。
そううん(高2)
オフィスの中からもうアイデアが溢れ出していてすごかったです! ナイアンティックの名前の由来の話からどんどん村井社長の話に引き込まれていきました。「不可能を可能にする」という自信が、話していても感じることができ、自分も社長の考え方をまねしたいなと思いました! 今学校でも「モンハンNow」流行ってます!
はる(高1)
初めての取材だったのですが、村井社長の高校時代や仕事に対する考え方などを対面で聞くことができ、とても良い経験になりました。中でもジョン・ハンケさんとの仕事にまったくプレッシャーはなかったとおっしゃっていたのが印象的で、皆さん「人と人」として向き合って仕事されているんだなと驚きました。