小林私に高校生のSNSとの付き合い方を訊く!「SNSへの感覚は大事にしておくべき」

1999年生まれ、東京都あきる野市出身のシンガーソングライター、小林私さん。
キングレコードが設立した次世代アーティストの発掘と育成を主眼に置いた新レーベルHEROIC LINEからメジャー第1弾となるアルバム『象形に裁つ』を6月28日リリースし、この夏は東京・大阪でのワンマンライブを控えている。小林さんに、今回は新作とツアーについて、そして高校生が抱えるSNSにまつわる悩みついて独自の視点でお答えいただきました。

ニューアルバム『象形に裁つ』
ワンマンライブ「分割・裁断・隔別する所作」

7月に大阪、8月に東京でワンマンライブ「分割・裁断・隔別する所作」が開催されますね。

小林 東京の2公演はゲストで友だちのバンドを1バンドずつ呼ぶんですけど (8月5日公演:歴史は踊る、8月27日公演:レトロリロン) 、大阪はガチワンマンで何をしてもいいらしいので、なんか壊して帰ろうかなと思っています(笑)

「壊す」というのは、ステージにある物をですか?!

小林 それだと怒られちゃうので、壊していいもの、壊していい人を壊していこうかなと (笑)

ワンマンライブタイトル「分割・裁断・隔別する所作」はどのようにして付けられましたか?

小林 僕がハマっている言葉を並べただけみたいなところはあります。

メジャー移籍後初となる3枚目のアルバム『象形に裁つ』が6月28日にリリースされました。今回のアルバムのジャケット写真のパンは小林さん自身が焼かれたものだとか…。

小林 そうですね。僕の日曜日が丸々つぶれたパンですね。

1日かけて作られたそのパンとアルバムタイトル『象形に裁つ』との関係や意味があれば教えていただきたいです。

小林 嘘のやつで言うと (笑)、小学校の体育の授業のソフトボールのボールがそのパンで、ソフトボールのコーチの口癖が「象形に裁つ」だったので思い出の言葉ですね。

本当の方は?

小林 「象形に裁つ」という形あるものから何かを取り出すという作業は制作にも言えるし、パンや粘土のような不定形なものが、ビジュアルとしてあったら面白いかなと…本当の話ほど面白くないという (笑)

小林さんの楽曲を聴かせていただいて、口に出して歌詞を読むと言葉のリズムが心地いいなと感じました。作詞をする上で大切にしていることはありますか?

小林 嘘のやつは、子どもの笑顔が見たくて (音楽を) やっているんで。

子どもの笑顔を意識された割に、難しい言葉が多いと感じたのですが。

小林 「アンパンマン! 負けるな! 頑張れ!」みたいなことを言っていませんでしたか?(笑)

全く!(笑)。難しい言葉は辞書を引きながら聴かせていただいたんですけど、小林さんはどのようにして言葉を生み出しているのですか?

小林 読んでいた本や、辞書を引いたり、人が話していたこと、文字情報、言葉情報だったりと全て影響されていると思います。最近は「歳時記」を買いました。季語が載っている俳句版の辞書みたいなやつなんですけど、「ラグビー」って冬の季語なんだぁって知りました。

小林さんの曲の中で、私たち高校生に特に聴いて欲しい曲はありますか?

小林 KANA-BOONの『ないものねだり』ですね。

小林さんご自身の曲でお願いします (笑)

小林 今、高校生の間で何が流行っていますか?

『ないものねだり』も聴いています。

小林 あの曲は軽音楽部のクラシックなんだ。すごいな。僕が高校生ぐらいの時にみんなこぞってカバーしていました。

小林さんご自身もカバーされましたか?

小林 他のバンドと絶対に被ってしまう曲を同じライブでやっても仕方がないので、譲り合いでやっていましたね。高校生に聴いて欲しい曲は『アニメ漫画研究部の姫は俺のことが好きなんじゃないか』かな。この曲を胸に大学とかに通っていただけるといいんじゃないでしょうか。

高校生が小林私さんに
SNSにまつわるお悩み相談

ここからは私たち高校生が日頃悩んでいることを小林さんにご相談できたらなと思います。

小林 一番得意です!

小林さんは、TwitterやInstagramなど、公式でSNSを使われていますが、そこに寄せられるコメントは音楽の創作活動にどのように影響していますか?

小林 これはガチで何の役にも立ちません! DMとかリプライとかで、全員タメ口で「やい、小林」って言ってきますから (笑)

そのコメントの中で、面白いと思う言葉はありましたか?

小林 たまに歌詞とか送られてくることもありますけど、どうなんでしょうね。うちのリスナーはよく言えばシャイ、悪く言えば根暗なんで、DMとかも無言だし、Twitterで「この漫画いいぞ」みたいな感じで、無言でURLを延々と送ってくれる人がだいたい15人ぐらいいますね。

内容は確認されるのですか?

小林 全部見ています。おっきいインターネットの中のちっちゃい集合知みたいな感じで役に立っていますね。

SNSへの投稿で、プライベートとオフィシャルの線引きは意識されていますか?

小林 全然していないです。例えば「〇〇の番組に出させていただき、ありがとうございました」みたいな風に固く言いすぎると、読んでいる側も義務でやってんのかなと感じると思うので、楽しかった時とかは番組名とかも書かずに「めっちゃ面白かったです」みたいな感じで書いた方がいいのかなと思ってやってはいます。だから、高校生ぐらいだとインターネットやめた方がいいですね。

ただ、SNSは便利なので手放すわけにはいかなくて。でも、校内で知らない子から名前を呼ばれたことがあって、SNSから名前を知られていることが少し怖いと思った経験があります。

小林 それが正しいですよ。この感覚を大事にしないとおかしくなりますからね。僕はおかしくなりましたね。人生の大きなミスです。

小林さんはSNSを始めた当初からオープンな感じでしたか?

小林 最初に始めた頃はROM専 (ネット掲示板やSNSなどで、書き込みをせず読んでいるだけの人」という意味のネット用語) でしたけど、中学ぐらいの時は自分で考えたキャラクターの設定でチャットし合うオタクのコミュニティにずっといました。ネットでめっちゃ人と喋るみたいな。その時期はハンドルネームを使っていましたし、自分を出してなかったですけど。そこから楽器を持ち始めて、僕もTwitterに弾き語りをあげちゃおうみたいな、大きな判断ミスをして、ここまで来てしまった感じですね。

SNSで仲の良い友だちが複数人で遊びに行っている投稿を見て、私は誘われていなくてショックに思うことがあります。SNSをしていると見たくないものを見てしまうことは避けられないとは思うのですが、小林さんはそのような経験はありますか?

小林 僕は中学校ぐらいの時にインターネットをし始めて、良くないサイトを全部見たんで、瑣末な問題なんです。だから今はもう何を見てもそんなに驚かない感はあります。例えばネットに悪口が書き込まれていたとしても、自分に言及されていること自体がそもそもめちゃくちゃ嬉しいというか。「お前、この間の飲み会でめちゃくちゃ悪口言われてたぞ」と言われたとしても、「ガチ!? 俺の話してくれてた?」 と思っちゃうんですよ。悪口を言われてヘコみますけど、自分の話をしてくれていたポイントがめちゃくちゃ加点されるんで、僕の中ではプラマイゼロぐらいになるんです。

昔からそういう風に思われていたんですか?

小林 そうですね。あんまり自己肯定感は高いタイプではないから、誰かになんか言われているのは嬉しいなと思うので。高校の時、僕以外のクラスの男子みんながテーマパークに行っていたという経験がありますね。

どういうお気持ちでしたか?

小林 やってんな~、かな (笑)。確かその日は誘われていたんですけど、別の友だちとの先約があったので行けなくて。そしたらその友だちにドタキャンされたので、じゃあ人生初の猫カフェに行くしかない! と思ってひとりで行った記憶がありますね。猫に人見知りして何も触らず帰りました。

悪口に対してストレスを感じないタイプですか?

小林 悪口の内容によりますよね。芯を食っていたら嬉しいですけど、浅い悪口の方がムカつくし、ストレスになるかもしれないです。俺、それ釈明できると思っちゃうから。

そういったストレスを小林さんはどのようにして解消していますか?

小林 身体や心でイライラすることがあまりないんで。パソコンでひらがなを入力したいのにローマ字になっちゃう時あるじゃないですか。あれが、何回やってもローマ字ばっかになった時は、もう血管切れるぐらいムカつきましたけどね (笑)

身体や心でイライラすることがないのはなぜですか?

小林 人に対してあまりムカつくことがないんですよね。AIじゃないし、人だからしょうがないなって思うんです。他人への期待値が低いから、何とも思わないのかもしれないですね。人生って自分の思うようには何も上手くいかないですからね。

“人は人” という風にご自身の中で確立されているんですね。

小林 そうですね。たぶん遅刻されても4、5時間ぐらいまでなら何も思わないです。6時間超えるとさすがに連絡してよ、と思いますけど。連絡なしなら2時間ぐらいは全然待てますね。というか待ったことありますけど (笑)。高校の時、友だちの最寄り駅で待ち合わせしていて集合時間に着いて電話したら、「今から向かうわ」って言われてから2時間… (笑)。他人への期待値が低いから、何とも思わないのかもしれないですね。人生って自分の思うようには何も上手くいかないですからね。

小林さん、お友だちを大事にされているんですね。

小林 僕はめっちゃ友だちを大事にしていますね。友だちの中で一番いいやつは僕ですね(笑)

今回のライブのゲストである、歴史は踊るさんやレトロリロンさんもお友だちとしての繋がりがあると思うのですが、そういった繋がりはどのようにして作ったり保ったりしていますか?

小林 人を誘うのがあまり得意じゃないので、どうしても気乗りしないタイミングは行かないですけど誘われたらなるべく行くようにはしています。自分が人に怒ることがないので、怒らない人とばかり会う感じにはなりますね。わかりやすいポイントですけど。結局どんどん遅刻に対してなんでも良くなってきて、自分も遅刻し始めるんですよね。良くない友だち付き合いだな(笑)

今月の特集テーマ
「文化祭」

今月の特集テーマ「文化祭」に関する質問をさせていただきます。

小林 任せてください。一番詳しいので。

高校生の時の文化祭の思い出はありますか?

小林 高1の時は覚えていなくて、高2の時はお化け屋敷をやった気がします。僕、部活が忙しかったので何も参加してなかったですけどね。

部活動として文化祭のステージに出られることはなかったですか?

小林 高2の時は軽音部と演劇部を兼部していて、軽音部と演劇部の公演の時間がほぼ被っていたから、軽音部のライブをトッパー (トップバッター) にやって、終わった瞬間すぐ演劇部の公演に出ていました。

演劇部ではどんな役をされましたか?

小林 顧問が書いた夢の中で探偵みたいな内容の脚本で、あんまり面白くなかった  (笑)。顧問が変わっていて、とにかくアドリブを入れまくれみたいなタイプで、夢の中で閉じ込められて「出してください」という練習をしていたら、「小林、そこでおしっこを漏らす宣言しろ!」と言われて、「出してください。早く漏れてしまいます」みたいなセリフを言ったら半端じゃないぐらいウケました。

そこで、身に付いた力はありますか?

小林 かけらもないです。1個もないです (笑)

読者プレゼント

小林私kobayashiwatashi

MUSIC INFO

new album
『象形に裁つ』
¥3,300(tax in)
※now on sale

〈小林私 東阪ワンマンライブ『分割・裁断・隔別する所作』〉
7/15(土) 大阪・GORILLA HALL OSAKA
8/ 5(土) 東京・I’M A SHOW
ゲスト:歴史は踊る
8/27(日) 東京・I’M A SHOW
ゲスト:レトロリロン