あの夏、僕は仲村さんと出会い、リビドーに目覚めた。
思春期とは、つくづく厄介な時期である。渦中にいるときは苦しく、しかも、思い出すには羞恥がともなう。しかし、その通過儀礼を経ずに大人になると、また違う困難に見舞われるから悩ましい。
そんな思春期に、今、さいなまれているすべての少年少女に捧げる、青春映画が誕生しました。
chスタッフが一足先に本作を鑑賞したのですが、この映画、ただの〈変態映画〉じゃありませんでした!その理由とはいったい…!?
ストーリー
山々に囲まれた閉塞感に満ちた地方都市。中学2年の春日高男(伊藤健太郎)は、ボードレールの詩集「惡の華」を心の拠り所に、息苦しい毎日をなんとかやり過ごしていた。ある放課後、春日は教室で憧れのクラスメイト・佐伯奈々子(秋田汐梨)の体操着を見つける。衝動のままに春日は体操着を掴み、その場から逃げ出してしまう。その一部始終を目撃したクラスの問題児・仲村佐和(玉城ティナ)は、そのことを秘密にする代わりに、春日にある“契約”を持ちかける。こうして仲村と春日の悪夢のような主従関係が始まった…。
仲村に支配された春日は、仲村からの変態的な要求に翻弄されるうちに、アイデンティティが崩壊し、絶望を知る。
そして、「惡の華」への憧れと同じような魅力を仲村にも感じ始めた頃、2人は夏祭りの夜に大事件を起こしてしまう…
友人はいるが、打ち込めるものも、将来なりたいものもなく、成績も芳しくない。そんな中学生の高男はある日の放課後、憧れている佐伯さんの体操着を盗んでしまいます。それを仲村さんに見られてしまい、体操着の件を秘密にすることと引き換えに変態的な行動を命令されることに。最初はいやいや従っていた高男ですが、次第に仲村さんに陶酔していき、ついには二人でこれからの人生を捨てる計画を実行し…。
高男と仲村さんは行き過ぎてしまったけれど、その根底にあるのは、思春期にありがちな“自分は周りの人とは違う特別な存在だ”という感覚や常識に対する反抗。だからこそ、高男は仲村さんに共感して惹きつけられていったし、観ている私たちも、彼らの行動から目を離せなくなります。
大事件を起こした高男は引っ越した先で心をとざしたまま高校生になり、友達が多く男子にも人気だが文学少女という一面を隠している常盤文(飯豊まりえ)に出会います。彼女が本屋さんで「惡の華」を手にしていたのを目撃した高男は、思わず声をかけ、それがきっかけで二人の仲が深まっていきます。なかなか常盤さんに自分の過去を打ち明けられなかった高男ですが、偶然にも佐伯さんと再会したことで、過去と向き合わずに常盤さんとの関係を進めることはできないと気づき、仲村さんに会いにいくことを決意します。
勢いも迫力もある中学時代に目が行きがちですが、この高校時代にも是非注目してほしい!本作がただの”変態映画”ではない理由はこの高校時代で高男たちの成長がしっかりと描かれているというところにあるんです。思春期のドロドロした感情は、渦中にいると永遠に感じられるかもしれないけれど、必ず終わりは来る。今、思春期の渦中にいて、辛い思いをしている高校生は、高男たちが過去を乗り越えて前に進もうとする姿にきっと勇気をもらえるはず!
CHECK!
ボードレール「悪の華」
人間の内面的な苦悩や夢想を象徴的に表現する象徴主義の始まりとされ、各国の詩人に大きな影響を与えた作品なんだって。
映画とあわせて読んでみると、より物語に入り込めるかも!
- 出演:伊藤健太郎 玉城ティナ 飯豊まりえ 秋田汐梨
- 原作: 原作:押見修造「惡の華」(講談社『別冊少年マガジン』所載)
- 監督:井口昇 脚本:岡田麿里
- 配給:ファントム・フィルム
©押見修造/講談社 ©2019映画『惡の華』製作委員会
9/27(金)より全国ロードショー