芸能事務所「TopCoat」が、現役マネージャーたちによるご自身の半生とマネージャーのお仕事について語る「芸能マネージャーが自分の反省をつぶやいてみたら」を発売。
本の中にも登場する、現役マネージャーの方々にお話を聞いてきました!
「この業界は常に人材を探していると思います。大変な仕事ですが、業界もTopCoatも、今は働く環境をより良く変えるために動き出しています。まずは皆さんにマネージャーという仕事を知って欲しくて、この本を作りました」とチーフマネージャーのYさん。
本の中には、菅田将暉さんや萩原利久さんなど所属アーティストがマネージャーについて語るインタビューも。
お話を伺ったのはこちらの4人。
Y(男性・40代)チーフマネージャー
マネージャー歴10年目
Y(女性・30代)現場マネージャー
マネージャー歴12年目(その前に付き人経験3年)
G(女性・20代)現場マネージャー
マネージャー歴8年目
F(女性・20代)現場マネージャー
マネージャー歴8年目
実際はどんな仕事をしているの?
マネージャーさんって、タレントさんと常に一緒に動かれていて、ほとんど休みがなくて走り回っておられるイメージです。電話片手にスケジュール帳を開いてるような…(笑)
F 私は現場マネージャーをしていて、スケジュール管理はチーフマネージャーがしているので、主に現場で本人のケアをしています。取材があれば原稿や写真のチェックなども行なったりします。若手アーティストの場合は、営業からスケジュール管理まですべてを行います。最近は働き方改革で、お休みも取れるようになりました。
以前はお休みもなく…だったんですか?
F 以前勤めていた会社では、一人のアーティストに一人のマネージャーという形だったので、アーティストに3ヶ月休みがなければ自分自身も休みがないという時もありました。
担当している方が売れるとマネージャーさんも忙しくなるんですね。
Y 今は働き方改革関連法も施行され、芸能事務所のような中小企業でも働き方が見直されて、TopCoatでもルールを守って働きましょうということになっています。だから現場はお休みをとりながら数人で交代しながら対応しています。
実際マネージャーさんになって、お仕事のイメージは変わりましたか?
Y 僕は31歳でマネージャーになって、前職でも事務所のマネージャーさんと接することは多かったので、それほどイメージの違いはありませんでした。ただ、何か仕事のコツみたいなのがあるのかなと思っていたら、“あ、結局みんなそれぞれの努力でやっていて、マニュアルにできるようなものはないんだな” というのは、入ってからの発見でした。
F 私は音楽系の専門学校のマネージャーコース出身で、マネージャー経験のある講師の方からお仕事の話は聞いていたので、大きなギャップはなかったかもしれません。でも細かい作業がこんなに大量にあるということは、実際に始めてわかったことでした(笑)
Y 調べ物や準備など細かい事務的な作業が意外と多いんです。業界自体は華やかですが、華やかな舞台に立つ人たちですら、見えないところですごい努力しているので、我々も縁の下の力持ちとして、彼らがより良いパフォーマンスを発揮できるよう、できることを一生懸命やっている感じですね。
G セリフを覚えるのだって地道な作業ですよね。芸能人の方も家でコツコツと、地道な努力を積み重ねて表に出ているわけだから。私も芸能界はキラキラした世界を想像していたので、その点は入って驚いたところでした。
割合はどれくらい?
そんなお仕事で、「大変」と思う気持ちと「やりがい」に感じる気持ち、どちらが勝ってますか?
Y 「やりがい」の方が勝っているからこそ、きっとみんな続けているんだと思うんです。ただ時間的なパーセンテージにすると、「やりがい」の時間は10%くらい(笑)。でもその喜びの強さが、残りの9割をひっくり返すんでしょうね。作品が決まって担当アーティストが喜んでいる姿を見ると、ここまでの道のりが繋がって良かったなと嬉しいですし、映画のエンドロールでアーティストの名前が出て涙が出たりもします。
(マネージャーさん全員が大きく頷く)
G 大変な時期ってずっとは続かないですからね。でも仕事を決めなきゃというプレッシャーは常にあって、特に今は若手を担当しているので、「仕事が決まりますように」と願って毎日家を出ています。
Y あ、でも現場で出るお弁当は豪華だよね? どんなに過酷な現場でもせめて美味しいものを、と考えてくださる制作の方々がいてくださるのは僕たちも嬉しいですね。
Y ロケや長期間で撮影していると、ごはんの選択肢が限られていたり、スケジュールありきの時間帯だったりもするので、そうしたお弁当や差し入れがみんなの心を潤してくれています。
マネージャーさん同士って仲良いんですか? それともライバルなんですか?
G 撮影中は1クール3ヶ月間ずっと現場が一緒なので、他のマネージャーさんともよく話します。だからマネージャー同士が仲良くなる機会は多くて、その後もごはんに行ったりしますよ。
F 私たちの仕事の場合、ドラマや映画の撮影だと前日ギリギリまで次の日の予定がわからない時も多いので、業界外の友だちとは休みのスケジュールが合わなくて。だから必然的に友だち=芸能マネージャーになってくるんだと思います。
Y 僕はいろんな事務所のマネージャーさんたちと「登山に行く会」を作っています。まずは富士山に登ろうと決めて、この8年、一度も実現していないんですけど(笑)。月に一回、焼肉に行ったり、別に仕事の話をするわけでもなく、いろんな人と繋がりを持てる場にしています。
芸能マネージャーさんに5つの質問
マネージャーの仕事をしたいと思ったのはいつ頃ですか?
Y 30歳の時、舞台のプロデューサーをしていて、舞台のキャスティングでTopCoatの事務所を訪れて中村倫也の出演をお願いしたんですが、その時のマネージャーから、公演が終わった後「マネージャーやらない?」と誘われたことがきっかけでした。
Y 仕事に興味を持ったのは19歳か20歳の頃。実際は全然違うことを勉強する大学に行っていて、卒業後はその資格を活かしたところに就職したんですが、やっぱりマネージャーという仕事に興味がずっとあって、という感じです。
G 私は19歳か20歳の頃です。ずっとダンスをしていて、ダンスの専門学校に通っていたんですが、違う学科の友だちが芸能人のマネージャーになったと聞いて、興味を持ちました。
F 私は元々テレビっ子で、漠然と芸能界で働きたいとは思っていたのですが、中学生の時に芸能マネージャーに密着したテレビ番組を見た時に強く思いました。
“自分に向いていないかも”と不安になったことはありますか?
Y きっとほとんどの人が、“自分には向いてない” と思うことの連続でやっているのかなと思います。アーティスト一人ひとり答えは違うから、前に担当したアーティストでは正解でも、今回は違うということもたくさんあります。だから「向いてない」と思いながらもぶつかっていける人が向いている仕事なんだと思います。
Y 私は要領があまりよくなくて、2つのことが同時にできないので、電話で聞いた日程を間違えて書き記していたり、メモしたメモがどこにあるかわからなくなったりすることがよくありました。何度かヒヤッとした経験もありますが、そんな失敗をしながら、改善策を模索しながらなんとかやっています(笑)
G 失敗をするたびに今でも思います。車の運転をすることが多かったので、四方の壁にぶつけてますし(笑)。細かい失敗をするたびに“向いてないな”と悲観的になるんですが、引きずらないタイプなので続けられているのかなと思います。
F マネージャーを始めた頃は、睡眠時間が2、3時間しかない時が多々あり、“無理だ!”と思ったことはあります。
仕事の壁はどうやって乗り越えていますか?
Y この10年、会社の先輩や社外の方々に相談して助けていただきながら乗り越えています。皆さんいろんな経験をしてこられているから、大変な時の気持ちがわかるんだと思います。
Y 私の場合はパソコンの内側など必ず自分の目につくところに付箋を貼るようにしたり、ToDoリストを順番に消していくようにしたりですね。あとは失敗してしまったことは自分が苦手なことなのだと素直に認めて、同じ失敗をしないように気持ちを切り替えます!
G 「先輩に相談する」と、「同期に愚痴を言う」です(笑)。目上の方に相談する時は解決法を求めて、同期には同情を求めて…いずれにしても人に話すことで乗り越えているかなと思います。
F 私は以前、仕事の分量が自分のキャパを超えてしまい、パンクしちゃったことがあるんです。その時に先輩に相談したら、「ToDoリストを作って日々こなしていけば、徐々に自分のキャパが広がっていくよ」と言われて、ToDoリストをつけるようになりました。先輩方のアドバイスのおかげで、今はどうにかやってます(笑)
マネージャーに必要なのはどんな力?
Y 「聞く力」。アーティストの話を聞くのもそうですし、オファーをくれた方の話を聞く時も、何を求められているのかといった部分を汲み取る必要があるので、聞く力がある人はいろんなことに応用ができると思います。
Y 「観察力」。もちろん話さないと伝わらないこともありますが、アーティストの様子から何となく今日は元気がないなとかちょっとした変化に気付けると、声かけやケアの仕方も変わってくると思います。もちろん全部私が思った通りかどうかはわからないですが。
G 「臨機応変に対応できる力」。昨日の正解が今日の間違いだったということって本当によくあるんです。毎回対応する相手が違うから、マニュアルのようにはできなくて。だから柔軟な考えで、臨機応変に対応することの必要性はいつも感じています。
F 「コミュニケーション能力」。やっぱり対人のお仕事なので、アーティストに対しても社外の方に対しても、コミュニケーションが取れることが大事だと思います。
自分のどんなところがマネージャーに向いていると思われますか?
Y 「どこでも3秒で寝られるところ」「安定思考じゃないところ」
お仕事の現場は3ヶ月か4ヶ月ごとに必ず変わるので、常に新鮮で楽しいです。
Y 「打たれ強いところ」 「車の運転が好きなこと」 「旅が好きなこと」
いろんなところに行けるのはラッキーだなと思っています(笑)
G 「大雑把で適当なところ」
神経質すぎると大変な時もあるので、大雑把くらいの方が時には嫌なことがあっても引きずらなくていいかもしれないですね。
F 「寝たら忘れる」(笑)
失敗して気持ちが落ちたままだと負の連鎖を呼んでしまうので、寝たら忘れる性格は良かったかなと思います。もちろん覚えておかないといけないこともありますが(笑)
マネージャーを目指す高校生にメッセージをお願いします!
Y “好き” を追求していただくことがいいと思います。勉強でも部活でもバイトでも、今夢中になっているものに一生懸命になっていれば、将来マネージャーとしてアーティストと向き合った時に、アーティストが目の前のパフォーマンスに懸命に向き合う姿に尊敬と共感ができるはずです。だから好きなことをとことん後悔のないようにやってください。
Y エンタメなど一つのことに限らず、広く目を向けて、何でも興味のあることを手当たり次第やってみるのもいいと思います。本の中にもありますが、マネージャーは異業種から入っている人も多くて、どんな人生経験もマネージャーの仕事に役立つと思います。
G “遊ぶこと” も大事だと思います。恋愛もそうだし、遊びから学ぶことってたくさんある気がします。それがコミュニケーション能力につながるのかもしれないし。人生の勉強ですね!
F 何がきっかけになるかわからないですよね。「好き」から仕事につながることもありますから!
「 “旅” の話をさせてください。」
旅慣れしているマネージャーさんの「お荷物エピソード」を教えてください!
Y 僕は、お土産は絶対に買いたいので、キャリーには必ずお土産を詰められる余白を空けておきます!
Y 自分の荷物はできるだけ減らしたいと思っています。預け荷物は、時々マネージャーの自分が預けてアーティストがキャリーで来ないパターンがあって、そうするとアーティストを待たせてしまうことになるので、どちらの場合でも対応できるように、できるだけ機内持ち込みのできる必要最低限のものだけ持って行くようにしています。足りないものは現地で調達もできますし。コンパクトにしたい時は圧縮袋が重宝します。長期間の滞在だと100均の洗濯バサミも役立ちます。
G 私はだいたい髪型を後ろにピシッとひとつにまとめているので、使い慣れているヘアオイルは必ず持って行きます。
F 持ち物で言うと、先日とあるドラマの撮影でモンゴルへ3度ほど行っていたんですが、レトルトの味噌汁は、あれば安心材料になるなと思いました。
お忙しい中、ありがとうございました!