ドラマ「先生を消す方程式。」、TVアニメ「約束のネバーランド」Season2のオープニング主題歌などを含む2nd アルバム『FIZZY POP SYNDROME』を3月3日にリリースした秋山黄色さんにお話を伺いました。高校生の痛みや苦しみに寄り添い、光を照らしてくれる秋山さんの言葉一つひとつは心に突き刺さります!
何をするのも人の目を気にしてた
秋山さんは普段から顔出しをされていなくて謎のヴェールに包まれているイメージですが、秋山さんはどんな高校生でしたか?
秋山 学校に(生徒が)500人いたら400人はそうだろうなっていうごくフツ―の奴だった記憶があるなー。周りの子に当時の印象を聞いてもそういう答えが返ってくると思う。どっちかって言うと冴えなくて“そんな奴いたっけ?”って感じだったと思う(笑)
今はすごい印象が強いです。
秋山 それが助かってるというか…。当時の印象はみんなに記録されてないはずで、有名になっていってもあんまり問題が発生しないだろうからすごい便利(一同笑)
部活はされていましたか?
秋山 軽音部だったかな。軽音部って言ってもろくでもなかったから、実際に演奏したのは2回くらいだと思うけど。一応最後の最後にやった3年生卒業前のイベントと…いや1回だな(笑)。だいぶ黒歴史です。あれが一応初ライブってことになりますね。
ライブを観た人から何か感想はありましたか?
秋山 それが、なかったんだよなー。俺と後輩と現国の教師で校歌をデスメタルみたいにアレンジして歌ったのと、オアシスの一番有名な曲をカバーして。でも教師がデスメタルを演奏すると副校長とかがキレるから、馬のお面を被らせて、俺と後輩と馬の3人でやって。
馬の正体はバレなかったんですか?
秋山 最後までバレてないと思う。最後の曲は、ギターを弾けるっていう別の先生をリードギターに呼んで。それが直接関係あるかはわかんないけど、俺の卒業後にふたりが異動になったみたい。バレてたのかもしれない(一同笑)
ところで、『とうこうのはて』は秋山さんご自身の高校時代を歌っているのですか?
秋山 この曲を書いたのは大人になってからなんだけど、高校在学中って何もかもがデリケートで、天然パーマでめちゃくちゃ悩んだりもして。当時の前髪1㎝は今の俺の前髪1㎝とは価値が全く違っていて、何をするにしても人の目をめちゃくちゃ気にしてた。保健室に登校する友達も結構いて、学校ってみんな行かなくちゃいけないのに苦しすぎるって思うタイミングが多々あって、こんなに苦しいのに義務教育は小中9年間登校しなくちゃいけないし。「人生においては短い時間だし」って言われても、最中にいる高校3年間って永遠に感じるくらい苦痛だったりする。せめて登校くらいは楽にしたい、みんなが平等にもうちょっと笑っていられるべきだって考えがすごくあったから、自分のことを歌ってるけど、実際は社会というか学校に対して歌ってる曲なんです。
本格的に音楽の道に進もうと思ったのはいつ頃ですか?
秋山 実は音楽の道に進んだって記憶があんまりなくて、音楽の道しか残ってなかったってだけで。俺は想像し得ないくらい頭が悪かったから進学なんて絶対考えてなかったし、高校卒業したら直接手に職がつくように漠然と看護学校に進学しようと思ってた。だけど、バイトがマジで上手くいかなかったってことが重く現実としてあったので、卒業して急に進路を変えました。
卒業してからですか?
秋山 卒業して1日後とか。進路の相談を聞いてくれてた先生には黙って音楽の専門学校へ行こうって。選んだっていうよりはもうそれしかないって感じで。
親御さんは反対されなかったですか?
秋山 めちゃめちゃ反対したと思う。絶対できるわけないって。結構放任主義な親だったけど、「あなたの人生は勝手にしてもいいけど、私の経験上、何かあった時のための担保を持ちながら夢を描くのが現代におけるちゃんとした夢の追いかけ方だから国試を取っておけ」って。「成績オール1のそんな奴が資格取れるわけないよ!」って逆ギレしてなんとか突破して、最終的にはやりたいことやれば、ってなったからたぶん恵まれてる家だったんだなって感じですね。
周りと比べて不安や焦りはありましたか?
秋山 周りに取り残されているっていう感覚よりは、俺は今後どうやってお金を稼いでいくんだろうっていう不安があった。でも、それは人と比較してどうこうっていうことではなく周りの人間がいなくても感じてたと思う。
その不安はどう消化したんですか?
秋山 とにかく音楽をやるしかなくて。自分が持ってる技術で唯一お金になる可能性があるのが音楽だったから。これに没頭することが、ある種自分が仕事をしている感覚になれたのかもしれない。
ゲームを起動する時の気持ちと全く同じ
中学生の頃から音楽をされていたそうですが、当時から作詞作曲をされてたんですか?
秋山 作曲作詞はどっちも高1くらいから。中学の時は楽器をやってたくらい。めっちゃ下手な方(笑)
作詞はペンと紙を持って机に向かったんですか?
秋山 めっちゃロマンないけどパソコンでメモに書いてるみたいな感じだったかな。アーティストって意外に紙とペンじゃないと歌詞書けないって人もいるんだけど、全くそんなことない、俺。カタカタカタカタカタ…って(一同笑)
秋山さんは紙とペンで作詞をされるイメージがありました!
秋山 Wordだけは死ぬほど自信があったから生かしておかないとって(笑)
曲って楽しみながら作れるものですか?
秋山 たぶん人のことをビックリさせたいって感覚なんだと思う。人が笑ったり、急に俺がプロみたいな曲を歌い出したら面白いなっていう感覚。それってゲームを起動する時の気持ちと全く同じで一生変わらないし、まだ高校の頃と変わってないと思うな。遊び半分ってことです。
どんな曲ができるかわからないからワクワクする感じですか?
秋山 そうですね。そもそも録音って流行ってないだけで結構面白くて、1回やればわかるだろうなって思う。多重録音をした時の音色が絡む感じとか趣味としてもすごい面白いと俺は個人的に思ってるから。
ところで、好きなことは仕事にしない方がいいと言う人もいます。秋山さんはどう思われますか?
秋山 好きなことを仕事にしない方がいいっていうのはすごいよくわかる。仕事になってお金が発生した瞬間に好きだった気持ちって変わっちゃうんだろうなっていうのがあって。でも、俺は音楽以外に稼げるわけはないから、極端な話死んじゃうから好きでいるためにどうすればいいかを考えながらやんなくちゃいけない。意識的に楽しくないなと思う日は絶対に手をつけないって決めてるし、面白い曲を作れそうって思った時だけやるようにしてる。今もずっとそう。
それが作詞作曲のこだわりですか?
秋山 そうですね。それはある種外せない。
自分の感性を潰さないで欲しい
アルバム『FIZZY POP SYNDROME』にはドラマや映画の主題歌が収録されています。主題歌を作って得たものはありましたか?
秋山 今まで俺がNOというものはNOを出せてたし、これは最高にカッコいいって思うものはそのまま出せてたけど、ドラマの主題歌は俺ひとりの創作じゃないから。例えばドラマに出てくる登場人物であったりとか、社会的な問題があるから歌詞はこう配慮した方がいいとか、自分の作品にある程度のメスが入ったり要望が来たりする。それってめちゃめちゃ義務感を感じる原因になったりするんだけど、それを乗り越える力が本気なんですよね。とにかく曲が完成した時にやめるためにストップするんじゃなくて、進むために動きまくるっていう覚悟が俺にあったのをハッキリ確認できて得難い経験だったって思ったかもしれない。
アルバムの収録曲の中で、特に高校生に聴いて欲しい曲はありますか?
秋山 一応『ゴミステーションブルース』って曲になるのかな。高校卒業後、ずーっと家で曲作りをしてる奴っていうのはすごく非難される。普通就職するでしょ、普通進学するでしょ、って自分がやってる苦労っていうのを許せない、やってない人を許せないっていう人はある程度いて、意外と噂って広まるから「あいつ何やってんの?」「仕事もしないで作曲だかなんかだわかんないけどやってるよ」って。それを純粋に応援できる人って少ないんだなって思っちゃって。俺、今自分がこうなったから言うんじゃなくて、絶対人生好きなことをやった方がいいって思ってるから。それは勉強ができなかった人間の免罪符ってわけじゃなくて。曲を書いてる時に、俺よりもっと酷い環境で夢を追うこと自体にものすごくアレルギーがあるような場所に住んでる俺のリスナーがいたらどうしようって思って。一般的には外れた道だけど、先陣切って俺もやっていこうと思ってるから、できれば諦めないで欲しい。
秋山さんが自分のスタイルを貫いて音楽を続けられる原動力は何ですか?
秋山 口に出すほど自覚はしてないけど、音楽が相当好きなんだと思う。俺、多趣味で今までいろんなことをやってきて。それこそ料理も好きだし。でも、どうしてもすぐに飽きちゃう。今もまだ音楽をやれているということ、それが答えなんだと思う。
これからどんなアーティストになりたいですか?
秋山 当たり前だけど不自由があるから自由って感じるわけであって、その不自由のズル賢い抜け道みたいなのを歌詞にしてる気がする。それって人に楽させることにもつながってる気がするから、まともな感性を持っているっていうのが大事で、優しくどれだけ自由になれるかを求めているアーティストでありたいと思うかもしれない。
お話を聞いて、自分がどんなことを考えて学校生活を送っているのか客観的に考えたいと思いました。
秋山 伝えたかったのは、人と比較しないで欲しいってこと。まずは自分ができたことの方を先に見てあげた方が絶対にいいから。なんか自分らしく生きたいって思ってくれたのであれば俺のことは忘れた方がいいというか、君たちの生まれ育ったところが現実的だから。その場所にいて培った自分が嫌だという選択とか、いいと思う感性は、誰かと比較して潰さない方が絶対にいいと思っていて。
普段聞けない話をたくさん聞かせていただいたので、自分の中にしまっておきたいです。
秋山 話半分でね。原稿は、カッコ良く、あといっぱい「(笑)マーク」つけて書いてください(笑)。相当カッコつけて喋ったから。